CGRnでみる“筋肉量”と透析効率の真実~AlbでもnPCRでも見えない、もう一つの栄養指標~

栄養関係

おはこんばんちわなら!

さてさて、今回は新たな栄養指標となる【CGRn:標準化クレアチニン生成率】をご紹介

いやー教科書には載ってない栄養指標が次から次に押し寄せます(笑)

この指標の開発者はなんと、かの有名なDaugirdas先生!!なので、一見の価値あり!

さぁでは早速行きましょう!!

栄養の世界へようこそ!!

■ なぜ今、CGRnなのか

透析患者さんの栄養状態や筋肉量をどう評価するか──。
これまで、アルブミン(Alb)やnPCRがよく使われてきましたが、「炎症」や「水分状態」に左右されやすく、“真の筋肉量”を反映していないのでは?という指摘が増えています。

そんな中で注目されているのが、CGRn(normalized creatinine generation rate)です。
これは、クレアチニン生成率を体重で正規化した指標で、筋肉の代謝そのものを数値化できるのが最大の特徴。

2021年、Daugirdas博士はJournal of Renal Nutrition誌で、CGRnを簡便に推定できる数式を発表しました。
これまで専門的なモデル計算が必要だったCGRnを、一般的な透析データから算出できるようになったのです

■ 背景:従来指標の限界

  • アルブミン(Alb):炎症や体液量に影響を受けやすく、低アルブミンが必ずしも低栄養を意味しない。
  • nPCR:食事由来の窒素排泄を反映するが、筋肉量の推定には直結しない。
  • BMI・GNRINRI-JH:脂肪・筋肉を区別できず、サルコペニアの早期検出には不向き。

これらの弱点を補う形で登場したのがCGRn。
筋肉内でのクレアチン代謝に由来するクレアチニン生成量を解析することで、「筋肉そのものの活動量」を可視化します。

■ CGRnとは何か

CGRnは「normalized creatinine generation rate」の略で、
1日あたりのクレアチニン生成量(mg)を体重(kg)で割ったものです。

クレアチニンは、筋肉に蓄えられたクレアチンリン酸の非酵素的分解によって生じます。
つまり、筋肉量が多い人ほど生成量も多くなり、CGRnの値も上昇します。

理論的には、

筋肉代謝 → クレアチニン生成 → 血中濃度 → 透析除去と残腎排泄
という流れの中で、生成側(筋肉量)を抽出して指標化したものです。

■ Daugirdas(2021)の研究概要

この論文では、FHN Nocturnal Trial(週3回透析)のデータを用い、
2-pool変動体積モデルでシミュレーションを行いました。

  • 対象:週3回透析患者(40名:無尿群、76名:残腎あり)
  • 目的:透析条件や残腎機能を考慮したCGRn推定式を構築
  • 結果
     ・モデル値との一致率はR²=0.96
     ・誤差は±5%以内
     ・残腎補正式を導入することで精度が劇的に改善

この成果により、血液検査データと透析条件のみでCGRnを求められるようになりました。

■ CGRn算出の6ステップ

論文で示された手順を簡略化すると、以下のようになります

1️⃣ URRまたはspKt/VからeKt/V_ureaを算出
2️⃣ eKt/V_urea × 0.71 → eKt/V_creatinineを得る
3️⃣ Watson式からVCR(クレアチニン分布容積)を推定※必ずしも必要ではない
4️⃣ 残腎機能(KRCR)がある場合は、補正式でC0’を求める
5️⃣ 透析日の曜日に応じた式でCGRnを算出※つまり、中2日か中1日か
6️⃣ 結果をmg/kg/day単位に変換

式自体は複雑ですが、Excelでの自動化も可能です(次回の記事で詳述予定)。

■ 残腎補正(C0’)の意味

CGRn計算で重要なのは、「C0’補正」です。
残腎機能を無視すると、25~30%も低く見積もられることが示されています。

C0’とは、

「同じ筋肉量・同じ透析条件で、もし腎臓がまったく働いていなければ、
 どれだけクレアチニンが溜まっていたか」を仮想的に求めた値。

つまり、残腎による排泄効果を補正し、真の生成量(筋肉量)に近づけるための重要な工程です。

■ CGRnの臨床的活用

● 1. 栄養・筋肉量の客観評価

CGRnはサルコペニア指標としても有用です。
低CGRnは、筋肉量低下・栄養不良・慢性炎症の可能性を示唆します。

● 2. 栄養介入や運動療法の効果判定

筋トレや高蛋白食の導入前後でCGRnを比較すれば、
「実際に筋肉代謝が改善したか」を客観的に確認できます。

● 3. 残腎機能の評価

CGRnとC0’の差が大きい場合、
「腎がまだクレアチニンを排泄している=残腎機能が温存されている」と読み取れます。

🧩 CGRnと他指標との併用

指標主な意味特徴
NRI-JH栄養リスク(Alb・BMI・体重変化を統合)日本人透析患者の予後とよく相関
GNRI栄養リスクの簡易版(海外由来)国際比較には有用だが日本人には過大評価傾向
nPCRタンパク摂取量の推定食事・透析効率の影響を受けやすい
CGRn筋肉代謝の客観指標栄養状態と筋量の両方を反映

✅ Alb単独では栄養を評価できないが、NRI-JH内の構成因子としては依然重要。
✅ CGRn+NRI-JHの組み合わせは、「筋肉代謝 × 体格・Alb」の双方を補完できる。

■ まとめ

ポイント内容
CGRnとはクレアチニン生成率を体重で正規化した筋肉代謝指標
特徴栄養・筋肉量・透析効率・残腎機能を一体的に評価可能
注意点VCR・KRCRなどの正確な推定が必要
推奨併用CGRn+NRI-JHで「筋肉×栄養リスク」を統合評価

■ 次回予告

次回の記事では、

「残腎の有無で自動的にC0’補正を切り替えるCGRn計算Excel」
を公開予定です。

Kt/Vや体重を入力するだけで、CGRnを自動算出できるようになります。
実際の透析データを使い、筋肉代謝の“推移”を見える化していきましょう。

あとがき

CGRnは「筋肉を数値で見る時代」の入り口。
NRI-JHやGNRIに並ぶ、新しい栄養・体組成評価の武器として、現場での活用がこれから加速していくはずです!!

今回も、調べものをしているところで偶然出会った栄養指標ですが、「こんなのあんの!?」という驚きと、その著者にさらに驚愕しました。

nPCRや%CGRの隙間を埋める、筋肉×栄養の指標として、これからフレイル・サルコペニア・PEWの領域で少しづつエビデンスが積まれていくことでしょう!!

次回予告にも書きましたが、次の連載はExcel連携や関数解説についてです!乞うご期待!

では今回もこの辺で!!

まったね~!!ノシ

翻訳全文

Equations to Estimate the Normalized Creatinine Generation Rate (CGRn) in 3/Week Dialysis Patients With or Without Residual Kidney Function

残存腎機能の有無にかかわらず、透析開始3週間の患者における正規化クレアチニン生成率(CGRn)を推定する方程式

John T. Daugirdas, MD

目的:最近報告された動態モデリングプログラムを用いることで、様々な透析スケジュールにおける正規化クレアチニン生成率(CGRn)を算出できる。しかし、推定方程式が利用可能になれば、この指標のより広範な研究が促進される可能性がある。我々は、モデリングに基づいてCGRnを推定する方程式を開発し、それを頻繁な血液透析ネットワーク夜間試験ベースライン(週3回)データセットのモデル化されたCGRn値に対して検証した。

デザインと方法: 我々は、以前に発表された可変容積2プール型クレアチニン動態モデルを「仮定」に基づいて導出し、 クレアチニン分布容積が20~50 Lの患者において、クレアチニン生成率が250~2000 mg/日となる場合に予測される透析前血清クレアチニン値を生成した。残存腎機能を有する患者では、同じ式を適用する前に「無尿時の予想透析前血清クレアチニン値」を算出した。次に、残存腎機能を有する患者において、同じ方程式を適用する前に「無尿時の予想透析前血清クレアチニン値」を算出した。その後、この手法で予測された推定CGRn値を、頻繁な血液透析ネットワーク夜間試験の患者データにおけるモデル値と比較した。

結果:
CGRn(クレアチニン生成率の正規化推定値)の推定式によって得られた結果は、形式的なモデリングによって得られた結果と同様であり、これは無尿患者および残腎機能を有する患者のいずれにおいても同様であった。

平均百分率誤差は、

  • 無尿患者で 0.845 ± 6.15(SD)
  • 平均クレアチニンクリアランス 5.44 ± 4.82 mL/min の残腎機能を有する患者で –0.29 ± 4.90 であった。

また、決定係数(R²)は両群ともに0.96であり、高い一致を示した。

結論:週3回の透析を受ける患者において、CGRnは予測式を用いて推定可能である。これらの式の利用は、栄養状態と転帰の指標としてのCGRnのより広範な検討を促進する可能性がある。

Introduction

尿素動態モデルを用いて尿素窒素生成率を推定できる。これより、タンパク質窒素出現率(PNA)を算出できる。PNAは一般に、やや不正確ながらタンパク質異化率とも呼ばれる。PNAは通常、尿素分布容積の倍数で除算したPNAnとして、体サイズに正規化される。純タンパク質同化作用または異化作用がほとんどない場合、PNA はタンパク質食事摂取量を反映することができ、栄養状態のモニタリングの指針として栄養士によってよく使用されます。2プール尿素動態モデルに基づき、Depner と Daugirdas は以前、残存腎機能の有無にかかわらず、週 3 回および週 2 回の透析スケジュールにおける PNA の推定式を導出した。(1 その後、 これらの推定式(Kt/Vを項の一つとして含む)は、単一プール値ではなく尿素の平衡化Kt/V(eKt/V)を使用するように更新することが推奨された。これにより、いくつかのアーティファクトを回避できるためである。(2PNAnは転帰のマーカーとなり得る 。前述のPNAn推定式 は、栄養状態および転帰のマーカーとしてのPNAnの有用性を評価するために用いられてきた 。(3 透析前血清クレアチニン値は、栄養状態と透析患者の予後の両方の重要な指標でもある。おそらくこれは筋量マーカーであるためと考えられる。(4,5) 透析前血清クレアチニンは除去と生成のバランスを反映しており、理想的にはPNAの場合と同様に透析前値から生成項を分離したい。Canaudらは、尿素生成率と同様に、2プールモデルを用いてモデリングデータからクレアチニン生成率を抽出する方法を考案した。(CGR)を抽出する方法を考案した。これは尿素に用いられるものと類似した2プールモデルを用いたモデリングデータからの手法である(6。その後、クレアチニン生成率の代替指標となる「クレアチニン指数」を考案した。(7, 8 Daugirdas と Depner は HEMO 研究データを用いて クレアチニン動態の 2 プールモデルの妥当性を検証し、(9これは Canaud らとはやや異なる CGR 結果をもたらした。(8クレアチニンの動態モデルは、 さまざまな非対称的な透析スケジュールにおけるクレアチニン生成率を計算でき、透析後の血清クレアチニン値を必要としないという点で非常に有用である。(9しかし、 一般的に使用される週3回の透析スケジュールについて、 体格に正規化されたクレアチニン生成率(CGRn)の簡単な推定式も有用である。PNAn の推定式を導出したこれまでの研究と同様のアプローチを用いて、本分析の目的は、日常的な動態モデリングで収集したデータを用いて容易に計算できる CGRn の推定式を導出することでした。

材料と方法(Materials and Methods)

以前に報告された2-プール可変容量クレアチニン動態モデル(2-pool variable volume creatinine kinetic model)[文献9]を用いて、尿素に対して開発されたシミュレーションモジュール[文献10]と同様の、クレアチニン用「what if」シミュレーションモジュールを作成した。

シミュレーションの生成には、「what if」プログラム(バージョン1.19)を使用した。このプログラムは www.ureakinetics.org から入手可能である。

このモジュールを用い、透析後のクレアチニン分布容積(Vcr)が20、30、50 L の患者について、
クレアチニン生成率を 250、500、1000、1500、2000 mg/日 と設定し、透析前血清クレアチニン値を予測した。

透析スケジュールは 60〜480分の範囲で設定し、
ダイアライザーの尿素に対する物質移動係数(KoA)は 1200 mL/min
血液流量(Qb)と透析液流量(Qd)はそれぞれ 400 mL/min、600 mL/min とした。
1週間あたりの除水量11 L に設定した。

腎外クレアチニンクリアランスは、先行研究[文献9]に基づき 0.026 mL/kg/min とした。
また、透析後体重(正規化体重:nkg)は、透析後クレアチニン分布容積(Vcr, L)を 0.42 で割ることで推定した。
この0.42という値は、HEMO研究における患者でのVcr/体重比の平均値
である[文献9]。

解析には、週3回透析スケジュールの3種類を用いた。
いずれも「2日・2日・3日間」の無透析期間(interdialytic interval)を含み、
透析前血清クレアチニン値はそれぞれ、
週初(例:月曜または火曜)、週中(水曜または木曜)、週末(金曜または土曜)の透析直前で採取された。

以前にPNA(蛋白同化率)推定式を開発した際と同様の方法を用い、
C₀/CGRn(C₀=透析前血清クレアチニン値)をクレアチニンの平衡化Kt/V(eKt/V)に対してプロットした。
そしてべき関数(power function)を回帰分析で当てはめ、
週3回透析スケジュール(週初・週中・週末採血)ごとにCGRn予測式
を作成した。

残腎機能を有する患者のCGRn推定では、以前に尿素で有効だった方法[文献1]を再度用いた。
すなわち、まず残腎機能を有する場合の透析前血清クレアチニン値(C₀)を予測し、
次に、同等の体格・同等のクレアチニン生成量を持ち、かつ腎機能がない(anuric)患者
で同じ透析条件を受けたと仮定したときの血清クレアチニン値(C₀′)を予測するという方法である。

残腎機能を有する患者では、C₀/CGRnを予測するために無尿患者と同じ式を使用したが、
透析前血清クレアチニン値C₀の代わりに、残腎機能を除外した仮想値C₀′を代入した。

これらの推定式を決定したのち、そのCGRn予測精度を既報のクレアチニン動態モデル[文献9]を用いて検証した。
検証には、「Frequent Hemodialysis(FHN)夜間試験(Nocturnal Trial)」の週3回透析ベースラインデータ
を使用した。

残腎機能がない場合(KRcr=0;40人の患者による64回の透析セッション)にはC₀式を使用し、
残腎クレアチニンクリアランス(KRcr)が0より大きい場合(76人の患者による130回のセッション)には、
「what-if」モデルから導かれたC₀′変換式を使用した。

Results

無尿患者における CGRn の予測 図 1 は、「what-if」クレアチニンシミュレータソフトウェアによって生成された、C0/GCRn と EKTV の相関関係を示しています。データへのべき関数適合に基づき、C0が週の初回、中間、または最終治療時にサンプリングされたかによって、CGRnに関する以下の3式が導出された:

図1.C₀/CGRn と クレアチニンの eKt/V の関係

C₀ は透析前血清クレアチニン濃度
CGRn は**正規化クレアチニン生成率(mg/kg/日)**を示す。

体重(weight)は、透析後のクレアチニン分布容積(リットル)を0.42で割った値として算出した。

ye=週末透析前、yf=週初透析前、ym=週中透析前を表す。
これらはすべて「what-if」シミュレーションによる予測データである。

yf、ym、ye はそれぞれ、
**週初・週中・週末の透析前血清クレアチニン値(C₀)**を意味する。

ここで、透析前血清クレアチニン値(C₀)は mg/dL 単位で表される。記号 ^(ハット) は、**べき乗(指数演算)**を意味する。

残腎クレアチニンクリアランスを有する被験者における「無尿状態(anuric)」透析前血清クレアチニン値の予測

残存腎機能がある患者の CGRn(正規化クレアチニン生成率) を推定するために、我々は、残腎尿素クリアランスを有する患者のPNAn(正規化蛋白同化率) を推定した以前の研究と同様の手法を用いた。

その手法とは、週3回透析スケジュールの採血日に応じて、無尿患者(anuric)用の適切なCGRn推定式を使用するが、計算には実測の透析前血清クレアチニン値(C₀)の代わりに、補正透析前血清クレアチニン値(C₀′) を用いるというものである。

この補正後の透析前クレアチニン値(C₀′)は、常に実測値(C₀)よりも高く、同じクレアチニン生成率・分布容積・透析スケジュールを持ちながら、残腎機能が全く存在しない場合に予測される値として定義される。

C₀′の値は、2-プール・クレアチニン動態モデルの「what-if」モジュールを用いて算出した。

C₀′の推定式を作成するため、前述と同様に「what-if」モデルを用いて一連の週3回透析スケジュールを生成し、多変量回帰分析を行って、C₀とC₀′の関係を検討した。

その結果、C₀′の独立予測因子として次の変数が同定された:

  • 透析後クレアチニン分布容積(VCR)
  • 残腎クレアチニンクリアランス(KRCR)
  • KRCR/VCR
  • 平衡化クレアチニンKt/V(EKTVCR)
  • および、KRCR/VCR × EKTVCR の積

初期のC₀′推定式を作成した後、モデルで得られたC₀′に対する予測C₀′の傾きをKRCRの関数として解析し、その傾き補正項を初期式に追加した。

最終的に得られたC₀′の推定式は以下の通りである:

ここで、

  • KRCR:残腎クレアチニンクリアランス(mL/min)
  • VCR:透析後のクレアチニン分布容積(L)
  • C₀:未補正の透析前血清クレアチニン値(mg/dL)
  • EKTVCR:透析時のクレアチニンに対する平衡化Kt/V

推定式によるC₀′値と、モデルによるC₀′値を比較した結果、KRCR=1、4、8、16 mL/min のときの平均百分率誤差はそれぞれ、

  • 1.4%、
  • 1.0%、
  • –0.79%、
  • 0.37%

であり、推定値とモデル値との間の決定係数(R²)は0.983と極めて高い一致を示した。

FHN夜間研究(Nocturnal Study)のベースライン期間データを用いたモデルの検証
(すべての患者が週3回透析を受けていた期間のデータを対象とした解析)

FHN夜間試験(Nocturnal Trial)のリポジトリアーカイブに含まれるベースライン期の一部透析セッションでは、尿素およびクレアチニンの両方を含む動態モデリングデータが利用可能であった。

これらのデータを用いて、以前に報告・検証された 2-プール可変容量クレアチニンソルバー(creatinine-solver)モジュール(ureakinetics.org)[文献9]を使用し、FHN研究で算出されたダイアライザー尿素クリアランスおよび残腎クレアチニンクリアランスを入力値として、各透析セッションにおける透析前後の血清クレアチニン値を基に、**CGRn(正規化クレアチニン生成率)**をモデル計算した。

このモデルでは、入力されたダイアライザー尿素クリアランス値を、クレアチニンに対する推定クリアランスに補正しており、この補正は、HEMO研究で得られた**ダイアライザー通過時の尿素およびクレアチニンクリアランス比(K₀A比)**の解析に基づいている[文献9]。

形式的なクレアチニン動態モデルから得られた**クレアチニン生成率(CGR:mg/日)**は、体重で正規化され、
以下の式で表された:

CGRn = CGR / (VCR / 0.42)

ここで、VCR は透析後の2-プールモデルによるクレアチニン分布容積(L)であり、0.42 は、先行するHEMO研究での患者群における**VCR/透析後体重(W)**の平均比に基づいて設定された定数である[文献9]。

形式的な動態モデルで得られた CGRn値 は、推定式(estimating equation)によって予測されたCGRn値と比較された(結果は表1に示す)。

注: 特に断りがない限り、すべての値は 平均値 ± 標準偏差(Mean ± SD) で示す。

略語:

  • C₀:実測された血清クレアチニン濃度
  • C₀′:推定された血清クレアチニン濃度
  • CGR:クレアチニン生成率(creatinine generation rate)
  • CGRn:正規化クレアチニン生成率(normalized creatinine generation rate)
  • Kd:ダイアライザークリアランス(dialyzer clearance)
  • KrCr:残腎クレアチニンクリアランス(residual kidney clearance of creatinine)
  • V:体水分量(total body water volume)

残腎機能を持たない患者では、モデルで得られたCGRnの平均値は 16.9 mg/nkg/日 であり、推定式によるCGRn値も**ほぼ同一(16.9 mg/nkg/日)**であった。平均百分率誤差(推定式値 − モデル値)は 0.845 ± 2.97 であった。

一方、残腎クレアチニンクリアランス(KRCR)を有する患者(平均 5.44 ± 4.82 mL/min)で、補正前の透析前血清クレアチニン値(C₀)を用いた場合、推定式によるCGRn値はモデル値より著しく低値を示した(推定式:12.5 ± 4.85 mg/nkg/日 vs モデル:17.3 ± 5.80, P < .001)。

しかし、同じ推定式を**補正済みの透析前血清クレアチニン値(C₀′)**で再計算したところ、残腎機能を有する患者におけるCGRn値(17.2 ± 5.59 mg/nkg/日)は、モデルで得られた値と有意な差を示さなくなった。

図2は、CGRn(正規化クレアチニン生成率)について、縦軸に推定式による値(estimating equation value)、横軸に**動態モデルによる値(modeled value)**を示している。

黒塗りの円(●)は、FHN夜間試験(Nocturnal Trial)のベースライン期において無尿(anuric)であった患者を示し、
白抜きの円(○)は、残腎クレアチニンクリアランスを有する患者を示している。

この図では、残腎機能を有する患者については**補正透析前血清クレアチニン値(C₀′)**が使用されている。

図3は、無尿患者および有尿患者の両方における、
CGRnの推定値とモデル値の百分率誤差を示すBland–Altmanプロット[文献11]である。

図4Aは、残腎機能を有する患者に対して、補正を行わずに(つまりC₀をそのまま用いて)推定式を適用した場合のCGRn推定値とモデル値の百分率誤差を示している。

図4Bは、同じ患者群について、**補正済み透析前血清クレアチニン値(C₀′)**を用いた場合の百分率誤差を示している。

図2. 推定式により算出した**正規化クレアチニン生成率(縦軸)**と、
動態モデルにより算出した値との比較。

黒丸(●):無尿患者
白丸(○):残腎機能を有する患者

データは、FHN夜間試験(Nocturnal Trial)ベースライン時のモデリングセッションに基づく。

図3. Bland–Altmanプロットによる、**CGRn(正規化クレアチニン生成率)**の誤差解析。

推定値とモデル値の差(推定値 − モデル値)を百分率誤差として、両者の平均値に対してプロットした。

黒丸(●):残腎機能を持たない患者(無尿群)
白丸(○):残腎機能を有する患者

残腎機能を有する群では、推定式の計算に**補正透析前血清クレアチニン値(C₀′)**を使用した。

データは、FHN夜間試験(Nocturnal Trial)のベースライン期におけるモデリングセッションに基づく

図4.
(A) このパネルでは、残腎機能を有する患者に対して、
透析前血清クレアチニン値(C₀)を補正せずに推定式を使用した場合の結果を示す。

この補正を行わない場合、残腎クレアチニンクリアランス(KRCR)が増加するにつれて、推定されたCGRn(正規化クレアチニン生成率)はモデル値に比べて系統的に過小評価される。
KRCRが5.0 mL/minのときには、その過小評価の程度は**約−25〜−30%**の範囲に達する。

(B) (A)と同じ患者群における結果を示すが、この場合は、推定式を使用する際に**透析前血清クレアチニン値を補正(C₀′)**している。

データは、FHN夜間試験(Nocturnal Trial)のベースライン期モデリングセッションから得られたものである。

Discussion

我々の結果は、以前に報告・検証された2-プール動態モデル(文献9)から算出される正規化クレアチニン生成率(CGRn)が、一連の推定式(estimating equations)を用いることで近似的に求めることが可能であることを示している。

残腎クレアチニンクリアランスが存在する場合、これらの推定式はやや複雑になるが、プログラム電卓(programmable calculator)に容易に入力して使用できる

これらの式の開発方法は、DepnerおよびDaugirdasによって行われた
**PNAn(正規化蛋白同化率)推定式の開発手法(文献1)**と非常によく似ている。

このような推定式は形式的なモデリングよりも精度はやや劣るものの、実用的には非常に有用であることが示されており、たとえば先行するPNAn推定式は、他の研究者によるPNAnと臨床転帰との関係解析を容易にした好例である[文献3]。

本研究で提示した推定式の1つの問題点は、**EKTVCR(クレアチニンに対する平衡化Kt/V)**の値が通常は不明である点である。
これは通常、透析前後の血清クレアチニン濃度の両方が必要となるが、透析後の血清クレアチニン値は日常的には測定されないためである。

もう1つの問題は、**クレアチニン分布容積(VCR)が個々の患者で既知でない場合が多い点である。
我々の検討では、この値は
尿素分布容積の約95%**と近似できることを確認しているが、実際にモデル解析などを行っていない場合には、この値が得られない可能性がある。
しかし、こうしたパラメータが直接得られない場合でも、近似的に推定することは可能である。

我々は、CGRnを推定するための6つの手順を以下のように提案する。

必要な入力値:

  • 透析前血清クレアチニン値(mg/dL)
  • spKt/V-urea(単一プール尿素Kt/V)
    または
  • URR(尿素除去率:urea reduction ratio)

ステップ1:
URRの値から、**Daugirdasの式II(Daugirdas II)**などの推定式を用いてspKt/V-ureaを算出する[文献12]。

ここで、

  • Ct は透析後の血清尿素濃度、
  • C₀ は透析前の血清尿素濃度を表す。
  • T は透析時間(分)、
  • UF は透析中に除去された除水量(リットル)、
  • W は透析後の体重である。

より高い精度を得るためには、**透析後の尿素分布容積(V)**が既知の場合、
式中の UF/W の代わりに 0.55 × UF/V を用いることができる。

ステップ2:
Tattersallの式(Tattersall equation)[文献13]を用いて、
**spKt/V_urea(単一プール尿素Kt/V)eKt/V_urea(平衡化尿素Kt/V)**に変換する。
この際、HEMO研究データの解析から導かれた修正タイムコンスタントを使用する[文献14]。

ステップ3:
**クレアチニンの平衡化Kt/V(eKtV_creatinine または EKTVCR)**を、次の式で算出する:

EKTVCR = 0.71 × eKt/V_urea

ステップ4:
**クレアチニン分布容積(VCR)**を推定する。

a)尿素分布容積のモデル値をすでに持っている場合は、それが2-プールモデルによる容積であることを確認する。
その後、尿素分布容積に0.95を掛けることで、**クレアチニン分布容積(VCR)**を求めることができる[文献9]。

b)尿素のモデル化容積やその他の**体水分量(total body water)**が得られない場合は、Watson式による推定体水分量(Watson volume)からVCRを推定できる。
この際、HEMO研究データの解析から得られた性別ごとの係数
を用いる[文献9]。

ステップ5:
残腎機能が存在する場合は、提示された式を用いて**補正透析前血清クレアチニン値(C₀′)**を算出する。

ステップ6:
透析前血清クレアチニン値の採血日(週初・週中・週末のいずれか)に応じて、適切な推定式を用いて**正規化クレアチニン生成率(CGRn)**を算出する。
このとき、

  • 無尿患者では実測の C₀ を、
  • 残腎クレアチニンクリアランスを有する患者では補正後の C₀′

使用する。

まとめ:
本論文では、**正規化クレアチニン生成率(CGRn)**を、正式な動態モデリングを行わずに透析施設で日常的に得られる情報のみを用いて算出する方法を提示した。

残腎機能を持たず、週3回の透析を受けている患者においては、尿素またはクレアチニンのKt/Vが標準的な範囲であれば、**推定されたCGRnと透析前血清クレアチニン値との間には非常に高い相関(R²=0.90)**が認められる(図5参照)。
これは、**EKTVCR(クレアチニンに対する平衡化Kt/V)**の値が患者間でほぼ一定であるためである。

したがって、この推定式の主な価値は、残腎機能の程度を補正できる点にあると考えられる。

我々は、このCGRn推定式が、栄養指標・体組成・臨床転帰などとの関連性を、より大規模な透析データベースで解析する際に有用となることを期待している。

補足:
ureakinetics.org にある各種計算ツール(solute solvercreatinine solver など)は、尿素またはクレアチニンの残腎クリアランスを、**血漿水クレアランス(plasma water clearance)**として入力および出力している。

本論文で示したクレアチニン生成率推定式においても、残腎クレアチニンクリアランスを入力する際には、
血漿水クレアチニンクリアランスを使用する必要がある。

血漿水クリアランスは、**血漿全体の値のおよそ93%**として近似できる。

謝辞(Acknowledgments)

著者は、本研究で使用したデータを提供した **HEMO研究(HEMO Study)**および**FHN夜間試験(FHN Nocturnal Trial)**の研究者ならびに、米国国立糖尿病・消化器・腎疾患研究所(NIDDK)データリポジトリに感謝の意を表する。

HEMO研究は、HEMO Study研究者によって実施され、NIDDKの支援を受けて行われた。

また、FHN夜間試験も、FHN Nocturnal Trial研究者によって実施され、NIDDKの支援を受けている。

本論文は、HEMO StudyまたはFHN Nocturnal Trialの研究者との共同研究として作成されたものではなく、それらの研究者やNIDDKの見解・意見を必ずしも反映するものではない。

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