カルシミメティクスの可能性と展望

CKD-MBD

 さてさて、今回はネタ募集というポストをしたところ、とても強力なネタを頂き、その中でも個人的に刺さったテーマとして「カルシミメティクス(Ca擬態薬)」について、少しでも深堀出来ればと思い、筆を執った次第です。

 さ、では行きましょう。カルシミメティクスの世界へようこそ。

そもそもカルシミメティクスとは?

 カルシミメティクスについては、実は前に記事を少し書いています(まだまだ理解が足りてませんが)。それが下記になります。

 ただ内容を見返すと、「なんじゃこの内容の薄さは!?ハゲか!?」と自分で驚きました。なので、二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)の記事も引用しようと思います。

 いやー自分で読んでてもほれぼれする詳細さです。こういうのが好きなんですよ。

 カルシミメティクスは、つまるところ高Ca血症でも、鈍麻して活性化しなくなったCaSRに対して、結合して活性化させることで、PTHを下げる役割を持つお薬です。これまで活性化VD製剤でしか調整できなかった透析診療に、一筋の光が差し込んだ。という感じでしょうか。

CKD-MBD治療は新時代へ

 カルシミメティクスを語る場合に、新旧ガイドラインの話を外すことは出来ません。

 当ブログでも初期の頃にCKD-MBD関連の記事をシリーズ執筆したことがあります。

上記シリーズ記事の中でしつこく出ているのが「死亡率を表わすリンのJカーブ」です。当時はこの発表を元にガイドラインが策定されました。

 確かに。改訂版ガイドラインの値と比べても、当たらずも遠からずという値になっています。

 しかし、このガイドライン策定の2012年時には、まだカルシミメティクスは登場していません。カルシミメティクスが登場するのは、その少しあと、2016年に小野薬品がエテルカルセチド(Etelcalcetide)の製造販売承認を取得しているのが本邦での始まりと思われます。ガイドラインの策定時期を考えれば、海外でカルシミメティクスが出た時には、ほぼCKD-MBDガイドラインは出来上がっていたのでしょう。

 その後、オルケディア(エボカルセト)・レグパラ(シナカルセト)・パーサビブ(エテルカルセチド)・ウパシタ(ウパシカルセト)が登場します。これらが出揃ったのが2021年頃です。

 カルシミメティクスの強力と言えるPTH降下作用は、次々と大規模RCTによりエビデンスを蓄えていきます。

 これらの情勢を鑑み、次世代ガイドラインの策定が急がれたわけです。

カルシミメティクスの効果やいかに?

 新CKD-MBDガイドラインである程度の推奨をうけることになるカルシミメティクス達ですが、では実際には効果の程はどうなのでしょうか?

 今回参考にした論文は3報。どれも2024年openの論文です。

 まずは系統的レビュー&メタアナライシスを実施した「Calcimimetics treatment strategy for serum calcium and phosphate management in patients with secondary hyperparathyroidism undergoing dialysis: A systematic review and meta-analysis of randomized studies」です。

 この論文のSummaryとしては、

  • SHPTは透析患者において一般的な合併症であり、副甲状腺ホルモン(PTH)過剰により高カルシウム血症、高リン血症を引き起こし、血管石灰化や骨代謝異常につながる。
  • **カルシミメティクス(例:シナカルセト、エテルカルセチド)**は、カルシウム受容体に作用しPTHを抑制することで、血清カルシウムとリンの管理に有用とされている。
  • このメタ解析が示唆するポイントとして、カルシミメティクスのPTH低下効果の一貫性、血清カルシウム・リン値への影響、長期的な安全性が重要。
  • 所感として、メタ解析の結果が臨床において治療ガイドラインへどう反映されるかが気になる。特に従来のビタミンD受容体作動薬との併用の最適戦略が重要な議題。

 といったところになります(Chat-GPT 4oの出力)

 続きまして、お次に引用した論文はこちら。「Effectiveness of calcimimetics on fractures in dialysis patients with secondary hyperparathyroidism: meta‑analysis of randomized trials」という論文。いやーいろんな人がメタアナライシスしてるもんですね。それくらいCKD-MBDは活況ということです。

 さて、この論文のSummaryとしてはこんな感じ。

  • 透析患者において、SHPTによる骨粗鬆症・骨折リスク増加は大きな問題であり、これがカルシミメティクス治療でどの程度軽減されるかが論じられている。
  • 一般的に、PTHが高すぎると骨リモデリングが過剰に進み骨密度低下を招くが、過度に抑制するとアドミクス性骨症(adynamic bone disease)が発生し逆に骨脆弱性を増す
  • カルシミメティクスはPTHを抑制するが、過剰な低下が骨折リスクに影響する可能性もあるため、そのバランスが臨床的に重要
  • このメタ解析の結果が、カルシミメティクス単独治療と他の治療(ビタミンD受容体作動薬やリン吸着薬など)との比較をどう評価しているかに注目

 という結果になりました(Chat-GPT 4oの出力)。

 最後に引用する論文はこちら。「New calcimimetics for secondary hyperparathyroidism in CKD G5D: do they offer advantages?」です。さて、新規カルシミメティクス達はどの点で有利なのでしょうか。

 それをSummaryとしたのが下のリストです。

既存のカルシミメティクス(シナカルセト、エテルカルセチド)に対して、新規薬剤(例:エボカルセチドなど)がどのようなメリットを持つかが主題。 ポイントとして考えられるのは、以下の点

  • 投与経路の違い(経口 vs 静注)
  • 副作用の軽減(悪心・嘔吐の頻度低下)
  • 血清カルシウム・リン管理の優位性
  • アドミクス性骨症リスクの低減

既存のカルシミメティクスが持つ問題点(消化器症状や低カルシウム血症)を新薬が改善できるかが評価の鍵となる。

 ということです(Chat-GPT 4oの出力)。

 この3報に関しては、近々記事にさせていただきます。

 さて、この引用論文から言えることは何なのでしょうか。

カルシミメティクスの効果は凄まじい

 一般的にPTHの高値は骨折の発生リスクや死亡率の上昇に関与すると言われています。また、リンとカルシウムは言わずもがな、血管石灰化を招きます。

 現在、高リン血症治療薬としては、旧来のリン吸着薬に加え、新しくリン吸収阻害薬であるテナパノル塩酸塩(フォゼベル®)も加わる診療体制となりました。

 それでも、リンの値を新ガイドラインである5.5mg/dLまで下げることが難しい患者群というのは存在するでしょう。そこで、カルシミメティクスの登場です。

 カルシミメティクスは副甲状腺のCaSRに作用することで、CaSRの活性化を起こし、PTHの分泌を抑制し、減少に寄与します。また、PTHの低下によりカルシウムの低下作用も生じます(一過性に低カルシウム血症の可能性もあり)。一般的にカルシウムの低下は骨代謝の活性化からリンの上昇を招きますが、カルシミメティクスは各細胞表面にあるCaSRにも作用し、骨代謝を抑制する方向に働き、骨中からのFGF-23やリンの遊離を防ぎます。これにより、カルシウムとリンの減少にも寄与することで、この3パラメータの基準値達成を補助することが可能となるのです。

 また、直接関係があるかはまだ未知数ながらも、カルシミメティクスの治療は、骨折の発生率を有意に減少させることにも成功しています。これまた一般的な話になりますが、PTHやALPの高値は、骨折のハイリスク群とされています。引用文献ではALPについては触れられていませんが、PTHの減少と骨折の減少には、少なくとも相関があり、何かしらの関係があることを示唆するものです。

 弊社ではビスホスホネート系薬剤であるボンビバを使っています。

 ビスホスホネート系薬剤は骨粗しょう症治療薬であり、骨代謝を抑制することで高カルシウム血症を防ぎます。この薬剤はここが味噌で、添付文書や効能にPTHを下げる。とは書かれていません。

 確かに、生理学的には骨代謝を抑制するため、高カルシウムの予防に始まり、結果的に遊離リンの減少にも繋がるのかもしれません。但し、これはあくまで「if」ストーリーであります。PTHを下げるのかと言われれば、その効果は未知数です。その為、筆者としては、次のテーマはカルシミメティクスv.s.ビスホスホネート系薬剤での全骨折率(特に透析患者に多い股関節骨折)やPTHの低下率をメタアナライシスした文献を探すことです。ない?なけりゃー自分で作るまでだ!!(無理)

 結果として、カルシミメティクスは用量依存的にPTHを下げ、カルシウムの一過性低カルシウム血症を招きながらも、カルシウムとリンを正常範囲に持って行く作用を有する優秀な薬剤である。ということが判明しました。

あとがき

 いや~今回は実に大作です。一体参考文献に金いくら掛けてんだよ…というね。

 ただ、筆者、実は一時期慢性維持透析を完全に抜けていた時期があり、CHDFやPEしかしてないうちにカルシミメティクスが登場したので、勉強という意味ではいい機会になりました。

 カルシミメティクスがCaSRに作用してPTHを下げることはもちろんの事、それにより骨折のリスクを下げ、リンやカルシウムも目標範囲内への到達を手助けする。というメタアナライシスは、筆者にとっては新しい知見です。

 この次は、先ほども述べた通りのカルシミメティクスv.s.ビスホスホネート系薬剤の資料探しです。さ、お目当ての文献は見つかるのか、乞うご期待です!!

 という訳で、今回はここまで。

 まったね~ノシ

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