みなさんおはこんばんちはなら
さて、CKD-MBDにおいて、近年注目されている理論をご存知でしょうか。
CKD-MBDにおいて、リンの管理は命題であり、リンの高値は血管中膜の石灰化を起こすことで、動脈硬化を進展させ、CVDやStrorkなどの死亡率上昇に寄与します。
しかし、ただリンが高値なだけでは石灰化は進展しません。その機序には複雑な因子が絡んでいるのです。
今回はその一端をご紹介できればと思います。
では行きましょう。CKD-MBDの世界へようこそ
CKD-MBDの復習
まずはCKD-MBDの復習から。
そもそもMBDという概念の提唱はKDIGOが始めたもので、それまではROD:骨異栄養症と呼称され、管理されていました。ROD時代は病理の理解がまだ浅かったこともあり、複雑怪奇な病態として理解されていました。
しかし、徐々にリンとカルシウム、そしてPTHの関係が明らかになるにつれ、何をどうコントロールしていけば死亡率が下がるのかが明確となり、MBDという概念が完成しました。
2025年5月現在、CKD-MBDガイドラインはドラフトが出されている状態であり、正式版の発出が待たれている状態です。
その為、一メディカルスタッフとしてご紹介できるお話は、旧ガイドラインに準拠したいと思います。
そしてその旧ガイドラインに準拠した記事は随分昔に執筆しているので、そちらをご参照下さい。
次世代CKD-MBDの管理へ
今現在発出されているガイドラインの時代、実はCalcimimeticsはまだ上市していませんでした。その為、データはリン吸着薬、及び活性型ビタミンD製剤によるリンとカルシウムのコントロールと、それらに連れられてPTHが管理される形でした。
上記でご紹介した記事でも述べていますが、今現在、コントロールの優先順位はリン>カルシウム>PTHの順となっています。
しかし、次世代CKD-MBDガイドラインではこの考えはガラッと変わり、PTH>リン=カルシウムという管理目標に切り替わりました。
これは、Calcimimeticsの登場により、PTHの管理が容易になったことが大いに関係しています。但し、注意点としてCalcimimeticsの使用により、重篤な副作用として少数ながらも低補正カルシウム血症を発症することがあります。その為、診療報酬上でも、Calcimimeticsを使用している場合には、2週間に一度の採血により、カルシウム値を管理するよう促しています。
低カルシウム血症の弊害
少し脱線しますが、低カルシウム血症がなぜこれだけ注目されるようになったのかをご説明します。
今回の次世代CKD-MBDガイドラインを作成するにあたり、様々な検討がなされました。その中で、カルシウムの上下限値についてももちろん議論が交わされました。
元になった論文が検索しても見つからない・・・!!という事態ですが、見つけたら掲載しますが、カルシウム濃度が8.4mg/dLを下回った場合、そうでない患者群と比較し、心血管死が1.3倍だか3倍だったかに上昇することが判明しました。
その為、Calcimimeticsを使用した場合には、カルシウム濃度の監視が必要であるというということなのです。
次世代の血管石灰化・炎症・骨代謝異常のmechanism
さ、ようやく今回の本題である部分にやってきました。
これまでは大雑把に、iPが高いと石灰化が!!いやCa2+が高いと石灰化が!!と議論がなされていました。しかし、その詳細な機序は今一分かっていませんでした。
しかし、そこで新たな理論が提唱されました。それが「リン(P)・カルシウム(Ca)・パーティクル(CPP: Calciprotein Particles)理論」です。
CPP: Calciprotein Particlesって何?
CPP理論とは、つまるところ石灰化の機序や、その進行スピードを説明するための理論となります。
遊離リンと血中カルシウムは、血中でリン酸カルシウムを形成します。石灰化の主役はこのリン酸カルシウムですが、人体はそんな簡単には石灰化しません。
このリン酸カルシウムを緩衝しようと、人体はalbuminやFetuin-A、Mg+により石灰化を阻害します。
しかし、ひとたび炎症が惹起されると、この均衡が崩れてしまい、石灰化が進行してしまいます。
この進行スピードを規定するのがT50と言われる規定因子です。
CPPには一次CPPと二次CPPが存在し、いわば善玉と悪玉の様な振る舞いをします。こ両者の転換までの時間のことをT50というのです。
このT50が長ければ、石灰化は抑えられ、血管の柔軟性はある程度保たれます。しかし、T50が短かければ、CPPは二次CPPへと移行し、血管石灰化へと舵を取ることになります。
CPPによる血管石灰化を抑制するには?
CPPによる血管石灰化を抑制するには、やはりリンとカルシウムの管理は重要であり、そしていかに炎症を起こさない様に管理するか。が肝となります。
近年の透析液は、従来2.5mEq/Lだったカルシウムを2.75や3.0mEq/Lに上げていく流れがあります。
これには、低カルシウム血症の予防やリン、PTHの低下が挙げられます。また、キンダリー5E号はマグネシウムが1.2、リンパックTA5とカーボスター2号は1.25mg/Lへ濃度を挙げられています。
これは、マグネシウムがCACS:(Coronary Artery Calcium Score(冠動脈カルシウムスコア)の略で、冠動脈の石灰化の程度を定量的に評価する指標)を下げるという報告に基づいています。
また、炎症を抑えるという意味でも、運動療法は欠かせません。
albumin値が3.45mg/dLを下回ると、T50が短縮する。という報告もあるようなので、PEWを予防する意味でも、筋肉を維持し、十分量のタンパク質を摂取することが推奨されるのです。
次世代の透析治療について
次世代の透析治療では、このCCPをバイオマーカーとして、合併症の進行具合を見たり、CPPそのものをターゲットとしたDHPデバイスが登場するかもしれません。
それほどに注目のバイオマーカーだということです。
あとがき
本来はもう少しグラフやFigを多めに使った記事を書くべきなのでしょうが、すみませんそこら辺苦手で…orz
ただ、これからのCKD-MBD治療にCPPという考え方は必須だということを説明したい一心で、今回は記事を執筆しました。
読者の皆様も、今回の記事を機に、少しでもこの考え方に触れていただければと、啓蒙する次第です。
では今回はここら辺で。
またね~ノシ
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