日本発!!国産のNPPV専用機~NKV-330~

人工呼吸器

 おはこんばんちわなら

 さて、今回は呼吸器関連の話題です。

 去年だったか、日本で大旋風を巻き起こしたNPPV専用機「V60(フィリップスエレクトロニクスジャパン社製)」の製造中止が発表されました。

 製造中止の理由に関しては知る人ぞ知る。ということで割愛しますが、製造中止は残念ですね。

 さて、こうなると本邦でのNPPV使用に関して選択肢は限られます。

 一つはIPPV機のオプションとしてあるNIVモードを使う方法。

 そしてもう一つがNPPV専用機を導入する方法です。

 ということで、今回は後者であるNPPV専用機であり、日本初の国産NPPV専用機「NKV-330」についてご紹介をしたいと思います。

 別にCOIはありません(笑)

 NPPVの説明に関しては別記事で解説しているので、良ければそちらをご参照ください。

 ではいきましょう!!いざNKV-330の世界へ!!

NKVシリーズについて

 さて、NKVNKVと連呼しますが、看護師やその他コメディカルの方からすれば「なんじゃそりゃ」だと思います。

 NKV-330は先ほども述べたように、夢の国産人工呼吸器であります。では製造販売元はどこになるのか?

 それは日本光電です。

N : 日本

K : 光電

V : ベンチレーター

 の略だと思いますね(ほらそこ!!あんちょくとか言わない!!w)。

 この項のタイトルを「シリーズ」としたのにも訳があります。

 「330」ということは兄弟機があるのではないか?と勘ぐった方もいるでしょう。その通りです。

 アメリカでは、日本光電のアメリカ法人によりNKV-550というIPPV機が製造販売されています。こちらは残念ながら完全にアメリカ製です。また、国内販売の予定も2024年現在はどこまで導入されているのかよく分かりません。ただ、日本にもコロナ特例により数台が政府より医療機関に配布されています。しかし、残念ながらその時点ではハードの日本語化が出来ておらず、操作には一苦労しているという情報は聞きました。

 ということでNKVシリーズのお話は一旦ここで終了です。

NKV-330の特徴

 特徴をお話しする前に少し昔話を。

 COVID-19大流行時、ニュースなどでHFNCがとても持て囃されました。「治療にはHFNCが欠かせない!!」的なニュアンスでした。そして行政も「HFNCってなんだ!!どの機械を買えばいいんだ!!」とやっきだったのでしょう。そこで行政が目を付けたのがNKV-330でした。

 この記事はNPPV専用機であるNKV-330のお話です。なのになぜHFNCの話が出てくるのか?

 それはNKV-330がHFNCモードも搭載しているからに他なりません。

 V60でも疑似的HFNCとしての使い方は非公式ながら存在していました。

 しかし、公式に回路などを装備し、モードとして搭載したのはNKV-330が初めてだったのです(筆者が知る限り)。

 というわけで、NKV-330の最大の特徴はずばり!NPPVとHFNCの両モードを搭載している!という点になります。

 今は無きV60との比較としては、

  • 縦に薄く、本体の軽量化も優れ、ベッド柵に掛けれる(別途オプション)など搬送性に優れる
  • 呼吸管理としてSpO2センサーを接続することが出来る(別途オプション)
  • 専用架台もスマートで、架台にはO2ボンベを2本搭載可能
  • 専用マスクの使用でCO2モニタリングが可能(価格40万。別途オプション)
  • 最大72時間分もイベント履歴、波形データ、計測値がトレンドとして保存される
  • 専用の送信機を取り付けることで、セントラルモニターからモニタリングが可能

というのがあります。

 V60がメインの時代、大きな搬送専用エレベーターでもV60の搬送には苦労した覚えがあります。架台の種類が多く、統一されていなかったのと、本体も大きかったからです。また、履歴類はNKV-330の特徴的な機能の一つではないでしょうか。USBメモリを挿すことで、画面のコピーが可能となり、トラブル時の解析や学会発表での活用など、活路は様々ではないでしょうか。

 呼吸管理にモニタリングは必須ですが、その中でもSpO2は必須、CO2も看れれば尚良しという感じがします。搬送時、SpO2が見れることで余計な機器を装着することなく搬送が出来ます。また、CO2なんかNPPVで看ても仕方ないだろ。とお考えの方も居るでしょう。しかし、実際に使用してみて思ったのは、通常の使い方に非ず。ということです。

SpO2センサーの使い道

 上記でも述べましたが、ERからICUや、ICUからレントゲンなどの検査への搬送などで、SpO2を見るためだけにSpO2付き心電図モニターを付けていくことがあります。心電図変化が気になり、装着しているのであればいいですが、そうでなければNKV-330と一体化していれば、画面も大きく見やすいのではないかと筆者は考えます。医療安全的にも効果は絶大ではないでしょうか。

CO2センサーの使い道

 これ、マスクフィッティングがしっかりできているかの指標としては中々優秀だと思います。リークが少ないと理想的な波形を描きますが、リークが多いとピークが下がり、濃度が低く出るなどの特徴があります。

 NPPVのリーク量は30L以下が目標とされていますが、どこかでCO2の基準を取れば、それを目安にフィッティングを行う。という技が使えるかもしれません。

 波形解析や数値解析が出来れば、臨床工学技士としての大きな力になるかもしれませんね。

セントラルモニターによるモニタリング機能の搭載

 この話をすると関係者には身バレになるのですがまぁいいでしょう。

 筆者が前に勤めていた施設では、コロナ特例で行政が500万円/床の補助金を出すので、HFNC付きの人工呼吸器を導入しろ!!というお触れが出されました。なので、筆者は迷わずNKV-330に飛びついたわけですが、その時フルオプションの一つとして送信機も付いてきました。近畿では筆者の職場でしか導入していないという貴重な装備品でした。

 この送信機を装着することで、ベッドサイドモニタ CSM-1000シリーズ ライフスコープG5/G7にて無線モニタリングが可能になります。

 ベッドサイドモニタ PVM4000シリーズで、有線でNKV-330を接続し、1台でモニタリング項目を飛ばす。という事も可能です(別途オプションケーブル必須)。

 セントラルモニタへ単独で飛ばした場合、モニタの監視画面を一つ占有してしまうという問題が発生します。しかし、有線で接続の上でセントラルモニタへ飛ばした場合はバイタルと共に一つの画面で済むというメリットがあります。巡視をしていない時にアラームが発生しても、ナースステーションでそれが分かるというのは大きなメリットではないでしょうか。

搭載モードについて

 NKV-330には全てで5種類の換気モードと1種類のHFNCモードが用意されています。

 すべてを使いこなすのが理想的ではありますが、現実的にはなかなか難しい。

 というのも、V60同様に「これ使うの?」というモードが多いからです。順を追って解説していきましょう。

SPONT-PSモード

 さて、このモードを皆さんの馴染みあるモードとして紹介すると何になるでしょうか。これは所謂CPAP+PSと同じなんです。

 つまり、自発が100%ある患者へ使用するモードとなります。

 詳細に関しては別記事でも紹介しているので、そちらをご参照頂ければと思います。

https://ce-bme.com/2022/09/25/cpap%e3%82%82%e3%81%97%e3%81%8f%e3%81%afspontps%e8%87%aa%e7%99%ba%ef%bc%8b%e5%9c%a7%e8%a3%9c%e5%8a%a9%e6%8f%9b%e6%b0%97%e3%81%a8%e3%81%af/

 また、CPAPとSPONTの違いについてフォーカスした記事も書いているので、そちらもご覧いただければと思います。

S/Tモード

  NPPVといえばS/Tモードです。代表的なモードですね。

 随分昔にS/Tモードの解説的な記事を書いていますので、詳細はそちらをご覧ください。

PCVモード

 PCVモードはV60でも搭載されていたモードになります。が、筆者は実際にNPPVでPCVを使用したことがありません。ん~困ったものだ。

 ただ、単純にPCVモードについては解説記事を書いているので、必要な方はご参照ください。

PRVCモード

 さて、筆者はNKV-330を初めてみた時、搭載モードに違和感を感じました。それは何故か?それがこのPRVCモードの搭載です。

 PRVCといえば、挿管による人工呼吸器のモードという凝り固まった考えがあったので、斬新に感じました。

 PRVCがNPPVでどのような作用があるのかは正直まだ未知数ですが、何かポジティブな報告が出ればいいですね。

 というわけで、PRVCについてもしっかり解説させてもらっています。

 よければご参照ください。

PPVモード

 PPVモード?なんじゃそりゃ??と思ったのが最初でした。

 V60にも搭載されているモードだということは添付文書から確認できましたが、正直記憶にありません。使ったことがないからです(てへっ)。

 で、どういうモードなのかちょこっと調べよう・・・と思いましたが、普通に検索してもヒットしないんですよねこれ。PubMedでも検索しようと試みましたが、まぁ検索下手な筆者。ヒットしても良く分からない・・・これは困った。

 まぁNKV-330の説明書読むか。と諦めました。

 で、説明書としては下記の様に書かれています。

気道内圧を設定された圧(EPAP/CPAP)に保つように制御します。自発呼吸を検出した場合、患者の呼吸努力に応じて調整したサポート圧(PPPV)により自発呼吸を補助します。アプニア換気機能を有効にした場合、アプニア時間(Apnea)を経過しても呼吸が検出されないときに強制換気を行います。サポート圧(PPPV)は、患者のフロー(flow)、換気量(volume)を使って、以下の式で計算されます。

NKV-330 基本編

$$P_PPV=\frac{PPV%}{100}(MaxR × flow + MaxE × volume)$$

 となっています。

 ここでいうRとEとは、NKV-330の設定項目にあるレジスタンスとエラスタンスのことを指しています。

 で、じゃあ肝心の設定項目には何があるのか?というと、

  • PPV補助率(0~100%)
  • EPAP/CPAP (4~25hPa)
  • FiO2 (21~100%)
  • 最大エラスタンス(0~100hPa/L)
  • 最大レジスタンス(0~50hPa/L/s)

 以上5項目になります。

 呼吸波形に関してはこのような動作を描きます。

 設定項目の詳細に関しては、いずれPPVモードと一緒にご紹介できればと思います。

O2 Therapyモード

 これ、わざわざO2 Therapy modeなんて謳っていますが、実質ただのHFNCの事です。

 設定項目は

  • フロー(1~60L/min)
  • FiO2 (21~100%)

 の二つだけです。シンプルですね。

 HFNCに関しても記事にしているので、よければご参照ください。

 以上で搭載モードの説明は終わりです。

診療報酬上の取り扱い

 我々臨床工学技士が取り扱う機器の中には、一定数「医療機器管理料」として、使用すれば1月につき一回加算を取ることが出来ます(B001-4 [医療機器管理料]100点)。

 しかし、HFNCとして使用した場合、この加算を取ることが出来るのか??と疑問に思われる方も多いんではないでしょうか。

 NKV-330は「非侵襲的陽圧換気を行う人工呼吸器」という位置付けです。その為、AirVoなどのHFNC専用機とは違い、臨床工学技士による始業前点検、終業時点検の実施が必要な医療機器として設定されており、結果として加算は取得できます。

 数少ない我々の活躍できるフィールドなので、是非とも積極的に算定していきたいところです。

公式サプライ品が豊富に揃っている

 NKV-330の良い所としては、上記のほかにも公式の回路やマスクが用意されている点にもあります。

 もちろん公式品は高いというデメリットもありますが、回路に関してもNPPV回路で揃えればHFNCにも使いまわすことが可能です。また、ヒーターワイヤー内蔵の回路もあるため、過加湿による水滴問題もクリアすることが可能です。

 CO2センサーを使用するには、できるだけ公式のマスクを使用することもお勧めしたいと思います。防曇対策もされている為、測定誤差も少なく使用できると日本光電は謳っています。

 SpO2センサーに関しても、日本光電のモニタと同様品が使えるため使いまわしが出来ます。勿論テープタイプにも対応しているマルチコネクタなので、便利なのは言うまでもないです。

 マスクサイズに関しては、アジア人、特に日本人に合わせた設計をしていると謳っており、SからL、小児の取り扱いがあり、豊富なラインナップとなっています(ただ、ジャバラマスクには勝てないかもしれませんが)。

 と、公式サプライに関しても上げればキリがありませんね。ここらへんでお終いにしたいと思います。

始業前点検モードの搭載

 V60全盛期、始業前点検は各施設独自の点検表を作成し、圧が正常か、トリガーは働くか、等を診ていたと思います。

 しかし、NKV-330には専用の始業前点検モードが存在しています。

 裏モードで技士の名前を全員入力しておけば、誰が点検を通したのかも一目瞭然です。

 時刻設定から回路リーク、流量点検、バッテリー点検まで全て自動で行うことが可能です。待機状態のインターフェイスに関しても、NK製か3rdインターフェイスかで設定を変える必要があるので、注意が必要です。

気切、挿管モードの搭載

 上記の搭載モードでも説明しましたが、なんでこのモードがNPPVで必要なんだ?と思いましたが、日本光電の担当者から説明を受けたり、情報収集をする過程でそれが判明しました。

 実はこの機種、挿管対応しているんです。

 電源立ち上げした直後のページで、どのモードで使うかの選択が出来ます。そこで「ETT/Trach」を選択すると、画面上部右のマークが挿管モードへと変更になります。

 挿管モードを使うことで、意図しないリークを許容せずにしっかりとした換気を行うことが出来るようになります。

 但し、注意が必要なのは、この呼吸器はそもそもNPPV専用機なため、換気が不安定であったり、適応外への使用を認めたら、IPPV機へ乗せ換えるようにとお触れも出ています。なので、取り扱いには十分注意しましょう。

 しかし、挿管状態の搬送に際しては、ここまでコンパクト且つ強力に働いてくれる機種もそうそうないのではないでしょうか。COVID-19禍で大いに活躍した本機種ですが、これからもしっかり見守っていきたいですね。

あとがき

 自身の推し人工呼吸器だと思っていたんですけど、振り返ると内容薄いな~とか思っちゃいました。

 他にもこんな情報が欲しい!!とか、この機器のこれが知りたい!!とかあれば書いていこうと思うので、よければコメントなどいただければと思います。

 NKV-330の記事に関しては、随時追加していこうと思うので、よければまたご覧下さい。

 ではでは~

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