さて、今回は透析効率についての記事です。
といってもちょっと学術的な面からは外れるかもしれませんが。
筆者の施設では、毎月前後採血が行われます。その為、本来であればスタッフ全員(医師・看護師・臨床工学技士)でデータカンファレンスを行うべきなのですが、正直そんなのは行われません。
データ解析をしているのも筆者だけです。その為、解析データを挟んでいるファイルはいつも真っ赤。
そんな中、ちょっと気になる出来事が起きたので、これはネタになると思ったので記事にしました。
ではちょっとしたデータ解析の世界へようこそ
毎月のデータカンファでの出来事
さて、先にも話した通り、筆者の施設では毎月透析前後採血が行われます。
採血をした翌週には、欠損値も筆者が手入力した上でお披露目になります(6年間誰もこれをしてこなかったですがね)
しかし、実際に条件変更などの話が上がる段階には、筆者は口を出しません。それは何故か?誰も筆者の話に耳を傾けないからです(これに双方のコミュニケーションエラーがあると言われればそれまでですが)。
同じ言語を持たなければ、やはり会話というのは成り立ちません。その点で、弊社は筆者と他のスタッフに大きな隔たりがあります(知識較差)。
そして小見出しの話題に繋がります。
つい先日も、データが出揃った所でカンファがありました。といっても、実際には主任?とNo.3が勝手に話し合って、独断でカンファで発表するだけです。「これに意見のある人は??」と反論や意見のできる空気もない中で言うのだからズルいもんです。
で、条件変更をAさんBさんで~と言ったんですね。
がしかし、その中でおかしな条件変更がありました。
透析の条件変更
JSDTのガイドラインでは、Kt/V-spでの達成すべき最低ラインは1.2。望ましくは1.4~1.6となっています(維持血液透析ガイドライン:血液透析方 https://www.jsdt.or.jp/dialysis/2094.html)。
条件変更の提示された患者は確かに1.2は超えています。しかし、1.4は達成していない状態の患者でした。
当院で採用しているフィルターは2.1m2が最大です。この患者は最大膜面積のフィルターを使用してます。しかし、血流量は180mL/minです。
にも拘らず、Kt/Vが未達成です。その為、本来であればフィルターの新規採用の上で膜面積up、もしくは血流量のupをすべき対象です(実際血流量のupは可能です)。
にも拘らず、その主任は事もあろうに「Albが下がってる(3.0強)から膜面積を下げる」と発言したのです。
しかし、データを時系列に沿って、面で見ることが出来ないというのは致命的ですね。
その患者は先月のデータで微増ながらCRPが上昇していました。その為、当然ですがAlbが下がるのは必然です。若干のAlb低下は正直許容範囲内でありますし、僕の計画書では、膜面積up、もしくは血流量upを支持していました。
上記の記事内でも解説していますが、アルブミンの半減期は20日です。そして前月初めにCRPが上昇したのであれば、その後にアルブミンの産生量が低下し、そして半減期を迎えることを考えれば当月の血清Alb値が下がるのは当然です。そして当月のCRPが正常値に下がっていることを考えれば、来月のAlbは横ばい、もしくは上昇することの見当が付きます。
しかし、その主任はAlbしか見ていなかった為、当月のAlb低下のみを指標として膜面積を下げようとしたのです。
さて、有識者の皆様に於かれましては、当職種唯一の専門誌「Clinical Engineering」を購読している方も多いのではないでしょうか。
Clinical EngineeringのあるHDF特集号において、ヘモダイアフィルターの設計では
中空糸内径 d [μm]、及びモジュール内径 D [cm]に対する中空糸有効長L [cm]の比L/D[ー]の異なるモジュールを設計した場合、同じL/Dで比較するとdが増加するほどアルブミン漏出量が増加し、同じdで比較するとL/Dが減少するほどアルブミン漏出量が増加した。1)
とあります。つまり中空糸が細く、またモジュールが長い程アルブミン漏出量は少ないのです。
にも拘らず、主任は膜面積を落とそうという提案。これはアルブミン漏出量を増加させようと言っているのと対して変わりありません。
筆者はこの条件変更に対して、「先月CRPが上がってます。今月は下がってますし、条件変更は来月の結果を見てからでも遅くはないと思いますよ。」と進言。そしたらなんと返ってきたでしょうか?「ふーん。まぁ別に私これ興味ないからな~。好きにしたらいいんちゃう?(イライラ)」と。
好きにしたら??え?何その責任のない発言??患者の条件を自分が仕事してる風を装うためだけに操作してんのかこいつ??という驚きの返事でした。
本当に、勉強をしない人間は害悪でしかないですね。
これにより、患者の条件DOWNは何とか防ぐことが出来ました。
透析効率はどうあるべきか?
さて、色々話が取っ散らかってしまいましたが、ようやく本題です。
透析効率は1.4を!!といっても、pre-BUNが30強の患者と80台の患者では恐らく意味が違ってくるかもしれません。というのは読者の皆様が思う所ではないでしょうか。
で、果たして、ならpre-BUNがいくらならKt/Vはいくらを目指せばいいのか?
その部分の話題は聞いたことがありません。
うちの師長にも、前値が高くない患者をそんなに回す必要ある?と言われましたが、強く反論はできませんでした。
が、この部分を解決するような文献が残念ながらPub Medでは見つけられませんでした。
そのことを考えると、現時点で本邦の臨床に一番沿った数値は、やはり日本透析医学会のガイドラインということになるのでしょう。
nPCRをしっかり回し、Kt/Vを1.4まで引き上げる。
これが現時点での目指すべき透析条件の最低ラインだと筆者は考えます。
残腎機能がある患者であれば、post-BUNの値は必然的に低くなり、Kt/Vは高く出るでしょう。足りていないということは、残腎機能は完全に廃退していると診るべきなのです。だからこそ透析量の確保は必須なのです。
例え週2回しかHDを実施していなくとも、採血でKt/Vが1.0未満なのであれば、最低でも4時間で週2回、できれば週3回の透析が必要でしょう。膜面積も2.5m2を使う等の工夫が必要だと思います。
我々臨床工学技士は、確かに患者よりデータを見て解析する職業かもしれません。
しかし、それは患者の予後を伸ばし、よりよい生活ライフを送ってもらうためであることを忘れてはいけません。その点で、患者背景を見て、そしてQoLを考えることを筆者はしています。
そんなこんなで透析効率のお話はおしまいです。
あとがき(追記)
(追記)今回の症例はかなりぼかして、それこそ架空症例の色を濃くして書いています
バックグラウンドが分かりにくい・ケースバイケースだろ!
ご尤もです。
しかし、どこまで言及するかはとても難しいという事もご理解の上でご笑覧頂けると大変助かります。
今回も、あまり当てもなく書いてしまったために透析量に関しての文献がそんなにというか、ヒットしないという事態に陥ってしまいました。申し訳ない。
ただやはり、ガイドラインは健在なのだろうな。とは思います。ただ、HDFもここまで処方が増えたのですし、ガイドライン自体が10年前のものです。血液透析処方のガイドラインもそろそろ一度見直しの時期に来ているのではないでしょうか。
偉い先生方、是非とも宜しくお願いいたします<(_ _)>
さ、では今日はここまで。
ではまたね~ノシ
1)木口 崇彦 , 山下 明泰 ; オンラインHDFの溶質除去に及ぼす種々の影響因子 標準治療としてのオンラインHDFー実践に活かせる最新知見ー ; Clinical Engineering VOL.34 NO.5 2023 p.453-460
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