心不全とはー基礎編ー

循環器

 さて、読者の皆様お久しぶりです。

 いやー随分間が空いてしまいましたね。この間何をしていたか?特になしもしていません。

 仕事もあまり上手くいかず、JSDT以後はネタも枯渇してしまい、何を書けばいいのやら…と困り果てていました。

 で、いい症例?というか、考える機会があったので、ちょっと勉強がてら記事にしようと思った次第です。

 循環器はからっきしなので、初歩的な事も含めた内容になりますがご了承を。

 では行きましょう。心不全の世界へようこそ。

心不全ってどういう病気?

 心不全とは果たしてどういう病気なのでしょうか?まず話はここから始まります。

 心不全は病気というよりは症候群のようなものです。様々な症状を引き起こします。

 ではどういう状態なのか?具体的には以下のような状態を指します。

 心不全は、心臓の機能不全により全身に心臓が十分な血液を全身に送り出すことができなくなる状態を指します。心臓のポンプ機能が低下し、必要な酸素や栄養を体の各部に供給できなくなるため、様々な症状が現れます。心不全は急性と慢性に分類され、急性心不全は突然発症し、迅速な治療が必要です。一方、慢性心不全は徐々に進行し、長期にわたる管理が求められます。

 心不全のカルテでの略語は「HF:Heart failure」です。慢性心不全は「CHF:Chronic HF」、急性心不全は「AHF:Acute HF」で表現されます。

 が、話はこれだけでは終わりません。

 心不全は古来よりある概念であり、様々な分類があります。その歴史的変遷も絡めてご紹介しましょう。

心不全の歴史と分類

 心不全は古代から知られている病態であり、その理解と治療法は歴史を通じて進化してきました。以下に、心不全に関する重要な歴史的な出来事をまとめます。

古代から中世

  • 古代エジプト、ギリシャ、インド: 心不全に関連する記述が見られます。例えば、古代エジプトのパピルスには心臓病に関する記述があり、古代ギリシャの医師ヒポクラテスも心臓の病気について言及しています。
  • ローマ時代: ローマ人は薬草の一種であるジギタリスを心不全の治療に使用していました。ジギタリスは現在でも心不全の治療に用いられることがあります。

近世

  • 1628年: ウィリアム・ハーヴィが血液循環を記述し、心不全の理解が進展しました。彼の研究は心臓のポンプ機能の理解に大きな影響を与えました。
  • 1785年: ウィリアム・ウィザリングがジギタリスの医療効果についての報告を発表しました。彼の研究はジギタリスが心不全の治療に有効であることを示しました。

19世紀末から20世紀初頭

  • 1895年: X線の発見により、心不全の診断が進化しました。X線は心臓の大きさや形状を評価するための重要なツールとなりました。
  • 1890年代: エイントホーフェンによる心電図の開発により、心不全の診断がさらに進展しました。心電図は心臓の電気的活動を記録し、不整脈や心筋の異常を検出するための重要な手段です。

20世紀後半

  • 1950年代以降: チアジド系利尿薬の導入(1958年)やアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の開発(1970年代)が心不全の治療に大きな影響を与えました。これらの薬物は心不全の症状を緩和し、予後を改善するために使用されます
  • 1987年: CONSENSUS-I研究が、重度の心不全患者におけるエナラプリルの生存率改善効果を示しました。これにより、ACE阻害薬が心不全の治療において重要な役割を果たすことが確認されました。

心不全の分類

心不全はその発症部位や進行の仕方、重症度などに基づいていくつかの分類があります。

左心不全と右心不全

  • 左心不全: 左心室が十分に血液を全身に送り出せない状態。主に呼吸困難や肺うっ血を引き起こします。
  • 右心不全: 右心室が全身からの血液を十分に受け入れられない状態。主に体の末端(足や腹部など)のむくみや静脈うっ血を引き起こします。
  • 両心不全: 左心不全が進行して右心不全を引き起こす状態。

急性心不全と慢性心不全

  • 急性心不全: 心機能が急激に低下し、迅速な治療が必要な状態。心筋梗塞や重度の不整脈などが原因となります。
  • 慢性心不全: 心機能が徐々に低下し、長期間にわたって管理が必要な状態。高血圧や冠動脈疾患などが原因となります。

収縮不全と拡張不全

  • 収縮不全(HFrEF): 心臓が十分に収縮できず、血液を全身に送り出す力が弱くなる状態。
  • 拡張不全(HFpEF): 心臓が十分に拡張できず、血液を受け入れる能力が低下する状態。

重症度分類

  • NYHA分類: ニューヨーク心臓協会(NYHA)による分類で、心不全の症状が日常生活にどの程度影響を与えるかに基づいています。
    • クラスI: 日常的な活動に制限がない。
    • クラスII: 軽度の症状があり、日常的な活動にわずかな制限がある。
    • クラスIII: 日常的な活動に顕著な制限がある。
    • クラスIV: 安静時にも症状があり、日常的な活動が困難。
  • ACC/AHA分類: アメリカ心臓協会(AHA)とアメリカ心臓病学会(ACC)による分類で、心不全の進行段階に基づいています。
    • ステージA: 心不全のリスクが高いが、症状はまだない。
    • ステージB: 心機能に異常があるが、症状はまだない。
    • ステージC: 心不全の症状があり、診断されている。
    • ステージD: 標準的な治療に反応しない進行した心不全。

まとめ

 心不全は古代から知られている病態であり、その理解と治療法は歴史を通じて進化してきました。心不全はその発症部位(左心不全、右心不全)、進行の仕方(急性心不全、慢性心不全)、心機能の状態(収縮不全、拡張不全)、および重症度(NYHA分類、ACC/AHA分類)に基づいて分類されます。これらの分類は、適切な治療法を選択し、患者の予後を改善するために重要です。心不全の早期発見と適切な管理が、患者の生活の質を向上させる鍵となります。

あとがき

 さてさて、今回は心不全の基礎の基礎、病態と歴史についてご紹介しました。

 概念であるということだけあり、古来より認識されている点は新しい発見でした。しかもそのころからジキタリスが用いられていたのにも驚きです。

 さて、AHAやACC,HFrEFやHFpEFのお話も順当に出しましたので、次回はここら辺について解説出来ればなーとか思っています。

 折角ガイドラインも新訂されましたし、そこら辺も大切に述べていきたいですね。

 では今回はここら辺で。

 まったね~~

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