栄養障害シリーズ~PEW~

栄養関係

 さてさて、今回はついに最終回となりました栄養障害シリーズ第3弾、「PEW」についてです。

 フレイル・サルコペニアの話題が出た時に欠かすことが出来ないこの話題。

 どのような疾患なのか?はたまた概念なのか??

 その正体に迫ってみようかと思います。

 では行きましょう。栄養障害の世界へようこそ。

PEWって何?

 さて、勉強会などへ行くと、GNRIなどの話題の後に、必ずといって良いほど出てくる「PEW」。

 読み方としては「ペウ」らしいです(こないだ初めて知りました。それまではそのまま読んでたので)。

 まぁそんなのは置いといて。

 さて、PEWって何の略なのか?という所ですが、

Protein-Energy Wasting:タンパクーエネルギー浪費

となります。

定義

 国際腎疾患栄養代謝学会と国際腎臓学会が2008年に提唱した概念で、定義としては体たんぱく(骨格筋・血液中の たんぱく質)やエネルギー源(体脂肪)の貯蔵量が減少して引き起こされる低栄養状態を指します。

 というわけで、PEWは通常の低栄養(たんぱく質・エネルギー低栄養状態:PEMなど)とは質的に異なり、慢性炎症による代謝の亢進をしばしば認めます。

透析患者特有の概念

 このPEWという概念は、透析患者特有の概念として語られる事が多いようで、単独での予後不良因子というより、様々な要因が重なった状態をPEWと呼称します。まさに疾患群、概念としてのポジションです。

 ではそのさまざまな要因とは何か?

 それが、これまでお話してきた「フレイル・サルコペニア」なのです。

前回、前々回の栄養障害シリーズについては下記リンクをご覧ください。

 さて、引用文献1)から拝借した解説図ではありますが、上記の様な代表的な栄養障害が重なり合い、様々な合併症を引き起こすとされているのが栄養障害だということです。

 透析患者に限らず、栄養障害というのは保存期CKDから合併していると言われており、その管理は予後に大変影響すると言われております。

PEWの診断基準

 さて、これまで紹介してきた栄養障害シリーズにも診断基準が存在しました。

 もちろんそれはPEWにも存在します。ではそれはどんなものなのか?それを見ていこうと思います。

 これもまた引用文献1)からの引用です。これには考え方が様々ありまして、もともとの診断基準が欧米向けという事が関係しています。

では一つ一つ見ていきましょう。

生化学的検査

 血清アルブミン<3.8g/dL

というのが第一に据えられています(まぁこれが一番大事という訳ではないでしょうが)。アルブミン値については、正直ほとんどの透析患者が該当するのではないか?と思います。

 血清プレアルブミン<30mg/dL

 これは透析患者のみの適応になっています。確かに透析患者でプレアルブミンを測定する施設はありますが、筆者は経験がありません。実際どうなんでしょうね?

 総コレステロール<100mg/dL

 これも100を切る患者が実際多いな~と去年末の透析統計調査で実感した次第です。つまりは該当するということです。

体格

BMI<23kg/m2

 体格の項で、アジア人では低い とありますが、ではアジア人ではいくらのBMIが感度・特異度が高いのか?という問題が出現します。これには18.5kg/m2がいいのではないか?という意見もあるようですが、定まった下限値はないようです。少なくとも欧米人向けではBMIの下限値は23kg/m2だということです。

意図しない体重減少:3カ月で5%、半年で10%

 これはDWからみてでいいと思われます。DWの減少は予後の悪化に通じていることは周知の事実なので、その点と照らし合わせても異議はないかと思われます。ましてや数値が示された事はとても有意義なのではないでしょうか。

体脂肪率<10%

 これにあてはまる患者はどれくらいいるでしょうか。高齢者であっても巨躯な患者もいれば、若くても細い人もいるので、一概には言えませんね。測ってみないことにはなんともです。

筋肉量

 3カ月で5%以上、6カ月で10%以上

これはBIA法を用いて測定することになるのでしょが、実際のところ、BIA自体が機器が高価などの問題もあり、あまり普及していないのではないでしょか。

前腕筋周囲面積

 これは実際にメジャーを用いて測定することになるのでしょう。機会があればしてみたいところです。

クレアチニン産生速度の低下

 %CGRの事を指します。まさしく透析の指標ですね。

 詳しくは下記の記事で解説していますので、今一度復習がてらご覧ください。

食事摂取量

タンパク質摂取量
:意図的ではなく、0.8g/kg/day未満(透析)(略)が少なくとも2カ月以上持続する

 nPCRから推定可能と思われます。nPCRについても下記の記事で解説していますが、端的に言えば透析不足からくる代謝回転の不足です。なので、タンパク質摂取量を増やすためにはしっかりと透析を回す必要があります。

エネルギー摂取量
:意図的でなく、27Kcal/kg/day未満が少なくとも2カ月以上持続する

 こちらもGNRIを代用する事で可能ではないか?と考えていますが、どうなのでしょう。

 GNRIの解説についてはこちらの記事をご参照ください。

あとがき

 今回は栄養障害シリーズ第3弾としてPEWについて解説させていただきました。

 しっかりとした診断基準のある概念であり、これまでの記事でご紹介させていただいたフレイル・サルコペニアと組み合わせて用いることで、その真価を発揮するものであることもご理解いただけたのではないでしょうか。

 また、%CGRやGNRIを用いることで、診断を補助することもできるので、有用な評価項目であることも再認識できるいい機会かと思いました。

 当初はこの3記事で終了予定でしたが、他にも栄養の指標となるものがあるようなので、いずれはそれについても記事に出来ればと思っております。

 それでは今回はこのへんで。

 ではまた~~

1)加藤 明彦 ; 透析患者のProtein‒energy wasting,サルコペニア,フレイルに関する最近の話題 ; 透析会誌55(6):349~355,2022

2) Chen LK, Woo J, Assantachai P, et al. Asian Working Group for Sarcopenia:2019 consensus update on sarcopenia diagnosis and treatment. J Am Med Dir Assoc 2020;21:300‒7.

Bitly
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