透析導入時からHDFを行うべきか?高容量HDFで全死亡20%低下―18,515例の国際研究

血液浄化

さて、今回は2026年7月にClinical Journal of the American Society of Nephrology(CJASN) に掲載された、透析導入患者18,515例を対象に、高容量HDFとHDの死亡転帰を比較した国際的な後ろ向きコホート研究についての紹介です。

これまで当ブログでも、CONVINCE StudyやHDFそのものについてはいくつかご紹介して参りました。

CONVINCE試験:高置換量HDFは死亡率を下げる?HDF vs 高流量HDの結果を解説
CONVINCE試験の結果を解説。高流量HD患者を対象に、高置換量の血液透析濾過(Post-OHDF、CV≥23L/回)と高流量HDを比較し、主要評価項目(全死亡)や副次評価項目、臨床での解釈ポイントを整理します。

しかし、そのどれもが「すでに血液透析を導入している、透析期間の長い患者を対象とした研究」ばかりでした。

その為、知識の空白として「ではHDFはいつから始めればいいのか?導入から始めるべきなのか?」という点が不明知となっていました。

今回はそんな空白地帯を埋める後ろ向きコホート研究が発表されたので、解説・紹介していこうと思います。

HDFは“いつから”始めるべきなのか?

HDFが生命予後を改善する可能性は、近年かなり現実味を帯びてきました。
では、「十分に透析歴を重ねてからHDFへ変更する」のと「透析導入時からHDFを行う」のでは、どちらがよいのでしょうか。
2026年のCJASNに、その疑問にかなり踏み込んだ大規模研究が報告されました。

先にも述べたように、知識の空白地帯として、HDFの導入時期については不明瞭でしたが、今回はそれを主軸に扱った論文になります。

なぜ「透析導入早期」が重要なのか

透析導入患者は、維持透析が安定した患者とは違います。

導入早期には、

  • 心血管イベント
  • 感染症
  • カテーテル使用
  • 体液管理の不安定性
  • 栄養状態の変化
  • 残存腎機能の低下

など、多くの要因が重なります。

論文でも、透析導入後早期は死亡・入院リスクが高い「critical period」と位置づけられています。1,10)

その他の報告としても、導入1カ月間はCVDイベントや、電解質バランスの不均衡なども死亡率の上昇と関係してきます。

しかし、既存の研究やRCTにより、HF-HDよりもHDFが予後を改善するというエビデンスは積み上がりつつあります。2,3)

今回の研究は何を調べたのか

研究デザイン

  • 国際多施設後ろ向きコホート研究
  • Fresenius NephroCare
  • 2019~2022年
  • 透析歴3か月未満
  • 18歳以上
  • 18,515例
  • HD:10,149例
  • HDF:8,366例
  • 最大追跡期間:2年間

HDFは後希釈オンラインHDFです。

HDFが後希釈なのは外国報告としてはあるあるです。これの理由としては、前希釈HDFではダイアライザ流入前に血液が希釈されるため、単位対流量あたりの溶質除去効率が低下し、後希釈と同等の対流除去を得るにはより大きな置換量が必要になります。また今回の研究の除外基準にも、Kt/V<1.2が設定されています。

そして研究デザインとして注目すべき点は、平均対流量 24.9 Lという点です。

これは単に「HDF vs HD」ではなく、

high-volume postdilution HDF vs high-flux HD

として読むべき研究です。

Result

では早速ですがこの論文の結果を読んでみましょう。

結果①:全死亡が20%低かった

全死亡率は、

HD
15.6 / 100人年

HDF
11.7 / 100人年

でした。

逆確率治療重み付け(inverse probability of treatment weighting:IPTW)による調整後、

HR 0.80
95% CI 0.75–0.86

つまりHDFは、

全死亡リスク20%低下と関連

していました。

つまり、100人を1年間追跡した場合、単純な発生率としてはHD群で約15.6人、HDF群で約11.7人が死亡した計算になります。

これは「20%低い死亡リスクと関連した」ということです。

結果②:心血管死亡は29%低かった

CVD死亡率は、

HD:6.7 /100人年
HDF:4.1 /100人年

で、

HR 0.71
95% CI 0.63–0.80

でした。

つまり、

心血管死亡リスク29%低下との関連

です。

従来のHDでは、除去の中心は小分子、日本でのHigh-Performance 膜を用いても中分子が限界でした。

しかし、HDF-特に海外ほどのhigh-volume postdilution HDFでは、対流を加えることで中分子量尿毒素の除去に優れます。一方、蛋白結合尿毒素については、indoxyl sulfateなど一部で除去改善が報告されているものの、その効果は一様ではありません。

これは、

  • 中分子除去
  • β2-MG
  • 炎症性サイトカイン
  • AGEs :終末糖化産物

の除去が効率的に行われている可能性を示唆しているのです。

論文自身も、HDFによる対流除去によって炎症促進性・動脈硬化促進性物質の除去が増え、全身炎症や血管内皮機能に影響する可能性を議論しています。

生存曲線が早期から開いた

論文では、

HDF群とHD群の生存曲線が追跡開始後早期から分離

しています。

そしてHDF患者の75%は、追跡開始前または開始後1~2日以内にHDFを開始しています。

しかし、これを以て「HDFが有効である」や「HDFの効果が数日で出た」と読むのは早計かもしれません。

本当にHDFの効果なのか?――この論文を批判的に読む

ではこの論文はどこまで信頼に足る論文なのでしょうか。その部分を批判的に読んでみましょう。

① 観察研究である

最大の問題です。

IPTWでかなり丁寧に調整されていますが、測定されていない交絡因子は調整できません。

著者自身も残余交絡を認めています。

例えば、

「HDFを選択できる患者の方が元々状態が良かった」

可能性を完全には否定できません。

② HD群とHDF群は最初から少し違う

IPTW前では、

内シャント:

  • HD 28%
  • HDF 40%

カテーテル:

  • HD 72%
  • HDF 59%

でした。

これはかなり重要です。

HDFを実施しやすい、

比較的循環動態が安定していて血流量を確保できる患者

がHDF群に入りやすかった可能性があります。

IPTWで調整しているとはいえ、臨床的背景すべてを数字で消せるわけではありません。

③ 最も重症な導入患者が除外されている

ここはかなり大事です。

30日間のbaseline期間中に、

  • 死亡
  • 移植
  • modality変更
  • 腎機能回復
  • follow-up loss

があった患者は除外されています。

さらに、

OCM Kt/V<1.2

も除外されています。

つまり、

「透析導入患者全体」ではない。

より正確には、

「透析導入後30日程度を乗り越え、一定以上の透析量を確保できた比較的安定した患者」

に対する結果です。

どのような論文にもLimitationは付き物。論文の著者も、論文内ではこのように自身の弱みを語っていますね。

糖尿病患者ではHDFのメリットが弱い?

全死亡では、

糖尿病なし
HR 0.66

糖尿病あり
HR 0.86

でした。

さらにCVD死亡では、

糖尿病あり
HR 0.93
95% CI 0.78–1.11

で有意差がありません。

これは、

「HDFは糖尿病患者には効かない」

という意味ではありません。

ただ、

HDFの予後改善効果が患者背景によって異なる可能性

を考えさせる結果です。

事実、筆者の体感としても、I-HDFの糖尿病患者に対するコントロールのしにくさや効果はとても限定的と思っています(昔、I-HDF黎明期に発表をしたときの感想)(※なお、以下は本研究のhigh-volume HDFとは異なるI-HDFについての個人的経験です。)。

では、透析導入時からHDFを行うべきなのか?

ここで話を臨床に戻します。

この研究から言えるのは、

「透析導入早期からhigh-volume HDFを行うことは、良好な生命予後と関連していた」

までです。

一方、

「導入患者は全員HDFにすべき」

とまでは言えません。

ただし、

CONVINCEなど既存患者でのRCTに加えて、今回incident患者でも同じ方向性の結果が示されたことで、

「HDFは状態が悪くなってから追加する治療ではなく、透析modalityそのものとして最初から選択する治療なのではないか」

という考え方はかなり説得力を増したと思います。

Take Home message

今回の論文から重要な部分を抜き出すと以下の3つに要約することができます。

① 透析導入患者18,515例を対象とした大規模研究で、high-volume HDFはHDと比較して全死亡20%、CVD死亡29%低下と関連した。

② HDF群とHD群の生存曲線は透析導入後早期から分離していた。

③ ただし観察研究であり、selection biasやresidual confoundingの問題があるため、因果関係はまだ確定していない。

HDFに対するエビデンスが、ここ10年15年のうちに随分と固まってきたな。というのが筆者の感想ですが、これからの時代、すでにHDFを「どの患者に使うか」だけでなく、「透析導入時から選択すべきmodalityなのか」を考える時代に入っているのかもしれません。

あとがき

今回の記事は、執筆時点で発表したてほやほやの論文をご紹介!!

日本では「HDはHDFより優れている!」「HDFは危険だ!」みたいな論争が一部ありますが、これだけエビデンスが積み上がりつつある中、少なくとも、HDFを特殊な追加治療としてではなく、透析導入時から検討すべきmodalityの一つとして考えるだけのエビデンスは、かなり蓄積してきたように思います。

いつまでも米国一強ではなく、医学は科学であり、世界各国で共通してエビデンスが積みあがるのであれば、それをしっかりと受け入れるという姿勢も大切だと思います。

日本では未だに前希釈HDFが主流だとは思います。これには、日本人の体格の小ささと血流量が関係していると言われていますが、リアルワールドではQb 300mL/minの患者も体格に関係なくいるのではないでしょうか。シャント血流量が多いと心不全を悪化させる。という言説もありますが、「高シャント血流=必ず心不全」という単純な関係ではありませんが、QaやQa/COが高い症例での心負荷については現在も議論が続いています。筆者としては積極的な高血流、高置換量、そしてGreen Nephrologyを推進していきたい所存ですね。

さて、では今回はこの辺でお暇致します。

ではまた~

引用文献

  1. Yan Zhang, Anke Winter, Linda H. Ficociello et al ; Hemodialysis Modality and Mortality Outcomes among Incident Dialysis Patients:An International Cohort Study Comparing High-Volume Hemodiafiltration and Hemodialysis . CJASN 21: 1198–1206, 2026 . DOI: 10.2215/CJN.0000001063

2. Blankestijn PJ, Vernooij RWM, Hockham C, et al. ; Effect of Hemodiafiltration or Hemodialysis on Mortality in Kidney Failure . N Engl J Med. 2023;389(8):700–709.

3.Vernooij RWM, Hockham C, Strippoli G, et al.; Haemodiafiltration versus haemodialysis for kidney failure: an individual patient data meta-analysis of randomised controlled trials . Lancet. 2024;404(10464):1742–1749.

4. Maduell F, Moreso F, Pons M, et al.; High-efficiency postdilution online hemodiafiltration reduces all-cause mortality in hemodialysis patients . J Am Soc Nephrol. 2013;24(3):487–497.

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6. Maduell F, Varas J, Ramos R, et al.; Hemodiafiltration reduces all-cause and cardiovascular mortality in incident hemodialysis patients: a propensity-matched cohort study . Am J Nephrol. 2017;46(4):288–297.

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12. Canaud B, Blankestijn PJ, Grooteman MPC, Davenport A.et al.; Why and how high volume hemodiafiltration may reduce cardiovascular mortality in stage 5 chronic kidney disease dialysis patients? A comprehensive literature review on mechanisms involved . Semin Dial. 2022;35(2):117–128.

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