今回はNPPV版CPAP(持続的気道内圧陽圧換気)(又はSPONT+PS:自発+圧補助換気)について説明していこうと思います。
自発呼吸のみで人工呼吸はどうして成り立つのか?
NPPVでは何が特徴的なのか?などを説明できればと思います。
では自発呼吸の世界へようこそ!!
CPAP(Continuous Positive Airway Pressure:持続的気道内圧陽圧換気)ってどんなもの?
CPAPとは
Continuous :持続的=常時
Positive :陽圧=プラスの圧をかけ続け
Airway Pressure:気道内圧=気道(肺胞)を膨らませる
という、日本語に直してみればなるほど?という換気モードです。
CPAPVとはいいません。換気(Ventilation)という日本語は便宜上付けられているものですので注意しましょう。
どんな風に換気を行うのか
自発呼吸のみを検知する
CPAP(Continuous Positive Airway Pressure:持続的気道内圧陽圧換気)では、強制換気は基本的に行いません。
全くの自発呼吸のみです。
但し、自発呼吸のみでは一回換気量を担保できない患者に対してはオプション機能としてのPressure Supportを付加して呼吸を補助します。
常に肺胞に圧をかけ続ける
健常人は常に肺が膨らんでいます。つまりは肺胞に圧が掛かっているということになるのです。その圧力は3~5cmH2Oと言われています。
その圧を人工的にかける為にCPAP(Continuous Positive Airway Pressure)(又はEPAP)をかけてあげます。
CPAPであれば5~8cmH2O程度からスタートとなる施設が多いのではないでしょうか。
+PSV ( Puressure Support Ventilation:圧補助換気)という選択肢
CPAPは自発呼吸に対して、サポートは一切行いません。その為、自発呼吸のみでは一回換気量を担保できない患者に対してはオプション機能として圧補助換気(PSV:Puressure Support Ventilation)という換気を付加します。
このオプション換気では、患者の自発呼吸を検知するとまずトリガーの感度設定まで患者が呼吸をしているかをチェックします。
設定が圧トリガーであれば吸気圧がマイナス、フロートリガーであればL/minの勢いで吸われ、それが設定感度に達していれば、PSVで設定した圧まで気道内圧を上昇させ、一回換気量を担保するのです。
適応は?
CPAPモードの適応は、
- 急性心原性肺水腫
- 気管支喘息(あくまで急性憎悪の予防)
- 肥満低換気症候群
- 急性Ⅰ型呼吸不全
などの、低酸素血症のみを伴う場合にCPAPが用いられます。
SモードとNPPV版CPAPの違い
では詳しく解説していきましょう。
二相性ではない
Sモードの場合
- IPAP
- EPAP
という二つの圧を設定します(Bilevel PAP もしくはBiphasic)。
しかし、NPPV版CPAPの場合は
- CPAP(又はEPAP)
のみを設定することが大きな違いとなります。
サポート=PSがない
見出しの通り、CPAPにはサポートがありません。
その為、PSVがないということになります。
SモードでのPSは
- IPAP-EPAP=PS
でした。
しかし、CPAPではEPAPしか設定しない点に相違点、注意が必要です。
メリット
CPAPの項でも説明したメリットは
- 呼吸仕事量の減少
- 酸素化[加]能の改善
- 機能的残気量の増加
- 自発呼吸のため同調性が良い
以上4つになります。
デメリット
過換気に注意が必要
上記でも説明したように、全ての換気は患者によって決定されます。
その為、吸気努力も全て検知してしまうのです。
過換気によりCO2が吐かれすぎて低CO2血症や呼吸性アルカローシスの進行を招き、また呼吸筋の疲弊により自発呼吸の停止も懸念されます。
この為、一回換気量と共に換気回数にも注意が必要なモードとなります。
このような場合には、一度鎮静を深めに行い(RASS-2~-3)、完全に人工呼吸下で管理してしまうのも一つの手段ではあります。
RASSに関しての詳細は別記事をご用意しているので、そちらをご覧ください。
適切なバックアップ換気とアラームの設定が肝要!
CPAP(+PSV)では自発呼吸があることが前提で換気を行いますが、何らかの原因(入眠や鎮静)で自発呼吸がなくなった場合には、適切なアプニア(apnea:無呼吸)設定やバックアップ換気(PCV or VCV)が行われなければなりません。
また、バックアップ換気でも一回換気量や分時換気量の低下にも配慮が必要なため、適切なアラーム設定が肝要となります。
CPAPの有効性とは??
適応についてはすでに上記で説明した通りです。
では具体的に有効とはどういうことか?を説明しましょう。
CQ5推奨:急性心原生肺水腫に対し、NPPV(特にCPAP)を第一選択とすべきである.【エビデンスレベル I,推奨度A】
NPPVガイドライン p.77より引用
エビデンスレベルはI~VIで分けられており、数字が若いほど信憑性が高く、
また推奨度はA,B,C1,C2,Dの5段階が設定されています。
これもまた、アルファベットが早い順で有効性が認められています。
話を戻すと、NPPVにはS,T,S/T,CPAPの4種類のモードがあります。しかし、なぜNPPVの中でも、特にCPAPなのでしょうか??
その理由が以下になります。
CPAP とbilevel PAP のどちらがより効果的かと比較した研究では,ひとつは CPAP,bilevel PAP,マスク酸素投与の順に生存退院率が高いとしている1).もうひとつの研究では CPAP も bilevel PAP も同様な効果を持つとする報告されている2) .しかし,生命予後に関しては,メタアナリシスでも bilevel PAP は死亡率を低下させる傾向にあったが症例数の少なさのため,有効性は確認できていない.
~中略~
いずれにせよ,CPAP は bilevel PAP よりも生命予後の点で有効性が明らかに証明されていて,より簡単な設定で,呼吸器との同調性も考慮しなくてよく,簡単に誰でも対応しやすい.CPAP モードを第一選択とすべきである
NPPVガイドライン p.78 【4,bilevel PAP】より引用
「誰でも簡単に対応しやすい」という点は、臨床工学技士だけでなく、看護師の視点からもハードルがグンッと下がって良いのかもしれません。なにより生命予後の点でも有効性が明らかなのは大きいですね。
この中でbilevelという言葉が出てきますが、これは二相性、つまりはS/Tモードの事を指します。
この他に、推奨度の高い疾患は以下になります。
急性呼吸不全
- COPD急性増悪【推奨度A】
- 免疫不全に伴う急性呼吸不全【推奨度A】
- 人工呼吸離脱に際しての支援方法【推奨度A】
慢性呼吸不全
- 肥満低換気症候群【推奨度B】
他にも、小児や外傷、周術期の事について、ガイドラインでは様々に述べられているので、興味のある方は一度検索してみてください。
あとがき
以上がNPPV版CPAPモードの概要になります。
エビデンスレベルの設定がされている、心強いモードであることが今回の記事でご理解いただけたのではないでしょうか。
S/T modeとは違う一面があるため、その点も理解して用いる必要はあります。
しかし、同調性や管理のしやすさを鑑みれば、CPAPには一考の価値ありと思います。
それでは、ここまでお疲れ様でした!!
ではまた!!
コメント