おはこんばんちはなら。
さてさて、つい先日ちょっと調べ物をしていまして、PTHに関してもChat-GPTでReviewを作成していました。
不勉強ながら、そこでPTHの高値だけでなく、低値に関しても知見を得たため、まとめるためにも記事にしようと思って筆を執っています。
では行きましょう!PTHの世界へようこそ!
1.はじめに
JSDTガイドラインでは、現行ガイドラインでintact PTHで60~240pg/dLが正常値として設定されています。また、K/DOQIガイドラインでも、150~300 pg/dL が設定されています。そして、ドラフトでのJSDT新CKD-MBDガイドラインでは、一つは現行の基準値と同様の値が設定され、もう一つは下限値freeでの設定がなされました。
この基準値設定には、勿論しっかりとしたエビデンスがあり、透析患者では、副甲状腺ホルモン(PTH)が骨だけでなく心血管疾患や生存率にも関係することが指摘されています
では実際、PTHを下げる治療は本当に生存率を改善するのか?
これについて、最新の研究(2015年以降)を中心に整理してみたのでご紹介します。
2. PTHの役割と透析患者での異常
副甲状腺ホルモン(intact-PTH)は、血中カルシウム濃度の維持に関与する重要なホルモンです。腎不全ではリン排泄が障害され、血清リンの上昇によりPTHが刺激されて高値となりやすく、これがCKD-MBD(慢性腎臓病-骨代謝異常)につながります。逆に、過度な治療や低栄養によりPTHが著しく低下することも問題とされています。
3. 高すぎるPTHは危険?
DOPPS日本コホート(2018年)では、透析患者のPTH値が600 pg/mLを超えると全死亡のリスクが有意に上昇する(HR 1.35)ことが示されました。
また、日本のJSDTレジストリ解析では、副甲状腺摘出術(PTx)を行わなかった重症SHPT患者で全死亡および心血管死亡リスクが増加。PTxを施行することで、それらのリスクが30%以上低下することが報告されています。
中国の前向き研究でも、PTHが450 pg/mL以上で死亡リスクが明らかに高くなることが示されており、「PTHは高すぎても危険」という点で国際的な一致が見られます。
4. 低PTHのリスクとその背景
一方、PTHが150 pg/mL未満の”低PTH群”でも、感染症死亡や全死亡のリスクが高くなることが報告されています(韓国・中国コホート)。
しかし、こうしたリスクは栄養状態(Alb低値、低リン血症、低ALP)や合併症(高齢、糖尿病)と関連することが多く、「低PTH=予後不良」と単純には言えません。実際、傾向スコアマッチング解析ではPTH低値群と高値群で予後差が消失した報告もあり、交絡因子の影響が大きいことが示唆されています。
5. 薬でPTHを下げる治療は有効?
PTHを薬剤で積極的に下げることで予後が改善するかという点では、大規模RCTの結果は芳しくありません。
- EVOLVE試験:カルシウム受容体作動薬(シナカルセト)によるPTH低下は、死亡率やCVD発症を有意には抑制できませんでした。
- J-DAVID試験(日本):活性型ビタミンD製剤を投与しても、心血管イベントや死亡率の改善は見られませんでした。
これらの結果から、「PTH値を薬で下げれば長生きできる」とは限らないことが明確になっています。
6. PTH管理のポイント
指標 | 推奨される管理方針 |
---|---|
高PTH(>600 pg/mL) | リスク↑、必要に応じてPTxも検討 |
低PTH(<150 pg/mL) | 栄養不良・感染症リスク、背景を評価 |
安全域 | 概ね150〜450 pg/mL(U字型リスクを回避) |
治療効果 | 薬剤によるPTH是正だけで予後は改善しない可能性 |
7. おわりに
PTHは単なる「数字」ではなく、その背景にある栄養状態や骨代謝異常、慢性炎症などの文脈を含めて評価すべき項目です。透析患者におけるPTH管理では、「過剰に下げない」「極端に上げない」「背景を見る」ことが重要です。
今後の臨床では、PTH値を全体的な患者評価の中に位置づけながら、個別性のある介入が求められるでしょう。
あとがき
さて、今回はPTHの高低差とその死亡率、原因への推察について記事にしました。
PTHには推奨値はあれど、調べれば調べるほど沼というか、はっきりしません。その解釈は困難を極めます。
当院ではCalcimimeticsを使用していません。果たしてそれでいいのか?という疑問から、今回の記事内容となりました。
もし「こんな疑問はどうだ?」というテーマがあれば、是非ご連絡ください。頑張って記事にします(笑)
では今回はこの辺で。
まったね~ノシ
🔗参考文献(抜粋)
- Komaba H et al. Kidney Int 2015
- Yamamoto S et al. Nephrol Dial Transplant 2018
- Zhou C et al. Int Urol Nephrol 2021
- Kim SM et al. BMC Nephrology 2020
- Tang Y et al. Front Med 2022
- EVOLVE trial, NEJM 2012
- J-DAVID trial, JASN 2018
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