栄養を見つめるーその先にある人生ー

栄養関係

さて、皆さんは普段どのように患者さんに接していますか?

僕ら血液透析に関わる医療従事者は、患者の人生の伴走者として、辛いかもしれませんがほぼ最後まで見守るという責任が生じます。

その責任を考えた時、筆者が思うのは「いつまでも元気で、しっかりと自分の脚で通院できる。それを支える事が僕らの仕事だ」と思っています。

そんな話を、ついこの間職場で看護師としました。

その話の内容を備忘録として今回は綴ってみようと思います。

僕らは何を思い、患者に透析を提供するのか?

このブログの読者の方は良くご存知だと思いますが、筆者は何においても栄養評価が大好きです。

透析効率同様、栄養の評価も数値としてしっかりと表現することが可能な指標が存在します。

筆者はその栄養指標として「nPCR」「%CGR」「CGRn」「GNRI」「NRI-JH」を用いています。

筆者は毎月趣味として、透析前後の採血結果を用いて下記の3大項目を算出しています

  • 検査統計:「Pre/Post BUN」「Pre/Post Cr」「Kt/V」「TAC-BUN」「Alb」「Pre K」「補正Ca」「P」「Hb」「TSAT」「フェリチン」
  • 栄養指標:「ネオアミユーの有無」「nPCR」「%CGR」「CGRn」「GNRI」「NRI-JH」
  • 貧血:「RBC」「Hb」「MCH」「MCHC」「MCV」「血清鉄」「TSAT」「フェリチン」「フェジンの有無」「ボンビバの有無」「ESA使用量」「ERI」

そもそも、何のために前後採血をしているのか。それは透析効率や%CGRなどを算出するためです。

当院の院長はBUN除去率を当てに透析条件を決めていますが、臨床透析Vol.41 No.8 8月増刊号のP.59にも

URRは血清尿素濃度が1回の透析でどれだけ減ったかを評価する。しかし、透析中の除水と尿素産生が考慮されていないため、URRはspKt/Vに比べて溶質除去効率の評価上、大きな誤差を含んでいる。

と記載されているように、除去率は透析効率を勘案する場合には当てになりません。

一部には「除去率は66%以上出せていればいい」という意見もありますが、これはあくまで最低限の透析を提供する場合のボーダーラインだという話しであり、決して「これが最高の透析条件だ!」という訳ではありません。

院長は虎の威を借る狐なので、「URRは慶應でも使ってるんだぞ!」といいますが、だからなんなんでしょうね(笑)Kt/Vは世界標準なので、慶應がどうとか知りません(笑)

さて話が逸れましたね。

筆者は毎月こうやって検査データを解析し、スタッフ間で共有出来るように努めています

ですが先月、職場のある技士がデータを見る際に言いました。

「別に栄養はいいわ(笑)」

と。

何がいいんでしょうね??一体あなたは何を診て患者に対する至適透析を決めているんですか?と言いたくなりました。

Modalityを決めるときの指標としての栄養

先述したように、筆者は毎月様々なScoreを出しては、「この患者はもっと血流量上げた方がいい。」「この患者は膜面積を上げよう」などと考えています。

その中で、HD or OHDF or I-HDFのどれにするか?というmodalityも考えなければなりません。

皆さんの施設では、このmodalityを決定する時に何を指標として透析を行っていますか?

筆者の場合、Alb、GNRI、NRI-JHの3つを診てmodalityを考えています。

この場合、Alb>3.0 mg/dL , GNRI>middle risk , NRI-JH>middle riskでPost-OHDFを実施しようと考えます。

GNRIもNRI-JHも、元になる論文中でcut offが定められており、それを目安にRisk分類を定めています。

当院で採用しているヘモダイアフィルターは旭化成メディカルのABH-22LA , 26PA、東レメディカルのNVF-10MのPS膜1種類の3製品しかありません。ラインナップは超貧相であり、何も考えていない品揃えです。

その中でもなんとかやりくりしてOHDFに移行しよう。と考えたりしている訳です。

しかし、当院技士は何を診て透析modalityを考えているのかさっぱり分かりません。恐らくは、未だにAlbだけを見て透析【なんか】回せばいいや。とでも考えているのでしょう。

筆者にはその考えが末恐ろしく、また無学すぎて心底呆れてしまうのです。

栄養から見える患者背景

筆者は、BUNやCrの数値を診て「この人はちゃんと食事出来てるな」「ちょっと運動足りてないのかな」などを観察します。

そして実際の患者を前に、雑談と称しながら傾聴し、聞き取りを行います。

「最近ご飯の具合どう?」「いやー天気悪いですよね。あんまし外出てないですか?」等。

この様な会話から、患者の直近の動態を把握し、「だからデータはこうなんだな」と類推するのです。

無論、Albを蔑ろにするわけではありません。なので、筆者の中では、OHDFをするに当たり、Alb>3.0 mg/dLであれば、「OHDFをすることにより一過性に下がったとしても許容する」を軸に考えています。

但し、筆者がmodalityを考えていく中で、I-HDFという選択肢はほぼありません。

なぜなら、筆者は明確にI-HDFは否定派だからです。あれはただ単純に、血液濾過透析加算が欲しいがために行われるだけの無意味な治療だと思っています。

なので、栄養指標がHigh riskであれば、積層型を使ったHDに切り替える。という考えで治療を診ています。

栄養を診ずして何を診る?

さて、先述したように、当院の技士は栄養は診ないようです。

栄養から視えてくる患者背景というのは、とても貴重なデータに他なりません。

栄養状態を診ることで、フレイル・サルコペニア・PEWの早期発見を可能にするのです。

2025年に発表された、日本透析医学会「2023年末の慢性透析患者に関する集計」にもある通り、全体の平均年齢は70.09歳と年々上昇傾向にあります。

高齢化により、身体能力は落ち、それに伴いADLは低下。食欲低下から体力は落ち、それに伴い運動量は減り筋肉量は減少します。意欲の低下は外出の機会を減らし、社会的孤立を招くため、抑うつ・鬱傾向へと傾く恐れもあります。これらの状態が重なり、QoLの低下を招きます。

最初でも述べたように、筆者の究極の想いというのは、「いつまでも元気に、自分の脚で通院し透析を受けることが出来る状態」です。

病院経営を考えた時

患者数は減少フェーズに入った日本の透析医療に於いて、患者数の確保・維持というのは病院・診療所ともに死活問題です。

当院でも、今の患者数を維持するのは広い地域をカバーしているにも拘らず困難を極めます。

この経営問題を考えた時、「いつまでも元気に通院してもらう」というのはとても重要なターニングポイントになると、筆者は考えます。

筆者の施設は某地域の広域をカバーする数少ない透析施設です。その為、患者層は老若男女を問わず、様々なカテゴリーの背景を持った患者さん達が出入りしています。

その人たちに、末永く当院を利用してもらおう。と考えた時に、今できる最高の透析を受けてもらおう。と考えるのは至極当然の帰結だと思うのです。

満足な豚より不満足なソクラテス

この言葉は、イギリスの哲学者 ジョン・スチュアート・ミル(John Stuart Mill) の言葉に由来します。彼の代表作『功利主義(Utilitarianism)』(1863年)に登場する有名なフレーズです。

原文は以下の通りです。

「満足した豚であるよりは、不満足な人間である方がよい。
満足した愚者であるよりは、不満足なソクラテスである方がよい。」

(原文:It is better to be a human being dissatisfied than a pig satisfied; better to be Socrates dissatisfied than a fool satisfied.

この言葉に代表されるように、現状に満足することなく、常に今できる最高の医療=透析治療とは何か?を筆者は常日頃から考えて仕事に当たりたいと思っています。

不満足なソクラテスたれーそれは、現状に甘んじることなく、常に患者に向き合い、そして治療条件や業務の効率化、そして学ぶ姿勢を忘れることなかれ。ということです。

あとがき

さて、久しぶりに主観的な記事を書きましたが、皆さんは如何でしょうか。

「自分の施設はまだAlbをメインに診ている」「条件はドクター/技士の領分だから」「腎不全看護は看護師の仕事なんだから、傾聴はしない」というNsやCEもいるかもしれません。

しかし、筆者はそのような領分をとっぱらって仕事をしている節があります。いいか悪いかは別として、透析が好きな筆者は、つまるところ患者が好きなのです。

そんな好きな人たちには、いつまでも出来るだけ元気に居てほしいものですよね。なので、様々な分野の勉強をし、患者に還元しようと日々模索しているのです。

もしよければ、そんな皆さんの透析に対する想いも聞いてみたいですね。

今回はそんなお話でした。ではまた。

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