慢性腎臓病から透析へ~透析とは Part.3~

血液浄化

 さっ、今回で患者さんやその家族向け記事もひと段落となります。

 これまで連続して下記2記事を執筆して参りました。

 もしご興味ありましたら、ご笑覧頂けましたら幸いです。

 さて、今回は何をご説明するかというと、腎臓ってそもそも何をする臓器なの??というお話です。

 慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease :CKD)といっても、原因は様々です。

 しかし、腎臓の仕事というのは全人類を通して同じです。

 今回は、そんな腎臓のお仕事のお話をさせていただければと思います。

 ではようこそ。腎臓の世界へ。

沈黙の臓器:腎臓

 慢性腎臓病という病名は付いていますが、その実原因は様々です。しかし、初期症状というのはどの原因疾患にもほぼ共通してありません。

 では、この沈黙の臓器の異常はどのように発見すればいいのか?

 それが、いわゆる【定期健診】なのです。

 定期健診時に尿検査を行います。その際、タンパク尿や血尿を指摘された方は、『必ず』腎臓内科専門医を受診するように推奨されています。(日本腎臓財団HP) 

 指摘後の受診で問題が無ければいいですが、何かしらの病気を指摘された方は、その後、受診した腎臓内科の病院で、定期的な受診を行い、慎重に経過を見るという必要があります。

 と言っても、透析導入になるまでは、基本的に10年単位で期間を診る必要があるため、余程の事が無い限り「すぐに透析を!」という事態にはならないのでご安心ください。

まず腎臓はどこになるのか?

 まずは腎臓の基本的な構造をご説明します。 

 腎臓は、解剖学的には後腹腔臓器と呼ばれ、丁度腰のあたりに存在します。腎臓の大きさは丁度拳大程度と言われており、右側の腎臓の位置は、左側より少し下に位置しています。(看護roo!看護師イラスト集より)

 腎臓からは大きな管が3本出ており、動脈・静脈・尿細管という3つの管と連結しています。

腎臓の働きとは?

 さて、では肝心の腎臓の働きが何かを解説していこうと思います。

 Part.2でもちょろっとご説明していますが、腎臓はおしっこ(=尿)を作る臓器です。

 尿には体内で不要となった老廃物(=代謝産物)がたくさん含まれています。

 つまり

  • 尿を作る(=体液・電解質の調整)
  • 老廃物を濾す(=老廃物の排泄)

 という仕事が存在します。この他にも、腎臓は大切な仕事が3つあります。

 慢性腎臓病の患者さんは、腎臓病のステージ(=病期)が進行するにつれ、貧血が進行します。これは、腎臓が血液を作る仕事も担っているからです。その為、

  • 造血作用

 も重要な仕事として挙げられます。

 昔とは違い、今では一つだけの臓器が悪くなるという概念は無くなりつつあります。そして、それは腎臓でもそうで、『心腎連関(しんじんれんかん)』という概念が提唱されています。

 心臓はもちろんですが、意外にも腎臓も血圧を調節する重要な仕事を担っています。この調節機構のことを、私たちは『レニンーアンギオテンシンーアルドステロン(RAA)系』と呼びます。というわけで、もう一つの腎臓の仕事は

  • 血圧の調整

 となります。

 そして最後、先ほども述べた事として、臓器一つが悪くなれば他も悪くなるという意味で、副甲状腺という臓器を介して、骨の強度を操作しているのも、この腎臓という臓器になります。詳細は割愛しますが、腎臓は、【骨・ミネラル代謝】を司る重要な臓器なのです。というわけで、腎臓の最後の仕事はこちら。

  • ビタミンDの活性化

 となります。

 まとめると、腎臓の五大仕事というのは

  • 尿を作る(=体液・電解質の調整)
  • 老廃物を濾す(=老廃物の排泄)
  •  造血作用
  • 血圧の調整
  • ビタミンDの活性化

 の5つとなります。この五つは、僕ら臨床工学技士の国家試験では必ず問われる知識です。

では透析は何を代わりに行えるのか?

 透析というのは、実は万能ではありません。

 上記の5大仕事のうち、代行できるのは精々透析は非常に有用な治療法ですが、万能ではありません。5つの機能のうち、主に代用できるのは“体液・電解質調整”と“老廃物排泄”の2つです。ただし制度的な限界や患者さんごとの条件もあるため、全てを完全に代替できるわけではありません。

 この2つだけなのです。意外と思われるかもしれませんね。

 では他の3つはどうするのか?というと・・・

血圧調整

 透析患者さんの高血圧の内、8割の方は、「容量依存性高血圧」と呼ばれる状態であると言われています。これはつまり、身体にお水が溜まったことにより、風船のように膨らんでしまい、血圧が上昇した状態状態を指します。

 その為、毎透析毎にお水を抜く(=除水)をすることで下げることが可能です。

 但し、血圧を規定するのは何もお水の量だけではなく、心臓の状態や血管の状態(=動脈硬化の具合)や残腎機能にもよるため、適宜適切な降圧薬の服用や除水の実施により、血圧を調節をしていきます。

 そしてもう一つ重要なのは、血圧は自宅で測る数値が一番正確だという事です。

 病院で測る血圧というのは、どうしても高めに出てしまいます(これを「白衣性高血圧」といいます)。

 その為我々透析医療従事者は、自宅の血圧を血圧手帳に記帳していただき、それを元に医師は降圧薬を調整します。

 なので、透析患者さんには、是非とも血圧計を購入して頂き、自宅で測定していただきたいと切に願っています。

造血作用(=貧血の改善)

 造血というのは、実はホルモンバランスにより左右されます。

 30年前はまだ薬剤がなく、透析患者には輸血をするのが標準治療でした。しかし、ブレイクスルーとして、造血因子刺激製剤と言われるお薬が登場しました。

 そのおかげで、今では薬の投与を1週間に一度行うことで、貧血の改善に寄与することが出来ます。

 また、数年前からは内服により貧血を改善することが出来る「HIF-PH阻害薬(ひふーぴーえいちそがいやく)」の登場により、より貧血改善治療は進歩することが出来ました。

活性化ビタミンD治療

 この治療も、ブレイクスルーにより、直接活性化ビタミンDを補充する治療法が登場しました。これにより、骨ミネラル代謝をコントロールすることは可能となりました。

 しかし、10年ほど前からはCalcimimetics(=カルシウム模倣薬)の登場により、より直接的に副甲状腺をコントロールすることが出来るようになり、骨ミネラル代謝コントロールは、より的確になりました。

 以上が、透析で出来ることと出来ない事の分け隔てと、腎臓の仕事についてでした。

まとめ

まずじんぞうの仕事5つをまとめます。

  • 尿を作る(=体液・電解質の調整)
  • 老廃物を濾す(=老廃物の排泄)
  • 造血作用
  • 血圧の調整
  • ビタミンDの活性化

 そして、透析をすることで代替できる仕事と出来ない仕事をまとめます。

  • 出来ること
    • 尿を作る(=除水をする)
    • ゴミ(=老廃物)を捨てる
  • 出来ない事
    • 血圧を調整する
    • 血を作る(造血)
    • ビタミンDの活性化

 以上が、透析で出来ること、そして出来ない(=薬剤を使う)事のまとめとなります。

 お判りいただけたでしょうか?

あとがき

 さ、今回で患者さん向けの透析導入、及び腎機能の説明記事は一旦終了です。

 もしこれが分からないということであれば、遠慮なくコメントや問い合わせいただければ、出来るだけ丁寧に対応させていただきます。

 但し、僕は医師ではないので、診断などは医師法に引っかかります。その為、アドバイスに留まる。という点にご留意ください。

あとがき

 はい。読者の皆様、ここまで冗長に長い文章にお付き合いいただきありがとうございました。

 長かったでしょうね。筆者もここまで長くなるとは思ってもいませんでした。

 ただ、透析というのは事実を言えば、死ぬまで付き合わなければならない過酷な治療です。

 だからこそ、その過酷さを少しでも和らげるお手伝いがしたいのです。

 患者本人だけでなく、時には家族まで巻き込んで透析医療は進みます。そのことを念頭に置かなければなりません。

 その為にも、正しい知識の啓蒙が必要になるのです。

 その為、こういう記事を書こう!とという決断に至りました。

 少しでも、患者やその家族に届くことを祈りまして、終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

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