HDF+β2-ミクログロブリン除去デバイスを併用する際の疑問点

自己紹介

今回は、ふと浮かんだ疑問について掘り下げていこうと思います。

というのも、最近透析界隈でぽつぽつと話題に上がるのが、「オンラインHDFにβ2-MG除去デバイスが併用算定可能となった。」というもの。

血液浄化領域で、数少ない利益の出る治療法として注目されているβ2-ミクログロブリン除去デバイスですが、果たして如何ほどの効果があるのでしょうか。

そんな疑問を掘り下げます。ではどうぞお付き合いください。

はじめに

さて、冒頭でも話題にしましたが、最近ちまたで噂になっているのが「OHDFとリクセル/フィルトールの併用算定が出来るようになった。」というもの。

HDFが登場するよりも前の時代、まだハイパフォーマンスメンブレン(以後、HPM)があるかどうかの頃、1985年に下条武文らが手根管症候群の原因物質であるアミロイド蛋白の主成分がβ2ミクログロブリンであることを突き止めます。

日本でOHDFが保険収載されたのは2010年ですので、その間25年。

本邦では、小分子は除去出来れど、中大分子領域はまだまだ手の出ない域でした。

そこで発売されたのがβ2-ミクログロブリン除去デバイス「リクセル®」です。

リクセル/フィルトールの威力や如何に

歴史の詳細は先の記事に譲るとして、では実際にリクセルやフィルトールはどの程度β2-MGを除去するのでしょうか。

カタログ見てもいいんですが、それだとCOIだらけになります。しかし、情報源としても無視出来ない。

というわけで、カタログ値のご紹介

という訳で、従来の使用方法(HD+リクセル)でのクリアランスは上記の画像の通りです。やはりリクセルの容量が大きくなるほどにクリアランスも大きくなるようですね。

次はカタログに載っている血中濃度のデータについて。

PS膜とPMMA膜にリクセルを接続しての症例ですが、血中濃度は確実に低下傾向となっています(そりゃそうだわ)。

PMMAに関しては、昔のメイン膜だったBKシリーズなので、今出回っているNFシリーズでのデータではどうなのかが興味ありますね。

まぁ保険収載されるデバイスですから、下がらないと困る訳で。

そしてHDFをかました条件での、リクセル単体除去率が下になります。

リクセル単体のβ2-MG除去率(図4左)

  • Pre on-line:前 48.3% → 後 66.4%(P=0.0156)
  • Post on-line:前 66.7% → 後 77.8%(P=0.0156)

オンラインHDF+リクセルだとどうなるのか?

では冒頭でお話した「オンラインHDF+リクセル」の組み合わせの場合、β2-ミクログロブリン除去率などはどうなるのでしょうか??

兵庫県では割と有名な技士さんで、宮本クリニック所属の重松武史という方が、OHDF+リクセルについて文献を出しています1)

その文献によると、OHDF+リクセルで、フィルタ前と後でβ2-MGの血中濃度には有意差が出た。とあります。

治療後β2-MG(mg/L)は「後接続(HDF膜の後にリクセル)」で低い

Pre on-line HDF:後接続の方が低い(P=0.0469)

  • 後:4.7 (4.3–5.4) vs 前:5.1 (5.0–5.7)

Post on-line HDF:後接続の方が低い(P=0.0156)

  • 後:4.4 (4.2–4.6) vs 前:4.9 (4.5–5.1)

また、Pre/Post-OHDFでは、Pre-OHDFの場合、フィルタの前と後では、後に着けた方が除去率が多い。という結果になりました。

“全体”除去率(RR)

  • Pre on-line HDF:後接続が有意に高い(P=0.0469)
    • 前:76.6% (75.3–79.8) → 後:79.6% (78.6–80.5)
  • Post on-line HDF:全体RRは差なし(P=0.4688)
    • 前:81.8% (79.7–83.0)、後:82.9% (81.7–83.9)
      ※ただし「デバイス単体」や「合計」では差が出ます。

結局、β2-ミクログロブリン除去はどっちがいいのか?

たった一報の文献だけで何かを決めれるほど、医学は甘くありません。

これをエビデンスとするのはかなり強引とは思われます。が、データとしてない訳ではないので、この文献を基に語るのであれば、

“”オンラインHDFにリクセルを併用すれば、除去率・除去量は多い””

となります。

また、別の報告2)では、2010年ですが、OHDF + リクセルの組み合わせが一番除去率が高かったという報告があります。但し、これはS-15ーつまり一番容量が小さいリクセルでの話であり、S-25だと除去量は更に増加する。という結果になっています。

そもそもがリクセルはエビデンスというより、目先の効果を追いかけているだけのデバイスなので判断が難しいですが、それでも、β2-MGが減少することを良しとするならば、このデバイスは正義なのでしょう。

結論

当初、筆者は資料を集める前、「そもそもHDFでβ2抜けるんだし、リクセル付けても除去率は変わらんだろ」派でした。しかし、資料を何報か取り寄せ読んでみるとあら不思議。HDF v.s. HDF+Lixcellでも、場合によっては有意差が付いているではありませんか。

というわけで、β2-MGの減少という側面だけにフォーカスすれば、この組み合わせの保険適応は善だとうことになりました。

但し、国民からの大量の社会保障費を使う血液透析ですんで、しっかりとエビデンスは作って欲しいな。というのが感想です。

あとがき

さーて、今回は最近話題の「OHDF+リクセル」について記事を執筆しました。

経営面を考えた時、リクセルは積層と同等かそれ以上に喉から手が出る償還価格です。しかし、その治療法にどれだけの医学的根拠があるのか。それを我々科学者である医療従事者は真摯に考えなければなりません。

が、だからこそデータ取りの為に使ってみたいというのも事実です・・・

好奇心というのは難しいですね・・・

では今回はこの辺で。

またね~

参考文献

1)重松武史 ; OnlineHDFにリクセルを併用した際のリクセル接続位置の違いによるβ2-MG除去効率の比較 ; 腎と透析92巻 ハイパフォーマンス2021

2)宮原一徳 ; On-Line HDFとリクセル併用療法の検討 ; 腎と透析 別冊 HDF療法’2010

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