おはこんばんちはなら。
さて、皆さんはTRACP-5bという検査をご存知でしょうか?
弊社では、新規患者の採血時にTRACP-5bとBAP、そして手の撮影(骨塩)を取ります。
お恥ずかしながら(?)、筆者は骨代謝回転の分野に関しては門外漢でありまして、このTRACP-5bとBAPという検査項目についても待ったくの無知です。
ですので、今回はTRACP-5bとは何か?を広く浅くご紹介できればと思います。
では行きましょう!骨代謝回転の世界へようこそ!
1.透析と骨代謝のつながり
透析患者さんにとって「骨の健康」は軽視できないテーマです。慢性腎臓病(CKD)に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)は、骨折リスクや生活の質に直結します。
しかし「骨の状態」を直接見ることは難しく、臨床現場では血液検査から骨代謝を推測する工夫が求められてきました。そこで注目されているのが TRACP-5b という骨吸収マーカーです。
2.TRACP-5bとは何か?
- 正式名称:Tartrate-Resistant ACid Phosphatase type 5b(酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ5b)
- 由来:破骨細胞が骨を吸収する過程で分泌される酵素
- 特徴:
- 腎機能の影響をほとんど受けない
- 日内変動が小さく安定している
- 骨吸収を直接反映する
従来よく使われてきた NTX や CTX は腎排泄型のマーカーのため、透析患者では高値になり解釈が難しいことが多いのですが、TRACP-5b はその点で優位性を持っています。
有意というのは、TRACP-5bが腎排泄の影響を受けにくいマーカーだという事です。その為、CKD保存期の患者やHD患者では、好んで採血される検査項目になります。
3.臨床での活用
骨粗鬆症診断・治療モニタリング
ビスホスホネートやデノスマブ投与後の効果判定に有用。
腫瘍性骨疾患
骨転移や多発性骨髄腫における骨吸収の評価にも用いられる。
検査としてのメリット
採血で測定でき、安定性が高いためフォローに使いやすい。が、保険算定では半年に一度しか算定出来ない為、現実には少し使い辛い面も。
4.透析患者におけるTRACP-5bの意義
透析患者では、骨回転性が「高回転」か「低回転」かによって治療戦略が変わります。
TRACP-5bは腎排泄の影響を受けにくいため、透析患者でも比較的「素直に」骨吸収の状態を反映してくれるのが強みです。
- 高回転骨:TRACP-5b ↑、BAP ↑、PTH 高値
- 低回転骨:TRACP-5b ↓、BAP ↓、PTH 低値〜抑制
この組み合わせにより、骨生検を行わずとも骨回転性を推測できる可能性があります。
TRACP-5bの基準値としては
- 男性:170~590mU/dL
- 閉経前女性:120~420mU/dL
となっています1)
骨代謝において、「高回転」や「低回転」という頻出ワードが出てきます。そして「骨吸収」や「骨破壊」というワードも頻出します。ここら辺の整理はとても大切で、筆者も新人時代にはこんがらがって仕方なかったです。
なので、骨代謝回転の生理学に特化した記事は、近々執筆予定ですので、少々お待ちください。
5.ガイドラインの視点
KDIGO 2017
- 血清 PTH と 骨型ALP(BAP) を測定し、骨回転性の把握に活用できると明記。
- TRACP-5b については推奨項目に明確には含まれないが、腎不全患者でも使いやすい骨吸収マーカーとして研究が進んでいる。
日本透析医学会(JSDT)ガイドライン
- BAPとTRACP-5b は腎機能の影響を受けにくいため、透析患者における骨代謝評価に有望。
- ただし、骨折リスク予測能などはまだ十分確立されていない(=エビデンス不足な)ため、補助的な指標として位置づけられている。
6.まとめ
- TRACP-5b は「腎機能の影響を受けにくい骨吸収マーカー」として、透析患者の骨代謝評価に役立つ。
- BAP と組み合わせることで「骨形成」と「骨吸収」の両側面から骨回転性を把握できる。
- KDIGO と JSDT いずれも「骨代謝マーカーを使って治療方針を補助する」立場を示しており、今後はさらにエビデンスの蓄積が期待される。
臨床工学技士として現場にいる私たちも、単なる「透析効率」だけでなく、「骨と栄養」「QOL」に目を向けることが、患者さんの長期予後を左右する大切なポイントになるのではないでしょうか。
あとがき
筆者はブログ記事を見ても分かるように、特に栄養に特化した内容が多いです。しかし、透析患者の高齢化と共に、栄養不足によるフレイル・サルコペニアの進行による転倒事故から、大腿骨転子部骨折など、予後不良の転記を辿る患者数は増加の一途と辿っています。
その為、我々現場を回すスタッフは、患者の日頃の生活を把握し、適切なアドバイスと共に、チーム医療として医師と情報共有を行い、日々の臨床業務を熟さなければなりません。
その為にも、医師が何のためにどの検査をしているのか?も我々メディカルスタッフは把握し理解する必要に迫られます。
知らない・分からない事が出れば、理解できるように調べる。をモットーに記事を書いている筆者ですが、この記事が少しでも皆様のお役に立てることを願っております。
では今日の記事もここら辺で。
あでぃおーすノシ
引用文献


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