透析液の種類と特徴、覚えてますか??

血液浄化

 読者の皆様、お仕事お疲れ様です。

 筆者はというと、今日を含めてあと二日のNEET生活をどのように凄そうかと頭を痛めています。

 さて、先日は透析液のコスト計算の記事を公開しました。

 この記事が結構好評で、中々の風速を叩き出しています。

 で、透析液のコスト計算をするのはいいんですが、肝心の透析液。何があるか、把握してますかっちゅー話です。

 なので、今回は透析液特集を組もうと思います!!

 ようこそ!!透析液の世界へ!!

透析液の歴史

 こんな風に銘打ってますが、実はすでに記事にしております。

 透析液の歴史は、まさに組成を探る探求の歴史と同義です。

 上記の記事タイトルにもある通り、酢酸不耐症による透析困難が現れ、それに対処するために無酢酸透析液が出来たり、重炭酸透析液が開発されたり…と、あります。

 ブドウ糖を極々低く設定した透析液が発売された時代もあったとか。

 そんなこんなで現代に至ります。

透析液の種類は?

 今回、やっとこさ重い腰を挙げて、透析液一覧を作成しました。

 尚、個人機用のリキッドは入れていません。まぁ一緒だしね。

 というわけで、2025年2月現在、日本で上市されている透析液一覧です!どうぞ!

 全13種類、4社から発売されている透析剤です。尚、ここに掲載している透析剤は全てA剤B剤共に粉末タイプです。

 筆者も昔、一度だけAがリキッドタイプを扱ったことがありますが、あれは本当に大変でした…(まぁ配送業者の方が大変でしょうけど)。

 三者三様、様々な時代の流れや考え方により構成されているのが見て分かります。

では以下、各シリーズを簡単に概説していきます。

キンダリーシリーズ

 日本の透析界を牽引してきたと言っても過言ではない、扶桑薬品が販売している「キンダリー」シリーズです。

 一部欠番しているようですが、それは恐らく先にも述べた歴史の流れなのでしょう。

 一番取り扱い数もあるため、選択には困りません(いやまぁ有り過ぎて困るんですが(笑))。

Dドライシリーズ(D Dry)

 こちらは日本の透析業界を機械の側面から牽引してきた「日機装」が発売している透析剤になります。

 特徴として、Dドライが使えるセントラル(透析液供給装置)は日機装が発売している「DAD」シリーズだけ。という事が挙げられます。

 裏を返せば、DADはDドライ以外の透析剤が使えません。正直不便です。選択の余地がないので。

 日機装の独占状態ということもあり、値段もちょっとな~と思いますが、実際はどうなんでしょうね。

リンパックシリーズ

 こちらはハードはハードでも、人工腎臓の側面から業界を牽引してきた「ニプロ」が販売している透析剤です。

 リンパックは価格帯としてキンダリーに並ぶため、近年では採用している施設が増えつつある透析剤です。

 濃度としてもCa2+レベルが3つ用意されている点が特徴です。また、TA1は他の透析剤にはなく、珍しくNa濃度が138 mEq/Lで設定されている事が挙げられます。

カーボスター

 こちらは無酢酸透析をするには欠かすことのできない、唯一の透析剤「カーボスター」です。

酢酸不耐症については上記の記事にも詳しく書いております。

 他にない特徴として、pH緩衝材として氷酢酸ではなくクエン酸を用いていることが挙げられます。

 Ca2+濃度は高めの3.0mEq/Lが設定されていますが、これは組成上しかたないのかもしれません。

 透析液の差異は??

 これは臨床工学技士国家試験範囲なので、もしかしたら釈迦に説法かもしれませんね。では少々解説を。

ナトリウム

 人体の血漿浸透圧を司る、最も重要なイオンです。基本は140 mEq/Lですが、138 mEq/Lの商品も存在しています。

カリウム

 人体が電気的活動をする上では欠かすことが出来ないイオンです。心臓の電気活動に直結している事もあり、近年では高齢化に伴い細かな調整をすることが時流となっています(エビデンスがある訳ではありません)。

カルシウム

 こちらも人間の電気的活動に欠かすことのできないイオンになります。但し、それだけではなく、異所性石灰化に始まるCKD-MBDにも直結しており、リン(P)濃度とはシーソーバランスの関係にあります。その為、むやみやたらと低くすればいい。という訳でもない為、調整の難しい項目です。

具体的には2.5~3.0 mEq/Lで調整されています。

マグネシウム

 人体に微量元素として存在しているのがマグネシウムです。

 他にも微量元素はありますが、恐らく補充すればキリがないのでしょう。また、マグネシウムは金属イオンなため、貧血にも関係してきます。その為、各社で濃度が異なります。(1.00~1.25 mEq/L)

クロール

 よく登場するのが生理食塩水ですね。特に血漿浸透圧などに寄与する訳ではありませんが、イオン量が多いため、無視することはできません。

酢酸

 こちら、酢酸不耐症の原因にもなる、その名の通りの酢酸です。

 ただ、どうしてもpHの調整の必要性から入れなければならない物質です。コスト的にも組成的にも簡便なのでしょう。量はまちまちで、カーボスターはゼロですが、他は上の表のとおりです。(0.0~10.2 mEq/L)

重炭酸

 腎臓は血液ガスのバランスを司る二大臓器の一つです。

 腎障害(CKD)の進行は、pH : 7.40 ±0.02 という範囲をアシドーシスへ傾けます(代謝性アシドーシス)。

 機序としてはH+(水素イオン)が蓄積し、重炭酸イオン(HCO3-)が減少していきます。その為、透析では重炭酸を補充してやる必要があるのです。

 透析液に含まれる重炭酸の濃度は、25~35 mEq/L の間となっています。但し、35 mEq/Lはカーボスターであり、突出しています。

ブドウ糖

 人体で最も重要なエネルギー源であるブドウ糖。その量は死活問題です。

 その昔、DMが多いなら、ブドウ糖を低くすればいいじゃない!!と極端に低くした透析液もあったんだとか(そのせいで低血糖が頻発したとかどうとか)。

 今現在は極めて生理的な100mg/dL~少し高めな150mg/dLと様々に用意されています。まぁこのぐらいが安全ですよね。

あとがき

 とまぁ、のらりくらりと透析液について概説してきました。

 読者の皆様いかがでしたでしょうか。

 透析液の組成問題、筆者はとっても苦手です。最適解って難しいですもんね…。

 ただ、Ca濃度は薬でコントロールしてしまえばいいじゃない。というお声もちらほら。その通りなんです。なので、結局はコストが一番かからない透析液を~という施設もありますよね。

 それも一つの解なんでしょう。

 何を取るかはその施設のドクターによりけりです。

 さ、では今日はこのくらいで。

まったね~

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