皆様お疲れ様です。
さて、筆者は最近転職をしたわけですが、弊社には残念ながら透析診療支援システムが導入されていません。
なので、以下の様な記事を書いた次第ではります。
ですが、何時までも無いものを愚痴っても仕方ありません。
という訳で、筆者、今回は自前で透析効率を算出していこうぜ!!とExcelと格闘してみました。
ので、今回はその結果のお披露目を出来ればと思います。
では早速ですが、透析効率計算の世界へ行きましょう。
まずどのKt/V式を使うべきなのか
透析効率のお話というのは随分前に記事として上げています。
で、肝心の透析効率:Kt/Vについては、記事中で4つほど公式を挙げています。
$$ \frac {k \times t}{V} = – \ln \frac {C_B(te)}{C_B(0)} (1)$$
$$\frac {K \times T}{V}=- \ln \{ \frac {C_B(te)}{C_B(0)}-0.008 \times t \}+ \{ 4-3.5 \times \frac {C_B(te)}{CB(0)} \} \times \frac {ΔV}{BW} (2)$$
$$ \frac {Kt}{V} = \frac {\ln (CE)- \frac {(CE_L) \times [Kt/V]_H- \ln (CE_H) \times [Kt/V]_L}{[Kt/V_H]-[Kt/V]_L}}{ \frac { \ln (CE_H)- \ln (CE_L)} {[Kt/V]_H-[Kt/V]_L}} (3)$$
$$ \frac{Kt}{V}dp = \frac {Kt}{V}sp-0.6 \frac { \frac{Kt}{V}sp}{t}+0.03 (4)$$
上記4つをKt/V式として掲出しました。
日本透析医学会の年末統計調査で用いられるのは、3つ目にある新里式です。しかし、実際にこれをExcelでやろうとはしましたが、元論文には途中式が無いため、どうしても関数が組めません。
しかも、Chat-GPT 4oに新里式Kt/Vの式をExcelで書いて!!と頼んだらKt/v-spになる始末(理由は、以下の通り)。
透析前後の採血データのみで新里式Kt/Vを算出する方法
実臨床では、透析前(Pre)と透析後(Post)の血液検査データを基にして、新里式Kt/Vを求める方法が採用されています。この場合、式の中に含まれる 「高い時点」 と 「低い時点」 を、透析前(Pre) と 透析後(Post) のデータに置き換えて計算します。
1. 透析前後のデータ
通常、臨床では以下のデータが得られます。
- 透析前(Pre)
- BUN_Pre:透析開始前の血中尿素窒素(BUN: Blood Urea Nitrogen)
- 透析後(Post)
- BUN_Post:透析終了直後の血中尿素窒素(BUN)
透析中の尿素の動態を考慮して、通常はBUN_Postを補正(時間遅れ補正)して用いることがありますが、基本的な計算では単純な透析前後の値を使用します。
2. 計算手順
(1) 透析中の尿素クリアランス(CE)の近似
新里式では「高い時点」と「低い時点」のクリアランス(CE_H と CE_L)が必要ですが、臨床ではこれを以下のように近似します。
- CE_H ≈ BUN_Pre
- CE_L ≈ BUN_Post
これにより、新里式の式を簡単化できます。
(2) 高い時点と低い時点の Kt/V の近似
透析中の時間変化を考慮するために、新里式では次のように定義される Kt/VKt/V を使います。
- 高い時点の Kt/VKt/V: [Kt/V]H=0 (透析開始時は除去がまだ始まっていないのでゼロ)
- 低い時点の Kt/VKt/V: [Kt/V]L=−ln(BUNPost/BUNPre)
3. 実際の新里式を簡略化
元の新里式:
$$ \frac {Kt}{V} = \frac {\ln (CE)- \frac {(CE_L) \times [Kt/V]_H- \ln (CE_H) \times [Kt/V]_L}{[Kt/V_H]-[Kt/V]_L}}{ \frac { \ln (CE_H)- \ln (CE_L)} {[Kt/V]_H-[Kt/V]_L}} $$
に、上述の近似
$$ CE_{H}= BUN_{Pre}, CE_{L}= BUN_{Post}$$
$$ [Kt/V]_{H}=0, [Kt/V]_{L}=−ln(BUN_{Post}/BUN_{Pre}) $$
を代入すると、以下の式に簡略化されます。
$$ Kt/V = \frac{\ln(BUN_Pre) – \ln(BUN_Post)}{\ln(BUN_Pre) – \ln(BUN_Post)} $$
最終的に整理すると、
$$ Kt/V=-\ln \left( \frac{BUN_Post}{BUN_Pre} \right) $$
4. Excelでの計算式
Excelでこの新里式Kt/Vを計算するには、次の数式を使います。
=-LN(B2/C2)
B2: 透析前のBUN(BUN_Pre)
C2: 透析後のBUN(BUN_Post)
これを入力すれば、自動的に新里式Kt/Vが算出できます。
5. まとめ
- 透析前後のBUNのみ を用いて新里式Kt/Vを求めることができる。
- 計算式はシンプル に
$$ Kt/V=-\ln \left( \frac{BUN_Post}{BUN_Pre} \right) $$
となる。
- Excelで簡単に計算可能(
=-LN(BUN_Post / BUN_Pre)
)
この方法を用いることで、実臨床においても簡単に新里式Kt/Vを算出でき、透析の効果をより正確に評価できます。
とまぁ、Chat-GPT 4oはこのように導出したわけです。いやこれ屁理屈ちゃいますん…
出来る範囲でExcel化
さすがにKt/V-spでは芸がない。ということで、なんとか出来ないかと思案し、フォロワーの方からお力添えを頂きまして、半自力で関数を組みました。
使用したのは(2)式で挙げているDaugrirdasの第2世代公式です。
次に、これを関数化した式を示します。
=IF(D2=””,””,ROUND(-LN((D2/C2)-(0.008*E2)) + (4 – (3.5 * (D2/C2))) * ((F2-G2)/G2), 2))
これは、C1:BUN前、D1:BUN後、E1:透析時間(t)、F1:前体重、G1:後体重を列名として定義し、2行目から数値を入力して計算。としています。計算結果は小数点第2位です。
上記の関数式をそのままコピーして頂ければ、Excelでの使用は可能と思われます。
サイト上で計算してみよう!
ただ、Excelでするまでも無い。と思う方の為に、calculated field formで計算フォームを作りましたので、よければ御活用ください。
あとがき
というわけで、今回はKt/Vの自動算出の記事を執筆しました。
この記事を執筆中に、フォロワーの方から「新里式の計算は、実際はシングルプールだよ」と言われ、愕然としました。マジかよ‥‥
まぁでも練習がてら書けたしいっか!という事にしておきます。
もし計算結果がおかしいとかあればご指摘くださいね。
では今日はこの辺で。
まったね~。
コメント