はてさて、皆様ご無沙汰しております。
筆者は何をしていたかといいますと、「専門CE:血液浄化」の試験をつい先日受験しました。
はちゃめちゃに合格率の低い資格ですんで、さぞかし頭を悩ますんだろう。と覚悟していましたが、なーんかすらすらと解答してしまったのが拍子抜けですね。正解してるかどうかは別ですが。
さて、試験中にも出てきたKt/Vのお話です。初学者が躓きやすいその落とし穴について、解説していこうと思います。
では行きましょう。ようこそ透析効率の世界へ。
透析効率のおさらい
さて、当ブログでも透析効率については散々解説や実践ページを公開してきました。
透析効率の前の時代には除去率がありました(当院では院長が大好きです)。そして透析効率以外にも、しっかり栄養摂取が出来ているか?の指標にnPCRが存在します。
そして以下が実際に透析効率をサイト上で計算できるページです。
このページには、Daugirdas先生の第2世代公式によるExcel関数も記述しているので、よければ御参照ください。
Kt/Vは高ければ正義なのか?初学者がハマる3つの落とし穴
さて、透析室では、透析の“十分さ”を語るときにKt/Vがまず出てきます。
もちろんKt/Vは大事です。最低ラインを割るのは論外。そこは揺れません。
ただ、現場でよく起きるのがこういう状況です。
- Kt/Vは良いのに、患者さんがしんどそう
- Kt/Vは良いのに、栄養や体力が落ちていく
- Kt/Vは達成してるのに、予後が良い感じがしない
この違和感の正体は「Kt/Vが間違い」ではなく、Kt/V“だけ”で判断してしまうことにあります。
ここでは、CE・Nsが実務で遭遇しやすい「事故る3パターン」と、次に見るべきポイントを整理します。
まず前提:Kt/Vは“最低条件”であって“万能条件”ではない
Kt/Vは「どれくらい尿素を除去したか」を、体水分量(V)で割って評価する指標です。
だからKt/Vが良い=透析が万能にうまくいっている、とは限りません。
理由はシンプルで、Kt/Vは Kt と V の両方に左右されるからです。
Vが小さければ、同じKtでもKt/Vは高く見えます。
パターン①:小柄・筋肉少なめで「Kt/Vだけ異常に高い」
小柄な高齢者や、筋肉量が少ない患者さんでは、Vが小さくなりやすいです。
すると、処方が特別に強くなくてもKt/Vだけは“立派”に見えます。
こんなサインがあれば要注意
- DWが軽い/フレイルっぽい
- Albが低め、食事量が落ちている
- 透析後の疲労感が強い
次の一手
- Kt/Vだけで「十分」と言い切らない
- 栄養指標(Alb、nPCR、GNRIなど)と体重推移をセットで見る
- “数字をさらに上げる”より、症状・回復・栄養が悪化していないかを優先する
Kt/Vが高いから安心、の前に。
「Vが小さいから数字が高く出ているだけ」を一度疑う。
パターン②:短時間で“Kt/V合わせ”をして、体感が崩れる
同じKt/Vを狙うにしても、短時間×高効率で合わせにいくと、別の負債が出ます。
透析中の血圧低下、足つり、終了後のぐったり感など、「数字はいいのに患者が辛い」ケースがこれです。
こんなサインがあれば要注意
- 血圧低下・補液・足つりが増えている
- 透析後の回復が遅い(帰宅後寝込む)
- 除水がきつい(IDWG※1が大きい、UFR※2が高い)
※1:Interdialytic Weight Gain 透析間体重増加
※2:除水速度
次の一手
- 月次で「血圧イベント回数」「補液回数」「足つり」などを記録して見える化
- Kt/V達成のための“効率UP”より、除水・DW・時間・生活指導の再設計を先に置く
Kt/Vは到達条件。
でも“快適条件”ではない。
パターン③:低栄養・炎症で「Kt/Vが良く見える」
食事が入っていないと、そもそも尿素が作られにくく、BUNが上がりません。
さらに体格低下でVが小さくなれば、Kt/Vは“良く見える”方向に寄ります。
つまり、状態が悪いほど数字が整って見える、という皮肉が起きます。
こんなサインがあれば要注意
- Alb低下、DWのじわ減り、食欲不振
- BUNが低めで「良さそう」に錯覚する
- 入退院が増え、活動性が落ちている
次の一手(CE・Ns)
- 「Kt/Vが良い」より 栄養・体重・摂取量を優先して追う
- 状態悪化で数字が整って見えている可能性を、医師に先に提示する
“BUNが低い=コントロール良い”ではなく、
“入ってない”の可能性がある。
結論:Kt/Vと一緒に見る「最低3点セット」
Kt/Vを主軸にしつつ、最低限これをセットで見たほうが安全です。
- 症状:血圧低下、補液、足つり、透析後疲労
- 除水:IDWG、UFR、DW妥当性※3
- 栄養/体格:Alb、nPCR、GNRI、体重推移、食事状況
Kt/Vが“良い”ときほど、逆にこの3点セットで整合性を確認する。
それだけで「数字はいいのに悪い」という事故はかなり減ります。
※3:CTRやBNP、hANPなどのDW指標
最後に
「Kt/V」という指標が出て、もう何十年になるでしょうか。
当初は尿毒症原因物質は小分子にある!と謳われ、そこさえ除去出来れば良くなる!!と思われていた時代の指標です。
しかし、今では大分子・中分子領域に何かしらの病因物質があると思われており、メインターゲットはその領域へとシフトしつつあります。
しかし、Kt/Vが予後に関係ない。という訳でもありません。その為、透析効率の評価は、患者の状態を診て、総合的に判断するというスキルが必要になってきます。
初学者はつい「Kt/Vが高い事はいいことだ!」と思いがちですが、そもそもこの式がどう成り立っているのか、何を表現しているのかをしっかり理解し、用いることが大切です。
このポイントさえ押さえられれば、周りとも一歩抜きんでるかもしれません。
あとがき
といわけで、今回はKt/Vの落とし穴と題しまして、初学者の躓きやすい、解釈について執筆してみました。



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