鉄の重要性~鉄不足と貧血の関係~

血液浄化

先日、鉄の代謝と造血の関係について書かせてもらいました。

今回はそれの続編にあたるようなお話を書かせてもらえればと思います。

では早速Anemiaの世界へ

鉄代謝のおさらい(ヘプシジンーフェロポルチン系)

鉄の出納を司る系のことをヘプシジンーフェロポルチン系と呼びます。

ではどの様に管理しているのでしょうか?

まず腸上皮細胞血管腔側にはフェロポルチンが発現しているわけですが、これは鉄を細胞内から排出する役割があります。また、老朽化した赤血球を貪食したマクロファージも同様です。腸管上皮細胞やマクロファージから排出された鉄は、トランスフェリンと結合し、血中を輸送されます。血中を輸送される鉄は、各細胞に発現しているトランスフェリンレセプター(以後、TfR)1と結合することで細胞内リソゾームへと誘導されます。そしてトランスフェリン鉄はリン酸化されることで鉄を手放し、再び鉄と結合される為に肝臓や腸管へ向かうわけです。

 細胞内リソゾームで手放された鉄は、いよいよ造血に寄与するわけですが、詳細はこちらの記事で。

これが鉄の吸収とリサイクルの機序です。

これに対し、鉄過剰を防ぐ機構がありました。それがヘプシジン系です。
血清中の鉄が過剰になり、TfR1の結合が飽和することで、鉄の貯蔵を担う肝細胞にTfR2が発現し、トランスフェリン鉄と結合を始めます。ヘモクロマトーシス蛋白(以後、HFE)と複合体を形成したTfR2がトランスフェリン鉄を取り込み、リン酸化することでシグナルが伝達され、ヘプシジン前駆物質であるフリンが発現します。

一方、肝細胞内の鉄量が増加すると、骨形成蛋白質6(bone morphogenetic protein 6:以後BMP6)発現が増加します。pro-BMP6がフリンで分解されBMP6が分泌されると、BMP受容体に結合、リン酸化します。これがthe intracellular small mothers against decapentaplegic homologue(以後、SMAD)1/5/8をリン酸化し、SMAD4と結合し核内でペプシジン遺伝子(hepcidin antimicrobial peptide:以後、HAMP)のエンハンサーに結合し、ヘプシジンー25転写を活性させます。

ヘプシジンの前駆体は前述したフリンによりヘプシジン-25に変換され分泌されます。分泌されたヘプシジン-25は、マクロファージや腸上皮細胞や肝細胞の鉄輸送蛋白であるフェロポルチン(ferroportin:以後、FPN)の分布密度を制御して、血中への鉄供給量を制御しています。

以上が鉄の吸収抑制機構の全容となります。

透析と鉄

透析ではフェジンやリオナが多用されます。それは何故か。医原性(採血や残血)の貧血もありますが、鉄の代謝障害が起きやすいためです。

ではその鉄の代謝障害とは何でしょうか?

炎症性鉄欠乏性貧血

透析と炎症は切っても切れない関係にあります。

慢性腎臓病(以後、CKD)の進行は尿毒症性物質の蓄積を意味します。尿毒症性物質はそれ自体が炎症のトリガーであり、FGF23やInterleukin(以後、IL)-6の惹起を誘発します。IL-6はT細胞やB細胞、線維芽細胞、単球、内皮細胞、メサンギウム細胞など様々な細胞により産生されます。マクロファージは細胞表面のToll様受容体(Toll-Like Receptor:以後、TLR)-4を介してロポポリサッカライド(以後、LPS)の刺激を受けることで、IL-6を始めとした様々なサイトカインを分泌することが知られています。LPSは我々にはなじみ深いエンドトキシンの事ですね。

IL-6は、細胞上のIL6受容体(以後、IL6R)に結合し、細胞内でJanus Kinase(以後、JAK)の修飾を受け、Signul Transducers and activators of Transcription(以後、STAT)3がリン酸化・活性化します。活性化されたSTAT3はヘプシジン遺伝子(以後、HAMP)に作用し、ヘプシジン-25の発現を亢進させます。

ヘプシジンが発現することで、フェロポルチン(以後、FPN)の細胞上の分泌密度を減少する方向で調整し、鉄を排出しない(貯蔵する)方向へ亢進します。これにより、TfR1のみが発現していることで、トランスフェリン鉄の取り込みのみが発生します。

結果として、フェリチン濃度の低下、およびTSATの低下を招くのです。
これが起こるため、JSDTガイドライン2015ではフェリチン100ng/mL , TSATが20%未満で鉄の補充を推奨しています。

この様にして、慢性炎症の遷延する透析患者では、炎症性貧血としての鉄欠乏性貧血が引き起こされるのです。

以上が炎症性貧血のお話です。

続いては腎臓そのもののお話です。

炎症性腎性貧血

CKDの進行により、リンの蓄積が起こります。これにより、骨細胞から線維芽細胞増殖因子(Fiblobrast Grows facter:以後、FGF)23の分泌を亢進します。

CKDの進行そのものがネフローゼなどの症状を引き起こし、間質の繊維化を進行させます。繊維化はEPO産生細胞(renalEPO-Producing cell;以後、REP細胞)の繊維化を伴う為、EPOの産生低下や腎臓の遠位尿細管からのKlotho発現量が低下します。

EPOの産生低下は、血球の成熟そのものを阻害します。その為、鉄が利用される前段階で造血がストップし、鉄の利用がされない状態が引き起こされます。

これが炎症性の腎性貧血の簡単な機序になります。

あとがき

今回も駄文長文にお付き合いいただきありがとうございました。

こうやって勉強させていただける機会があるのは幸せだなーと思う次第です。
ただ、色々と調べながらまとめながら書いてるので、何か矛盾してね??とかあれば、遠慮なくコメントなどいただけると助かります。

次は何を書こうかな~とか思う次第です。(切なるネタの募集)

ではでは~~

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