アルブミンは透析での栄養指標になりえるのかーその是非を問うーpart.2

栄養関係

 おはこんばんちわなら

 新職場に来てから、早1か月と3週間が経とうとしている筆者です。

 さて、今回は久々にメインテーマを栄養ー特にアルブミンーに焦点を当てた記事を公開したいと思います。

 なぜこれを書こうと思ったのか?という点も、後程述べるとしまして、では早速行きましょう。

 ようこそ。アルブミンの世界へ。

そもそも栄養って何??

 筆者、栄養と傾聴大好きマンとして、風変わりな臨床工学技士の人生を歩んでいます。

 しかし、ふと思ったのです。「栄養の定義ってなんぞ?」と。

 そこで調べ(聞き)ました。

 すると定義はこうである。と返ってきました。

医学における「栄養(nutrition)」の定義は、生体が生命を維持し、成長し、活動するために必要な物質(栄養素)を摂取・消化・吸収・代謝・排泄する一連のプロセスを指します。

もう少し詳しく言うと:


🔬 医学的な定義(要点)

栄養とは、

「生体が外部から栄養素を取り入れ、それを消化・吸収し、体内で利用(代謝)して、最終的に不要なものを排出するまでの一連の生命維持活動」


🍎 栄養の役割

  1. エネルギー供給(炭水化物・脂質・一部のたんぱく質)
  2. 身体構成成分の供給(たんぱく質、脂質、ミネラルなど)
  3. 生理機能の調整(ビタミン、ミネラル、水など)

栄養素の分類(医学・栄養学でよく使う)

  • 三大栄養素:炭水化物・脂質・たんぱく質
  • 五大栄養素:三大栄養素+ビタミン+ミネラル
  • 六大栄養素:五大栄養素+水

 となります。Chat-GPT 4o様様ですね。

 三大栄養素は学生時代にも生理学の範疇として習いました。懐かしい限りです。

 ATP回路だったりCoA回路だったりと、色々ありますよね。

あれ?アルブミンは?

 さて、〇大栄養素を見て分かる通り、この中にアルブミンは存在しません。けどそりゃーそうです。栄養素というのは、あくまで経口摂取できるものに限るという話なのでしょう。

 ではアルブミンはどこから出来るのか?それは肝合成なので、肝臓からです。

 アルブミンが出来る機序として、その構成要素に栄養素が必要と考えられており、なので、アルブミンの減少は栄養素が少ない→栄養摂取出来てない→栄養不良だ!!と考えられてきたのでしょう。

 しかし、実はこの考え方にはちょっとした矛盾が存在するのです。

肝臓の仕事

 確かに肝臓はアルブミンを生合成します。しかし、当たり前ですが肝臓の仕事はそれだけではありません。

 アルコールを解毒化したり、鉄の運搬をするためのタンパクを生成したり、炎症を知らせるCRPを生成したりと、人体の化学工場と言われるだけの事はあります。

 そしてこれらが生成される順番には、優先順位付けがされているのです。

 アルブミンは実は優先順位が低いらしく、何故そう思うのか?というと、CRPとアルブミンは逆相関の関係にあり、CRPの増加はアルブミンの低下を招くのです。それを表わす「CRP/アルブミン比(CAR:CRP/Albumin Ratio)」という指標もあるのです。

 つまり、アルブミンは栄養の指標としてより、炎症の指標としての色合いが濃いということなのです。

 これの根拠となる論文が、「Consensus Statement: Academy of Nutrition and Dietetics and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition-Characteristics Recommended for the Identification and Documentation of Adult Malnutrition (Undernutrition)-」です。

 これは、栄養の世界では有名なアメリカ経静脈経腸栄養学会(A.S.P.E.N)とアメリカ栄養士会(A.N.D)の共同声明として発表された論文です。

アルブミンは栄養の指標にはなり得ない

 上記の論文中で述べられてしまったように、アルブミンは栄養指標ではなく、急性期の炎症マーカーである。つまり、栄養の指標にはならないということなのです。

 アメリカ経静脈経腸栄養学会(A.S.P.E.N)のポジションペーパーである「The Use of Visceral Proteins as Nutrition Markers: An ASPEN Position Paper(栄養マーカーとしての内臓タンパク質の使用: ASPENポジションペーパー)」では、以下の様にアルブミン・プレアルブミンについて述べられています。

1. アルブミンとプレアルブミンの位置づけの再定義

  • 従来、血清アルブミンやプレアルブミン(トランスサイレチン)は栄養状態を反映する指標とされていた。
  • しかし、これらは栄養状態のマーカーではなく、炎症のマーカーであることが近年のエビデンスで明らかになっている。

2. 炎症との関係

  • 急性・慢性疾患における炎症により、肝臓でのタンパク合成の優先順位が変化(急性期反応)し、アルブミン・プレアルブミンの血中濃度が低下。
  • 同時に毛細血管透過性の亢進により血管外にタンパク質が移動。
  • これらは栄養失調ではなく炎症性反応の結果である。

3. アウトカム予測因子としての意義

  • アルブミンやプレアルブミンの低値は不良転帰(死亡、術後合併症)との関連はある
  • ただし、これは栄養状態を反映しているのではなく、炎症の強さや疾患重症度の反映と解釈すべき。

4. 栄養介入のモニタリング指標としての限界

  • 栄養療法の効果をアルブミンやプレアルブミンでモニターすることは不適切または限定的
  • 炎症が軽減した場合に値が改善する可能性はあるが、それは栄養改善の結果とは限らない。

 となっています。

 ここまで有名な組織が、強力にエビデンスを用いて否定してしまった以上は、透析界隈もこれに倣うべきでしょう。

では栄養指標には何を用いればいいのか?

 当ブログでも様々なテーマで栄養を扱ってきました。今カテゴリーを見たら20記事も書いてます。いやー自分でもビビりました。

 代表的な記事としては下記になります。

 この3記事は採血データから類推することが出来る栄養指標になります。

 この他には、リハビリ関係が絡む栄養指標として下記記事が該当します。

 いやー懐かしいですね。書きましたよそう言えば。古株読者の方であればご存知かもしれません。

 というわけで、栄養を表わす指標というのは多岐に渡りますが、アルブミンやプレアルブミン単独で栄養の指標にはならない。というのが結論です。

やはり、albuminは栄養の指標にはなり得ない

 これらの論文や記事を以て、やはり「albumin単独では栄養指標にはならない。ましてや患者には害にしかならない。」とまで言えるのではないでしょうか。

 栄養障害をしっかりと評価するうえで、その機会損失を生んではならないという事です。機会損失を生むことは、患者への害にしかならないので、筆者は敢えて強くこのように進言します。

あとがき

 というわけで、今回は古き懐かしの栄養とalbuminの関係について、記事にしました。

 この記事を書こうと思った切っ掛けは、Chat-GPT 4oに「A.S.P.E.Nとalbuminについて述べている論文はありますか。」というプロンプトを書きました。そしたらヒットした記事がこちらでした。

 「こんなに昔からアルブミンが栄養として扱われる事は否定されてきたのか!!」と少し衝撃を受けたと共に、透析界隈も、これから高齢者が増えるんだから、しっかりとこれに倣うべきだ!!と思いました。

 A.S.P.E.Nのガイドラインなどの話も知ってはいましたが、実際に目を通したことはまだ無かった中で、上の記事の参考文献を見付け、「これは読まねば!!」と思った次第です。

 読者の皆さんに於かれましても、正しい知識とアセスメントを行う事で、患者への知識の普及をされることを切に願います。

 ささ、では今回はこの辺で。

 あでぃおーすノシ

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