透析掻痒症に対して、Post-OHDFはどこまで効力を発揮するのか?

血液浄化

さて、今回は自験例ではありますが、ちょっとした症例報告になります。

透析掻痒症は、血液透析患者の4〜6割が悩まされる慢性的な症状であり、QOL低下の最大の要因のひとつです。しかし、抗ヒスタミン薬・保湿・局所治療・フィルター変更などを行っても改善せず、現場では「次の一手」が見えにくいことも少なくありません。本記事では、Post-OHDF(後希釈オンラインHDF)を高補液量・長時間透析の条件下で適用し、掻痒症が顕著に改善した症例を紹介します。治療条件、使用膜、評価スケール、改善のメカニズムまで、臨床工学技士の視点から丁寧に解説しながら、Post-OHDFが掻痒症の新たな選択肢となり得るのかを考察します。。

ではこれから症例報告を行いたいと思います。とくとご覧あれ。

■はじめに(introduction)

慢性腎不全は様々な合併症を引き起こします。CKD-MBDやCVD、感染症はその最たるものとして有名です。

しかし、意外に見落とされがちなのは、老廃物=溶質の除去が十分に行われない事が原因と思われる諸症状です。その諸症状の中で有名な症状として透析搔痒症、骨関節痛(透析アミロイドーシス)、レストレスレッグシンドローム(むずむず脚症候群)が挙げられます。

これら透析不足と考えられる諸症状に対し、どのように治療を行えば改善が得られるのか。それが今回の課題でした。

■背景

今回、私は重度透析搔痒症と思しき患者に対し、血液透析濾過(以下、OHDF)がどこまで奏功するのかを確認する目的で、治療を実施しました。

従来、本邦で行われるOHDFは前希釈(以下、pre)-OHDFが主流です。

しかし、コスト第一主義を掲げる当院では、置換液量の少ない後希釈(以下、post)-OHDFが実施されています。

本邦で有名なpre-OHDFの文献としては、菊池勘先生による「Predilution online hemodiafiltration is associated with improved survival compared with hemodialysis」がJRDRの解析として報告されています。

しかし、少数派としての本邦post-OHDFでは、報告が無いのが現状です。

そこで今回、私は先に挙げた諸症状の一つである「透析搔痒症」に対し、どの程度post-OHDFが効果を示すのかを調べました。

■方法

当該患者は、Dr.orderは5時間透析です。但し、患者都合などがある場合、4時間に変更するなどの変則的な治療時間でした。

介入前の透析条件は、modalityはPost-OHDF 8L/5時間(=1.6L/h)でありました。※4時間の場合は6.4L/sessionになります。Qbは250mL/min、Filterは旭化成メディカル社製 ABH-26PA。コンソールは日機装社製 DCS-100NX。抗凝固剤はヘパリン。透析剤はカーボスター透析剤Pです。

掻痒症の評価には、マルホ(https://www.maruho.co.jp/medical/articles/mitchga/clinicalindex/index.html)より公開されている「掻痒VAS」「搔痒NRS」「搔痒VRS」「PP-NRS」「かゆみスコア」「POEM(Patient-Oriented Eczema Measure)」「PN-IGA(Prurigo Nodularis-Investigator’s Global Assessment)」「睡眠障害NRS(Numerical Rating Scale)」の計8種類のスケールを用いて掻痒感などを測定しました。

当院では、採血項目にCRPや白血球系の採血が入っていない為、炎症の程度を測ることは不可能です。また、β2-MicroGlobulin採血は3カ月に1回のペースです。しかも前のみの採血なため、中分子量溶質の除去率を推し量ることは出来ないのが実情です。

その為、生化学系データを訴えることは難しいものがあります。

なので、先に挙げた8種類のスケールを重視することとしました。

介入後の変更点としては、補液量を3.6L/h固定とし、4時間で14.4L/session、5時間で18.0L/sessionとしたことです。他の変更点はありません。

当院は、当地域では珍しい長時間透析を主としています。勿論長時間透析を行う理由は、長時間加算の150点を獲得するためです。

■結果

結果としては、介入前のスケールは

  • 「掻痒VAS」:70.7mm/100mm
  • 「搔痒NRS」:7点/11点
  • 「搔痒VRS」:かなり痒い(4点/5点)
  • 「PP-NRS」:8点/11点
  • 「かゆみスコア」:日中2点/夜間2点
  • 「POEM(Patient-Oriented Eczema Measure)」21点/28点
  • PN-IGA(Prurigo Nodularis-Investigator’s Global Assessment)」:2点※目視
  • 「睡眠障害NRS(Numerical Rating Scale)」:2.5点/11点

と、掻痒VAS、及びPOEMで特に高得点を示していました。

補液変更後、1週間後のスケールでは

  • 「掻痒VAS」:51.1mm/100mm
  • 「搔痒NRS」:3点/11点
  • 「搔痒VRS」:かなり痒い(4点/5点)
  • 「PP-NRS」:8点/11点
  • 「かゆみスコア」:日中2点/夜間2点
  • 「POEM(Patient-Oriented Eczema Measure)」9点/28点
  • PN-IGA(Prurigo Nodularis-Investigator’s Global Assessment)」:1点※目視
  • 「睡眠障害NRS(Numerical Rating Scale)」:1点/11点

と、特にPOEMにて改善が見られました。また、掻痒VASについても、一般的に20mmの減少で改善したと見なされるため、ほぼ痒みについては改善が見られたものと見られます。

1か月後のスケール結果を以下に示します。

  • 「掻痒VAS」:49.6mm/100mm
  • 「搔痒NRS」:3.5点/11点
  • 「搔痒VRS」:痒い(3点/5点)
  • 「PP-NRS」:5点/11点
  • 「かゆみスコア」:日中2点/夜間2点
  • 「POEM(Patient-Oriented Eczema Measure)」4点/28点
  • PN-IGA(Prurigo Nodularis-Investigator’s Global Assessment)」:1点※目視
  • 「睡眠障害NRS(Numerical Rating Scale)」:0点/11点

という結果になりました。

■結論

結果からも分かる通り、慢性蕁麻疹、及び透析掻痒症を患う透析患者に対し、Hi-Dose Post-OHDFは顕著に掻痒感を軽減し、寛解状態へと導くことが出来る物でした。

従来、透析掻痒症に対しての治療介入は、下記のフローチャートが用いられます。

しかし、当院はDr.及びスタッフの知識及びスキル不足から、このフローチャートに沿った治療・指導介入は行われていません。また、このフローチャートの中に、OHDFは位置付けられていません。日本透析医学会(以下、JSDT)のガイドラインにも、そのような文言はありません。

しかし、参考書レベル(病態に応じたオンラインHDF治療戦略)でも既に明らかなように、Hi-Dose OHDFは透析不足からくる諸症状に対し、有効な一打となり得ます。しかし、背景でも紹介したように、先の参考書でもそうですが、本邦での主流のOHDFはPreであります。

今回、筆者は当院で行われているPost-OHDFの適切な置換量による治療に是正するための一環として、透析掻痒症を患う患者に対し、通常の他院や海外で行われている置換量でPre-OHDFを実施し、その効果を確認しました。

効果の程としては、掻痒VASが70.7mm→49.6mmと30%強、POEMは21点→4点と81%の改善が観察されました。

症例報告であり、α1-MicroGlobulinやβ2-MicroGlobulinの除去率は推定でしか語ることが出来ません。また、ABH-PAはポアサイズが大きい為、Albumin Leakにも注意が必要です。現にこの症例は、介入前3.5mg/dLが1か月後に2.9mg/dLと一過性に低下しました。2か月後には3.3mg/dLまで上昇を見せましたが、要観察と思われます。

介入前の栄養リスク指標は、

  • GNRI:88.57(medium risk)
  • NRI-JH:7点(Low Risk)
  • CGRn:8.35

でありました。1カ月後のスコアは

  • GNRI:92.77(medium risk)
  • NRI-JH:5点(Low Risk)
  • CGRn:13.58

2か月後のスコアは

  • GNRI:97.82(medium risk)
  • NRI-JH:4点(Low Risk)
  • CGRn:14.07

と、Albumin Leakがあったにもかかわらず、Scoreは改善傾向を示しました。

これを以て、Albuminのみで予後を語ることは、もはや禁忌と言える時代になったといえましょう。

当院はPost-OHDFをしているにも拘らず、1session当たりの置換量を8Lに抑えるLow Dose Post-OHDFが行われています。これはコスト(主に透析剤)抑制の為であり、何ら患者に寄与するものではありません。ましてOHDF加算の50点を獲得するためだけの治療であり、姑息術以外の何物でもありません。

この様な売り上げ1st、患者2ndの当院の運営方法を是正すべく、筆者は適正OHDFの普及のために、Hi-Qb、Hi-Dose Post-OHDFを推し進めていた訳です。

しかし、現場スタッフの無知と、Dr.の横暴により、この観察研究はストップが掛かりました。その為、2025年12月2週目より、当該患者は介入前の置換量に戻っています。

ここまで歴然とした効果が出ているにも拘らず、また元の透析条件に戻すことが、患者にどのようなメリットを及ぼすのでしょうか?実に見ものです。

兎にも角にも、本題とするHi-Dose Post-OHDFを実施することで、透析不足からくる透析搔痒症にも効果はあるという事が判明したのではないでしょうか。

当院には他にもネオファーゲンを投与している患者が多数存在しています。その患者群に対しても、このHi-Dose Post-OHDFはある程度の効果は発揮するのではないでしょうか。

今後は、更に患者1stの治療を拡大し、より患者のQoL、ADLに貢献できる透析医療を展開していきたい所存です。

あとがき

今回は長めの学会抄録風記事を執筆しました。

ブログだと字数を気にすることなく書けますからね。とてものびのびと執筆出来て良かったです。

当院は、8月にクソ院長が「今後はオンラインの指示は出さないから」というクソ命令を下しました。

なら院長には、是非ともI-HDFやHDがOHDFよりも優れている事のエビデンスを出していただきたい所存ですね?ま、何の実績もないおじいちゃんには無理ですけど(笑)

ChatGPTに院長について検索させましたが、一切文献が出てこない当たり、まぁ留学も医局の邪魔者を外に出す名目だったのでしょう。そんな留学に拍が付くわけがありません(笑)だから横のつながりもなく、継承問題も暗礁に乗り上げているんですよ。

このクリニックも、後継ぎが見つからなければあと数年で閉院なので、ぼちぼち動く準備が必要かもしれませんね。

あーまた転職か~…やだな~…めんど…

コメント

タイトルとURLをコピーしました