【透析の定番?】エホチール~最強のカテコラミン製剤~その特徴と使いどころを解説

血液透析

おはようございます。

 さてさて、前々回にリズミック®とドプス®について解説した記事を執筆させていただきました。

 今回はその更に一段強力である、透析室でよく使われる薬剤であるエホチール®について、その特徴や使いどころなどを解説出来ればいいなーと考えております。

 では早速行きましょう。エホチールの世界へ。

名称の由来

 洋名では「Effortil® Injection」の名前で発売されており、名称の前半にあるEffortから来ているようです。血液循環を改善することに通じるとか。

薬効分類

 エホチール®はエチレフリン塩酸塩として一般名は定義されています。

 薬効としては交感神経刺激作用(α、β刺激)により心拍出量を増加させ、また静脈緊張度の改善により循環血流量を増加させ、血圧を上昇させます。アドレナリン受容体刺激作用を有しますが、タキフィラキシー現象は認められません。心拍出量及び分時拍出量を増大させて血圧を上昇させるが、心拍数には影響しません。末梢血管抵抗を減弱してその循環を改善します。

 ※タキフィラキシー現象とは、つまるところ薬剤に対する耐性のことです。wikipediaにも実に短文ページが作成されていますが、急速投与により耐性が付いてしまい、効果が減弱、終わりには全く効果が無くなることを指します。

薬物動態について

 外国人データでは、エチレフリン塩酸塩0.75mgを静脈内投与した場合、血中濃度の半減期は約2時間であります。

 最高血中濃度到達時間は投与直後となっています。静脈内投与なので、本当に即効性のある薬剤ですね。その為に透析では頻繁に使用されます。

 血漿タンパク結合率は23±4%となっているので、結構な割合が透析で除去されてしまいます。

本剤の効能・効果

 起立性低血圧,各種疾患若しくは状態に伴う急性低血圧又はショック時の補助治療

となっています。

 透析では開始前から常時低血圧の患者に対し、開始と同時にVチャンバー上から投与を開始します。Aチャンバーからの投与では、先ほども述べたように透析されてしまうので注意が必要です。

透析性について

 血漿タンパク結合率は23±4%となっているので、結構な割合が透析で除去されてしまいます。

 なので、上述したように透析では開始前から常時低血圧の患者に対し、開始と同時にVチャンバー上から投与を開始します。Aチャンバーからの投与では、先ほども述べたように透析されてしまうので注意が必要です。

詳細な作用機序

 薬効の部分でも説明した通り、交感神経刺激作用(α、β刺激)により心拍出量を増加させ、また静脈緊張度の改善により循環血流量を増加させ、血圧を上昇させます。アドレナリン受容体刺激作用を有するが、タキフィラキシー現象は認められません。心拍出量及び分時拍出量を増大させて血圧を上昇させるが、心拍数には影響しません。末梢血管抵抗を減弱してその循環を改善します。

 効果としてはアドレナリン作用が強く、β2よりもβ1アドレナリン受容体に対して、より高い親和性を示します。1)2)3)

 効果としてはエフェドリンと同様であり、エフェドリンに比べβ2作用が低い事が確認されています。
その為、静脈内投与をすることで心拍数、一回拍出量、中心静脈圧、平均動脈圧が増加します。

 投与量が1-8mgまでの間は末梢血管抵抗が低下しますが、それ以上では上昇し始めます。つまり、α1作用が強く出ることを示しています。

 高用量になればなるほど、強心剤としての作用が強くなり、心筋収縮力が増し、心拍出量を強くします。但し、平滑筋弛緩作用も強くなるため、抵抗血管は拡張し、循環を改善させ、心拍数は通常(低用量)増加します。ただし、上記でも述べたように8mgを境に末梢血管抵抗は増加します。

 使用に際し、ICUではγ計算で用いると思いますが、透析室ではmL/hrで用いることが多いです。

γ計算の便利な方法

 γ計算とはμg/kg/minで計算する方法です。

 1γの投与とはつまり、1μg/kg/minで投与していることになります。

 実臨床においては、【1γ = 体重(kg)×0.06mg/hr】と覚えておくと便利です。式の変換としては下記を参照してください。

minをhrに変換する

 1hr=60minなので、1γ=60μg/kg/hrとなります。

ugをmgに変換

 1mg =1,000μgなので、1γ=0.06mg/kg/hrとなります。

単位を並び替える

 1γ=0.06mg/kg/hrから、1γ=体重(kg)×0.06mg/hrとなります。

γ計算の一例

 実際には20mLで希釈して使用することが多いと思われます。そこで、1例を示したいと思います。

1)薬剤の希釈濃度をmg/mLで算出

 ex.)エホチール10mg/mL+N.S19mLで総薬液量20mLとする(20倍希釈)

 希釈濃度=10mg/(1+19)mL
     =10mg/20mL
     =0.5mg/mL となります。

2)1γ=体重(kg)=0.06mg/hrを算出

 ex.)DWが60kgの患者だとして、
   1γ=60kg×0.06mg/hr
     =3.6mg/hr となります。

3)mg/hr → mL/hrへ変換する

ex.)希釈濃度 0.5mg/mLなので、
  1γ=3.6mg/hrの場合、
    =(3.6÷0.5)mL/hr
=7.2mL/hr となります。

4)最後に、実際の投与に反映

 エホチールの場合、2mL/hr程度から始めることが多いと思いますが、これは何γなのでしょうか?

 1γ=7.2mL/hr なので、
 Xγ=2.0mL/hr から
 1γ=7.2mL/hr:Xγ=2.0mL/hr →X=2.0/7.2=0.277…≒0.28γ

 以上より、DW 60kgの患者へ2.0mLで投与すれば、それは0.28γという計算になります。

 少しは参考になったでしょうか??

あとがき

 今回は透析室でのエホチール使用に関して少しだけ解説してみました。

 実は末梢血管抵抗を上げる為には結構な容量が必要ということがわかりました。なので、「PADのあるような患者にエホチールね~…」など考える必要はないかもしれません。というか、容量依存性に末梢循環の改善が得られるのであれば、積極的に8mgまではふやすべきなのかもしれませんね。

 透析中に8mg以上を投与するということは、1γで投与して2時間ちょっとということになりますからね。また、透析性や半減期を考えると、更にγ数を上げて投与する必要があるかもしれません。これは中々骨の折れる作業です。

 また、カテコラミン製剤は奥が深いため、まだまだ説明の余地が残っています。

 そのあたりに関しても、集中治療として解説出来ればいいのかな~なんて思っています。

 今回はこの辺りで〆とさせていただきます。

 ではでは~~

 

1)Offermeier J, Dreyer AC : A comparison of the effects of noradrenaline, adrenaline and some phenylephrine derivatives on alpha-,beta1-and beta2-adrenergic receptors. S Afr Med J 1971 ; 45 : 265-267(動物実験)

2) Coleman AJ, Leary WP, Asmal AC : The cardiovascular effects of etilefrine. Eur J Clin Pharmacol 1975 ; 8 : 41-45(Ⅱ-c)

3)麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドライン第3版 Ⅷ循環作動薬 p208-209

4)清水 真人 ,γ計算 (γ→ml/h) , https://hokuto.app/calculator/t1FLMqYKgIPHbePBdAeR

5)循環器Drぷー , 【今さら聞けない】カテコラミンの使い分け,これだけ知っとけばok【保存版】

6)医薬品インタビューフォーム , エホチール®注10mg , 2014年9月(改訂第5版)

7)徳岡 宏文,一瀬 宏 , アドレナリン

8)川崎 孝一,上村 裕一 , 血管作動薬の基礎と臨床 , 日臨麻会誌Vol.23 No.10/Dec. 2003

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