さてさて皆さん。透析診療支援システムとは何ぞや??と思う方も、そうでない方もご注目。
今回は各メーカー・及び3rdメーカーが出している透析診療支援システムについて解説・紹介したいと思います。
はてさて、主にどんな機能を搭載し、どの部分が共有され、何が特徴として運用されているのでしょうか。
では見てみましょう。透析診療支援システムの世界へようこそ。
透析支援システムが無い世界を見てみよう
透析経営を始めたばかりの方、または透析に初めて触れる新卒などの技士看護師の方へ向けた項になります。
透析ってとにかく数字が多いですよね。
羅列していくだけでも
自院での透析回数・患者氏名・年齢・治療方法・抗凝固剤量(ショット量・持続量)・ダイアライザー・ヘモダイアフィルターの種類・血流量・透析時間・前体重・増加体重・リンス量・除水量・後体重・減少量・DW・当日与薬の薬剤
ここに、治療ごとに
時間除水量・積算除水量・補液量・血流量・静脈圧・透析液圧・TMP・抗凝固剤残量・血圧・脈拍・穿刺部チェック・確認者のサイン
これを1時間に一回行う訳です。所謂巡視というやつですね。
上で上げた項目、現場にいる方なら嫌でもお分かりだと思いますが、全て手書きです。
急性期で外来透析が無い、10床未満の透析室ならいざ知らず、これが30床40床50床となると、少し顔が引きつるものがあります。
また、透析に欠かすことが出来ない体重測定。システムレスの施設では、体重を測り、紙を渡してベッドへ持って行ってもらい、その紙を元に、チャートにスタッフが前体重からの増加分と除水量を計算するのです。
これもいわずもがな。手動です。
とまぁ、これが二昔前の透析界隈の業務の在り方でした。プライミングにバケツ使うよりはましかもしれませんね。
また、フェジンやロカルト、EPO製剤などのスケジューリングされた薬剤を間違いなく与薬しなければならない繊細な作業もあります。
月1~2回ある採血に関しても、電子カルテであればいざ知らず、紙カルテであれば、いちいちカルテに時系列に沿って貼り付けて、それを見ながら患者に説明していく…という途方もない作業が待っていたわけです。
レセプトだって大変です。全部アナログなのを、デジタルに起こして作業する訳ですから、医療事務さんの苦労や如何に…
とまぁ、つらつらとシステムレスの現状を書いてみました。うーん…悲しい…
では、透析診療支援システムって何をしてくれるの?
では本丸、透析診療支援システムは何をしてくれるのか?
基本的に、上記で書いた機能は全てシステムが担ってくれます。
体重計に乗ればコンソールに勝手に体重が飛び、計算してくれるし
治療ごとの数値記入だって、コンソールの数値を勝手にコピーして載せてくれるし
薬剤のスケジューリングもカレンダー機能が付いてるからそれに乗っけたらいいし、
レセプトも毎回自動でレセコンに飛んでいくから、あとは確認するだけだし。
検査データも基本採血項目は勿論、(筆者が大好きな)透析効率や栄養項目も自動計算で算出し、レポートにまとめてくれます。なんならグラフ化もしてくれますんで、EPOやHIF-PHの量とHbを比較検討することも、システムによっては出来るようです。
いや~魅力的ですよね。こんなにシステムがやってくれるんだ!!と目をキラキラさせてしまいます。
経営や診療補助の面でも役立つ、透析診療支援システムたち
システムが担ってくれるのは、なにも上記の事だけでもありません。
例えば、ダイアライザーやヘモダイアフィルターをどれを一番よく使っているか。(統計機能)
一番使っているのだから、業者には「もうちょっと安くしてよ~」とお願いしてみたり
うちの患者のKt/Vは平均と中央値はどれくらいなのか。(診療補助)
これにより、透析条件は適切か。足りないのであれば、どこを改善すべきなのか。も見えてきます。
先ほども言ったように、検査データを時系列でグラフ化してくれる製品もあります。なので、それにより処方をどう変えるべきか、CKD-MBDでいう9分割図ではどこに当たるのか。なども可視化してくれます。Caもしっかり補正カルシウム計算してくれるので安心ですね。(診療補助)
1か月あたりの患者数もはじき出してくれるので、大体の診療報酬月額もはじき出すことは可能でしょう(色々特例があったり注があったりするんで、一概には言えませんが)。(経営補助)
ベッドコントロールも可視化してくれるので、一々コンソールに行かなくてもいいのは楽ちんです。
紹介状や診療情報の作成、既往歴や導入原疾患、基本情報も纏めることが出来ます。一元管理できるのはとても便利ですよね。
透析診療支援システムの導入実績は?
さて、ここまで実に華々しい透析診療支援システムのお話をしてきました。
でも所詮は隣の芝生。
実際どれくらいの施設がこういったシステムを導入しているのでしょうか。
文献あるかな~…と探しましたが見つからず。一説には15%程度という事でありますが、そのデータもどれくらい正しいやら。
仮に15%だとして、全国の患者は、2023年末は343,508人です。この恩恵にあずかっているのは精々5万人弱ということです。いやー先生にも現場の努力にも頭が下がります。アナログって大変…。
既存カルテや部門システムとの連携は可能か
病院での基本システムは電子カルテとレセプトコンピュータです。そして、電子カルテサーバに向かって診療結果が。レセコンに向かって診療実績が飛ぶわけです。
で、蜘蛛の巣の様に各部門システムは、その部門にある機器たちをまとめ上げているわけです。
筆者はこれまで透析支援システムは3回経験があり、どれも電子カルテが違います。
一つで東レのMiracleDMICSと両備システムズ。
もう一つは電子カルテは忘れましたが、Future Net Web+。
もう一つはMIRAIsとFuture Net Web+/Miracle DMICS UXです。
このように、どのメーカーと連携実績があるかをしっかり確認し契約することが、スムーズな導入に繋がります。
コストと予算の兼ね合いや、如何に
本記事の初めは、システムレスの現場を説明しました。
次に、システム導入したらこんなことが出来るよ。というのも説明しました。(正直説明し足りないけど)
で、その次に導入実績、どのメーカーとなら連携可能か?そして最後はトータルコストと予算はどうか?を語っていきます。
経営者目線でいうと、人(人件費)には、多少お金を掛けれても、設備投資はしたくないのが本音でしょう。医療とてビジネス。儲けて何ぼの世界です。
しかし、透析は経営におけるポートフォリオマネジメント(PPM)でいうと、そう簡単には「金のなる木」にはなりません。それなりの設備投資・更新や人件費の歳出が必要と考えます。
だとしても院長や経営者層は簡単には首を縦には振らないでしょうね。そんな見えないものにお金を掛けるなんて。という心理的障壁が存在します。現場を知らなければ猶更です。
ですが、イニシャルコストは大体¥3,000,000前後。これはあくまで定価なので、どういう条件(例えばコンソール全換装やシステムだけの導入)で入れるのかにもよります。また、メンテナンス費用は月10万程度でしょうか。ランニングコストとしてかかります。
それでも、システムを導入することで、チャートや血圧の記入に当てていた時間を、ABIやフットケアに当てることも可能となります。そうすれば、診療報酬の獲得も出来、経営効率も更にあがるのでないでしょうか。
体重計算の誤計算インシデントや、物品の誤配布によるインシデントも減り、システム導入は医療安全にも寄与するものと考えます。
安全にコストは付き物です。設備にもコストは付き物です。人を育てるのにもコストは付き物です。ですが、どうか、その微々たるコストを削り、現場を疲弊し、離職率が上がるような事は避けていただければ…!と現場の人間としては思うのです。
システムの導入は、ある意味現場では悲願です。
経営者の皆様、宜しくお願いします。
あとがき
さてさて、今回は透析診療支援システムのお話part1と題して色々だらだらと書き綴ってみました。
これを書いた理由??転職した弊社が、50床もあって一人受け持ち15にオーバーなのに、全部アナログだからだよ!!
頑張ってみんなの意見纏めて、院長社長事務長に直訴して、数年後にはこの環境を脱したい・・・・もっと色んなことしたいよパトラッシュ…
てなわけで書きました。ただ、多分ここ5年が山ではなかろうか…とも思っています(色々あるんすよ)
月には各メーカー製と3rdパーティ製の支援システム記事書きますんで、こんなのあるでーって方、良かったら連絡くださーい!!
ではでは~~ノシ
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