おはこんばんちはなら。
ちょっと間が空きまして。最近はなんだかぼーっとした毎日を過ごしています。
まぁなかなかいいネタを見付けるのは大変なんですよね。新しい物好きっていうのもありますけど。
さて「アルブミンが低い=栄養不良?」と聞かれたら、あなたはどう答えますか。炎症・体液・肝合成など多因子で動くアルブミンは“栄養そのもの”では測れない──それでも予後の早期警報としては一級品。本稿ではGNRI/NRI-JHの使いどころ、しきい値の現場感、そして介入フローまで、5分でキャッチアップします。
では行きましょう。栄養の世界へようこそ。
1.結論
- アルブミンは栄養の純指標ではない(炎症・体液・合成・喪失の影響が大)。
- それでも予後リスクの“警報”としては強力なので、GNRI/NRI-JH=スクリーニングに使う。
- しきい値は連続的:BCGで**≥4.0安心/3.5–3.8注意/<3.5赤信号/<3.3要警戒**(BCPは概算−0.4)。
- 介入は炎症・体液・摂取・リハの4本柱。Alb単独で効果判定しない(トレンド+複数指標)
アルブミンは栄養の純マーカーではないが、予後の強いリスク指標
albuminの合成は肝臓で行われます。肝臓というのは人体の化学工場とも言われる場所で、常時約500種類もの化学物質を生成していると言われています。
なので、何もalbuminだけを作るのが仕事ではありません。そして透析にはなじみの深いタンパクとして、CRPも話題からは外せません。
肝機能が落ちてくると、そもそもあらゆる物質の合成量は落ちます。勿論albuminもです。また、体内で炎症が遷延しても、albuminの合成量は落ちていきます。そして、その代わりにCRPの合成量が増加します。完璧に反比例するわけではないですが、CRPの上昇は、albuminの低下を招きます。
その為、栄養状態の良不良に拘わらず、炎症やPEWがあるだけでalbuminは上下するのです。
2.なぜ「アルブミン≠栄養」なのか
先にも述べたように、albuminというのは、炎症の遷延により低下を来たします。
これはつまり、陰性急性期タンパクとしての役割を表します。
albuminは様々な要因が作用して、その量を規定します。ではその要因とは何なのか?順番に羅列すると、以下の様な要因が存在します。
- 体液過多の希釈
- 肝合成能
- ダイアライザ/尿/腹膜からの喪失
- アシドーシス等の影響
よく「Albuminが低いと除水出来ないだろ!!」という人間が居ます(弊社の院長もそうです)。
が、これは圧倒的な臨床経験不足からくるものです。
一つ目にあるように、むくむくに浮腫ってしまった患者は、その体液量の多さから、Albuminが希釈されてしまったことにより、低アルブミン血症を呈します。しかし、しっかりとDWまで除水を進めることにより、電解質やタンパクは正常値へ近似する事となります。
また、ここまで浮腫が進行すると、やはり炎症が遷延してしまうため、肝合成能も低下するため、そもそものAlbuminも少なくなってしまい、血管内の水分を保持する能力が低下するために水分の血管外漏出=浮腫へと現れてしまいます。
そして、保存期CKD患者であれば蛋白尿もありますし、透析患者であれば、透析による喪失も考慮しなければなりません。腹水の貯留する患者であれば、腹膜からの漏出もあるため、CARTにより再静注を行うという治療も選択肢にあります。
一言で言うのであれば、「報知器の音量=アルブミン、火元=炎症・希釈・摂取不足」ということです。
3.それでも予後が読める理由:MICS/PEWの合成サイン
透析患者では栄養不良+炎症(MICS/PEW)が転帰を規定
近年では、高齢化する透析患者に対し、どのようにアプローチすればいいか?は世界的なHotWordとなっています。
高齢化すると、どうしても摂食不良や運動不足からの筋力低下など、身体にとっては悪いこと尽くしになってしまいます。
そこで、その身体状況をどのように評価するか?が議論され、策定されたのがPEW(Protein-Energy Wasting)です。これに関しては実は記事にしているので、以下をご参照ください。
MICSはMalnutrition–Inflammation Complex (Syndrome)の略で、これは病態であり、Scoreではありません(余裕があれば、いずれ記事にしますね)。
MICS/PEWの両方共に、栄養不良や筋力低下を示すものであり、分かるようにAlbumin単独で評価している訳ではありません。
決して「Albuminの数値を上げる=予後改善の証明」にはならない点に注意が必要です。
4.GNRIとNRI-JHの立ち位置
さーやってきました栄養指標シリーズのお話です。ここからは見出しにある2つの栄養指標についてプチ解説をしたいと思います。
GNRIについて
まずは手前みそですが、昔の記事をご紹介。
さて、GNRIの計算式は以下の通りです。
$$GNRI=1.489 \times 血清アルブミン(g/dL)+\{41.7 \times \frac{現体重kg}{理想体重kg}\}$$
この計算式にはAlbuminと体重=体格が挿入されています。
簡単に言えば、体格を見ることによりフレイル/サルコペニアの程度を診、そこにAlbuminによる炎症や栄養の程度を勘案し、数値を出す。というプロセスを辿っています。
GNRIの低値は、それだけでCVDリスクを底上げします。
では次。
NRI-JH
いわずもがな、日本人透析患者向けに開発された栄養指標であり、Score高値はリスクの高値を示し、感染症死亡の予後を占います。
ではまず記事の紹介。
NRI-JHでは、個別Scoreによる合算形式を取っています。
では個別項目は何なのか?それは以下の通りです。
- BMI
- Albumin
- sCr
- T-Cho
これが示すことは、体格(BMI)によるフレイル/サルコペニアを確認し、運動量をsCrから推測、T-Choにより摂食状態を診て、Albuminにより炎症の程度を確認します。
上記の記事は、知る人ぞ知る九州大学大学院が主宰するQコホート研究ですが、この研究では従来のNRI-JH3分類を、さらに長期研究し4分類化で層別解析した研究となります。
これにより、確かに高スコア=ハイリスクであり、感染症/CVD発症率が高値という事が判明しました。
5.“どこから危ない?”:しきい値をどう伝えるか
さて、Albumin単独で栄養評価は出来ない。と散々お伝えしてきました。
しかし、「報知器の音量=アルブミン、火元=炎症・希釈・摂取不足」とあるように、Albumin自体は予後を占う事の出来る大切なマーカーであることに違いはありません。
では実際にAlbuminがどの程度だと、予後はどうなるのか?それが以下に示すリストです。
- 緑:≥4.0 g/dL
- 黄:3.5–3.8 g/dL
- 赤:<3.5 g/dL
- 濃赤:<3.2–3.3 g/dL
これはどういうことかを、下の棒グラフで示します。

実臨床でAlbumin値が4.0以上という症例は中々稀ですが、そこをreferenceとして測定した場合、Albuminが3.3以下では、死亡率は2.10倍まで上昇する。と言われています1)
但し、この予後研究には二三注意が必要です。
というのも、まずAlbuminの検査方法にはBCG/BCPの2種類があります。この検査法の注意は、BCGはBCPより高めに出がち(約0.3–0.6 g/dL差)であるという点です。
そのため、まずはご自身の施設がどの方法で検査しているのか。をしっかり把握する必要があります。
次に、日本の平均Albumin濃度が≃3.6mg/dLと言われている点です。確かに上記の研究では4.0をreferenceとしていますが、バリューラインが3.6の日本で、且つ世界的にも生命予後の優れる透析を提供している日本の透析としては、若干の矛盾が生じる可能性があります。その為、施設毎にAlbuminのハザードラインを設定するのが現実的と言えるかもしれません(ちなみに筆者は3.0以下をハザードラインとして治療に当たっています)。
最後に、KDOQI 2020はAlbを**栄養の単独診断ではなく“リスク指標”**として扱うスタンスを明確化。数値だけで栄養評価しないことが前提です。
6.症例提示
症例A:Alb 3.4, CRP 5.2, 体液評価ほぼ適正
→ 炎症優位。感染源検索→治療、栄養は“守り”つつ炎症鎮静を主眼。
症例B:Alb 3.5, CRP 0.2, 肺うっ血所見あり
→ 希釈低アルブミン。DW再設定・除水計画見直し→改善。栄養は咀嚼/嚥下含め確認。
7.よくある誤解と落とし穴(FAQ)
Q. アルブミンを上げた=予後が良くなった?
→ A. 因果は別。例えば炎症が鎮まったや、摂食状況が改善したなどの原因が存在しているはず。その為、プロセスの是正が目的。
Q. プレアルブミンなら栄養が見える?
→ A. 影響因子は少ないが炎症の影響を受ける。補助的に使用することを前提とする。
Q. 週ごとの短期変動は?
→ A. イベントや体液の影響をまず疑う。
Q. 測定法が混在
→ A. 法別に基準を二本立て。切替時は換算表を提示。
8.Take Home Message
アルブミンは栄養の純指標ではない。それでも予後の早期警報として価値がある。
あとがき
いやー今回の記事、めちゃくちゃボリューミーな上にややこしい事この上ない。
これ書くのに(筆が進まず)一週間ほどを要しました。
それでも、この記事が読者の皆様の臨床の一助に成れば幸いと思い、書き上げた次第です。
未だに臨床ではAlbumin栄養信仰が支持を得ている中、どのように啓発活動を行えばいいのか?と考えますが、答えは出ないですね。
さ、というわけで今回はここまでにしたいと思います。
では!あでぃおーす!!ノシ
1)中尾俊之,慢性透析患者の栄養状態,日本透析医会雑誌 Vol.20No.12005







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