第71回日本透析医学会学術集会・総会 参加レポート

血液浄化

皆様ご無沙汰しております。

今回はタイトルにある通り、「日本透析医学会学術集会・総会」への参加レポートを書いていきたいと思います。

話題の中心は、やはり昨年改定したCKD-MBDガイドライン周りですかね。ただ、自分の好きな演題というバイアスが掛かっているので、そこはご承知おき下さい。

では行きましょう。学会レポートとくとご覧あれ。

バスキュラーアクセス選択の統合的リスク

日本国内ではAVF/AVGの二択が圧倒的である。性差としては、女性は血管径が細いなどの理由からAVGが多いという統計が出ている。

これに対して、数年前までの諸外国(北欧やカナダなど)では、パーマネントカテーテルの使用率が高いという現実がありました。

しかし、DOPPSのフェーズ1~4の解析で、カテーテルよりAVFを使用する方が生命予後が良いという事が判明したためか、今ではAVF/AVGの使用が諸外国でも上がってきています。

但し、AVFを作製することのデメリットもあります。

合併症としては大動脈弁狭窄、肺高血圧症などの拡張機能障害により、シャント作成が急性心機能悪化を招くリスクがあります。

このように、AVFは心負荷増加の可能性を含んでいます。

ただし、AVG/カテーテルは感染・長期耐久性のトレードオフという代償があります。

必要なことは、如何に患者にとって最適なアクセスを選択するかであります。

CKD-MBD管理の最新戦略ーSHPT , FGF23 , CPP , 2025年新ガイドライン

二次性副甲状腺機能亢進症

腎機能が低下すると、活性型ビタミンDの生成が減少し、腸管からのCa/Pの吸収が低下します。それと共に、吸収されたリンは残り少ないネフロンより仕事以上の機能を発揮し排泄に励みます。それと共に、骨及び骨格筋から分泌されるFGF23がリンの再吸収を阻害し、尿中のリン排泄量が増加します。

そして低吸収となったCaに対し、副甲状腺からのPTH分泌が亢進します。PTHの分泌亢進は、副甲状腺のびまん性から結節性への形態変化を来たします。

結節性になった副甲状腺に対しても、Calcimimeticsはある程度の効果を発揮するので、その点でガイドラインでも推奨されているように、積極的なCalcimimeticsの使用が期待される。

骨代謝異常

その昔、CKD-MBDの概念が提唱される前は、腎性骨異栄養症:RODと呼ばれる骨疾患にのみフォーカスが当てられ治療が行われていた。

しかし、骨だけではなく全身性疾患としての管理が叫ばれるようになり、KDIGOからの提唱により、CKD-MBDの歴史が始まりました。

骨代謝には「高回転骨」「低回転骨」と呼ばれる状態が存在します。

骨吸収と骨形成のバランスが崩れてしまうと、骨形成が亢進する一方で、皮質骨の多孔化が起こります。

これを骨粗鬆症と呼び、新しいガイドラインではこの治療にもフォーカスが当てられています。

血管石灰化

CKD-MBDでは、すでに分かっている事として動脈中膜が石灰化を起こす「メンケベルグ型動脈硬化」が有名です。

石灰化進展の原因としては、Caの過剰摂取が挙げられます。

詳細は後述しますが、今回のCKD-MBD 2025 GLでは、Ca/Pの上限値が変更となりました。これは、純粋に死亡率に関連するためです。別記事でも新GLは解説していますので、ご笑覧下さい。

透析と骨粗鬆症治療|CKD-MBD2025ガイドライン改訂を受けて
透析患者の骨粗鬆症治療について、CKD-MBD 2025ガイドライン改訂のポイントを解説します。リン・カルシウム・PTHの新しい管理目標、骨代謝マーカー、骨折リスク評価、骨粗鬆症治療薬の選択と注意点を医療従事者向けに整理しました。

リン管理

今回のCKD-MBD 2025 GLでは、目玉の一つとしてリンの基準値の変更が挙げられます。

旧GLでは「6.0~3.5 mg/dL」の範囲が管理目標となっていましたが、新GLでは

  • 5.5~3.5 mg/dL

の目標値が新しく設定されました。

但し、これはあくまで目標であって、新ガイドラインで声高に言われているのが「テイラーメイド医療」です。

新ガイドラインでの上限値は、あくまでnon合併症の患者を対象としています。

CVDやDMなどの既存の合併症がある患者は、リンの更なる厳格管理が有効である。という報告も上がっている為、この点を以て「テイラーメイド治療」が言われるわけです。

リンのコントロールには、リン低下薬として、「リン吸着薬」と「リン吸収阻害薬(テナパノル塩酸塩)」の2種類があります。

さらに、リン吸収薬にも4種類の分類があります。

リン吸着薬の種類と用法~よく理解して指導しよう~
透析患者の高リン血症治療に使うリン吸着薬を、種類・作用機序・服用タイミング・副作用までまとめて解説。ランタン、セベラマー、ビキサロマーなどの違いが一目で理解でき、患者指導にもすぐ活かせます。
新規作用機序による高リン血症治療薬!!~フォゼベル~
高リン血症治療の新たな選択肢「フォゼベル(テナパノル塩酸塩)」について、従来薬との違いとなる腸管リン吸収阻害作用をやさしく解説。作用機序・適応・透析患者へのメリットまで丁寧に紹介します。

また、カルシミメティクスを使用するとPTHを下げるだけでなくリンのコントロールも容易になります。

その為、ガイドラインでは積極的なカルシミメティクスの使用が推奨されている訳です。

カルシウム管理

もう一つの目玉はカルシウム上限値の変更です。

旧ガイドラインのカルシウム基準値は「8.4~10.0 mg/dL」でした。

下限値に関しての変更はありませんが、新しいエビデンスにより、やはり8.4 mg/dL以下は避けるべき。というコンセンサスが委員会の中で形成されたようです。

ガイドラインの引用文献「Hypocalcemia and cardiovascular mortality in cinacalcet users.」がその根拠となります。

そして生命予後や石灰化の観点より、新たに上限値は9.5mg/dLに変更になった点も注目すべきカ所となります。

PTH管理とカルシミメティクス

今回の大目玉、PTHの管理目標についてです。

旧ガイドライン時代には、活性型ビタミンD製剤:VDRAしか副甲状腺機能亢進症(以下、SHPT)を治療する手段がありませんでしたが、ガイドライン発出直後よりカルシミメティクス製剤が登場し、治療は一変しました。

当時、PTHの管理目標の根拠になった理由として、骨代謝回転の極端な低下、亢進により無形性骨、もしくは線維性骨炎が発症。結果として予後が悪化するというものでした。

しかし、新ガイドラインではカルシミメティクスが骨折リスクを下げることが証明され、PTHが低ければ低いほどに骨折リスクも下げるということで、新ガイドラインではPTH下限値が撤廃されました。

但しこれには条件が付いており、従来通りVDRAでのみPTHをコントロールしている場合には、下限値は60pg/dLとなっています。なぜならVDRAは骨折リスクは下げないからですね。

また、上述したように、カルシミメティクスはPTHを下げると同時にCa/Pのコントロールもつきやすくします。

その為、新ガイドラインではカルシミメティクスの積極的投与が推奨されています。

骨粗鬆症治療

今回のガイドラインでは、前回よりさらに踏み込んだ骨粗鬆症治療についての言及がなされています。

これまで言及されていたのはBAPやTRACP-5bについての骨代謝マーカーについてだけでしたが、新ガイドラインからは骨粗鬆症治療薬についても言及がなされています。

実際の運用については、ガイドラインでもプラクティスポイント(実践的留意点)としてフローチャートが掲載されており、それを参考に進めるのが臨床的という話で〆られていました。

透析と骨粗鬆症治療|CKD-MBD2025ガイドライン改訂を受けて
透析患者の骨粗鬆症治療について、CKD-MBD 2025ガイドライン改訂のポイントを解説します。リン・カルシウム・PTHの新しい管理目標、骨代謝マーカー、骨折リスク評価、骨粗鬆症治療薬の選択と注意点を医療従事者向けに整理しました。

CKD-MBD 2025ガイドラインについては、先の記事に詳細を載せているので、よければそちらもご笑覧下さい。

慢性腎臓病(CKD)におけるESA低反応性の管理と最新知見

ガイドライン改訂とプラクティスポイント

 現行改定ガイドラインではESA低抵抗性についての章を設けているが、低反応性の定義や介入試験のエビデンスが依然として不足しており、それらを踏まえ臨床現場の「プラクティスポイント(実践的留意点)」が重要視されています

・そのプラクティスポイントを4つ提示

  1. ESA低反応性は一定の指標を用い、療法との関連で検討・定義されるべき
  2. 保存期患者では12週時点のERIが5.2以上で低反応性を疑う。ERI=(4週あたりダルベポエチンアルファ使用量)/(同時点Hb)。目標Hb(例:11.5)に到達しない場合、原因検索など行動変容を促す。
  3. ESA低反応性は予後(心血管イベント等)と関連。まず原因検索を実施。ただし約20–30%は原因不明であり、その場合は非ESA薬の使用、透析条件の調整など代替策を検討。
  4. 反応性改善に確立エビデンスは乏しいが、患者利益のため亜鉛・アルギニン等の可能性ある対策を考慮。

ESA低反応性の定義・指標(ERI)と国際比較

  • 従来の用量基準と日本との差異
    • 海外では体重70–80kg想定で週あたりエポエチン36,000単位等の基準が引用される。
    • 日本の旧ガイドライン(2008年)では週あたり9,000単位(血液透析換算)が一つの基準。2015年版では明確な数値提示を避けていた。
    • 日本と海外でESA反応性に約4倍の差があり、人種差・背景が影響。
  • ERIの概念とRCT由来の数値
    • 欧州RCT(オンラインHDF vs 通常HDのRCT)から導出されたERI 15.4(単位/体重・Hb関係の指標)は欧州データで、日本の患者(週9,000単位近似)に比較的近い値と解釈。
    • 日本では通常一桁台のERIが多いが、人種差を考慮。
  • 初期低反応性の定義(2012年の計量で初定義)
    • ESA投与開始後1ヶ月でHbが上昇しない場合を初期低反応性と定義。
    • 根拠はストリート試験(2型糖尿病合併CKDステージ3–4、約4,000人)。Hbターゲット13群で脳卒中リスク約2倍増加、サブ解析で投与後4週のHb変化量が最少(上昇なし)群で心血管イベントが最多。
    • ただし登録患者の心血管合併率約50%、用量(4週あたりダルポエチン約230μg)などが日本の治療背景と大きく異なり、2015年日本ガイドラインに直接持ち込めなかった。
  • 日本人データからのERI閾値5.2
    • ブライトン試験(2014開始、探索研究):日本人CKD保存期患者で予後(心血管イベント等)と関連する低反応性指標を探索。
    • 12週時点のERI=(4週あたりダルベポエチン使用量)/(Hb)が5.2以上でイベント関連性が示唆され、単純で実用的な閾値として今回ガイドラインへ採用。
    • 例:4週あたり60μg使用で通常Hb11.5程度が期待されるのに11未満なら低反応性を疑い原因検索などアクションを促す。

用量・薬剤と予後、用量増加の影響

  • ロング/ショートアクティングESAの用量と生命予後
    • 森下らのデータ(観察):用量を上げること自体が反応不良患者を示し、ある閾値を超えると生命予後へ影響。
    • 具体目安:ダルベポエチンアルファ25μg/週、エポエチンベータの相当用量付近がセカンドカット。臨床判断に活用可能。
    • 用量増加は予後悪化と相関する可能性があり、闇雲な増量は避け、原因検索・代替策を優先。
  • オンラインHDFとHD
    • RCT由来のERI比較から、日本人に近い用量/反応の示唆が得られている。
    • 透析条件変更(オンラインHDF導入等)は反応性改善の一手となり得る。

ESA低反応性の原因・予測因子

  • 共通の臨床因子
    • 栄養不良(GNRI低下)、炎症(CRP高値)、鉄代謝関連、慢性疾患背景などが多くのコホートで関与。
    • 性差等の因子はコホートにより差異。
  • 心疾患の関与
    • ASCEND-D第3相試験のベースライン解析で、心不全の既往が低反応性の予測因子として示唆。
    • ブライトンではNT-proBNPが初期低反応性と関連。心疾患(心不全含む)は慢性炎症や薬剤の影響を通じ貧血に関与し得るため、今回の案では「その他の因子」に心疾患を追加。
  • 原因不明例の存在と動的変化
    • 約20–30%は原因特定不能。非ESA薬使用や透析条件変更などの代替策が必要。
    • 低反応性は時間とともに変化。最初に低反応性でも1年後にはカテゴリーが変わる例が多く、最も反応良好群でも約40%が別カテゴリーへ移行。継続的再評価とその都度の対策が重要。

介入・代替策と栄養補助

  • 鉄治療と基本方針
    • 鉄介入はERI低下とESA投与量減少に寄与。保険上の制約があるが、疑い時には試行し反応なければ中止する慎重なアプローチが推奨。
  • 亜鉛補充
    • 亜鉛はERIを下げる効果が報告され、重要な微量元素として考慮。測定・補充の実践例がある。
  • セレンの不足と関連
    • 透析患者ではセレン低値が見られ、ERI悪化と関連。日本の145例解析で、セレンが結合基準値(例:10)未満の患者が約半数存在。セレン欠乏症状(皮膚・爪の変化、筋痛、心筋障害など)に留意し、測定は許容される選択肢。
  • SGLT2阻害薬
    • CKD患者においてSGLT2阻害薬がHb上昇、FGF低下など貧血改善効果を示す心不全データあり。CKD治療に広く導入されており、選択肢として考慮可能。
  • HIF-PH阻害薬(ロキサデュスタット等)の位置づけ
    • ベースラインのCRP高値、GNRI低下、ERI高値などでESAは増量を要するが、HIF-PH阻害薬は異なる作用で、同様の状況でも必ずしも大幅な増量を要しない可能性。
    • RCT(ホテルハイラックス? vs 非ホテルハイラックス?=HIF-PH阻害薬比較)ではベースラインERIが4–5と低反応性が少なく差が出なかったが、サブ解析では差が示唆。原因不明例での薬剤切替は選択肢。ただし効果がなければ速やかに中止するルールが重要。

骨格筋・運動とESA反応性

  • 骨格筋量とERIの関連
    • 日本データで、骨格筋量が少ない患者ほどERI上昇(低反応性)と関連。ピルビン酸、亜鉛など代謝指標とも関連。
  • 運動介入の可能性
    • 予備的試験(各6名)で運動により指標改善示唆。運動は多面的効果があり、世界的に検討が進む。
  • 鉄キレートと骨格筋修復の機序仮説
    • デフェロキサミンで鉄結合状態にすると、培養細胞でタンパク合成(インスリン・クルクミン酸刺激)が抑制。HIF安定化が骨格筋修復(マッスルリペア)を阻害する可能性が示唆される一方、mTORC1活性化など逆方向の結果もあり、機序は複雑で今後の注目課題。

実践的指標・具体的数値の活用

  • ERIの算出と運用
    • ERI=(12週時点の4週あたりダルベポエチン使用量)/(同時点Hb)。閾値5.2以上で低反応性を疑い、原因検索・代替策へ。
    • 例:4週あたり60μg投与で通常Hb11.5程度が期待。Hbが11未満なら低反応性を疑い、検索実施。
  • 用量目安
    • ダルベポエチンアルファ25μg/週付近、エポエチンベータ相当用量は予後リスクの分岐として意識。用量増加は慎重に。
  • 透析条件
    • オンラインHDF導入など条件変更も反応性改善策。患者背景・炎症・栄養状態を踏まえ選択。

これまでERIは計算式が違うものが使われていましたが、どうやら次のガイドラインでは新ERI計算式がお披露目するようです。

また、それに伴ってERI低反応性の閾値も変更になります。ちょっとだけ面倒ですね。

そして栄養ー貧血連関にもようやく光が刺そうとしている点にも、筆者としては一安心ですね。これまでも栄養と貧血には個人的には注目してきていたので、ようやく感があります。

RCTを参考に、OHDFもようやく是とされる時代が来るかもしれません。これを機に、しっかりとデータが集まることを期待したいと思います。

この2大テーマ以外にも、もちろん色々sessionは組まれていおり、筆者はAI sessionにも顔を出したんですが、それはまた別の機会にでも。

あとがき

さてさて、今回は結構ボリューミーに学会参加レポートを書いてみました。

ただ、高名なCKD-MBDガイドライン作成委員会の先生方による働きもあり、CKD-MBDに関しては個人的には真新しい話はなかったな。というのが率直な感想です。それでも、逆に同じ話が繰り返し言われるということは、それほどプラクティスポイントとして重要であることの証左でもあるので、肝に銘じて業務に当たろうと感じた次第です。

次点として、慢性腎臓病における貧血ガイドラインが改定前ということにも驚かされました。

Webinarにはしょっちゅう参加する筆者ですが、貧血がテーマのものは全く見かけていなかったのでノーマークでした。なので今後は貧血関連webinarやそれに関連した記事が増えそうですね。

読者の皆様に於かれましては如何でしたでしょうか?

今後もアウトプットを兼ねた当ブログをよろしくお願いいたします。

では今回はこの辺で。

コメント

タイトルとURLをコピーしました