おはこんばんちはなら。
先日、東京は両国にて第29回日本透析アクセス医学会学術集会・総会が開催されました。
大会長は、筆者が尊敬というか大ファンである吉祥寺あさひ病院のバスキュラ―アクセスセンター長 野口智永先生でした。
これは行かない訳にはいかない!というわけで、行ってまいりましたアクセス医学会。
今回の記事は、その学会の振り返りやこれからの透析業界の展望について書いていこうと思います。
さ、では思い出を振り返っていきましょう。
大会長講演:日日是好日
さて、野口先生ファンとしては、一日目の第一講演のこれを聴かずしては始まらない!!!という訳で拝聴して参りました。
とても野口先生らしい、謙虚で、しかし尊敬や慈愛に満ちた内容のスライド達。
そして、大会長としてやりたいことはとことん詰め込んだ!と言われるプログラム。
野口先生の熱い思いがとてもよく伝わる大会長講演でありました。
この講演自体は特別学術的な内容があるものではなく、強いて言えば野口先生の自己紹介的スライドでしたが、それでも十分楽しかったです。
この場を借りてお礼申し上げます。
新ガイドライン時代のCKD-MBD診療とBeyond GL
お次はランチョンセミナーについて。
アクセス医学会だっていうのに、筆者は大好きなCKD-MBDのランチョンセミナーを選択しました。
内容としては、これまでの他の先生がしていたCKD-MBD新ガイドラインはどういったものになるのか。なぜ改訂が必要になるのか。といった当たり障りのない内容のものでした。
ただ、気になることがありまして。
というのも、演者の先生が新GLの説明で出したあのEPISODE試験でのFig.の解釈が、そもそも統計の解釈間違いしてない??という気がしたんです。
あのFig.は、ある時点での血清濃度の患者が、そこから上昇するとHRがどれだけ上昇するか?と説明したものなんですが、なーんかそこの説明が間違っているような気がしてならなかったです。
なので、その内当ブログでもEPISODE Studyなどについてはご紹介できればいいなーと思う次第です。
高齢透析患者の無愁訴透析を目指したIDH対策
この講演は、演者が鈴木一裕先生が担当で、自分としてはとても示唆に富んだ内容の講演でした。
そんでもってとてもボリューミーな内容なので、この講演一つで1記事仕上がるくらいには面白かったです。
従来、Pre-OHDFで唱えられていた「ギブスードナン効果」ですが、これは純粋にPostやHDに比して小分子の拡散が抑えられることによる相対的なNa負荷である。というお話。これにより、従来から言われるPreによる血圧の維持に説明が付く。ということでした。
確かに言われてみればその通りですね。難しい現象名付けなくても、理解すればなんてことないわこりゃ…と思いました。
そしてBV計の活用によるDWの調整方法の説明。
ここまでBV計を理解している医師は、実は少ないのではなかろうか?というのが僕の肌感。
BV計について質問させていただきましたが、講演後にお師匠様?から「ありゃー質問の仕方が悪い!」とお叱りを受けてしまいました。
ただ、長時間透析でのBV計のデータって圧倒的に少ないので、グラフデータが見れたり、意見が聞けるだけでも貴重なので、本当に助かりました。
この場を借りてお礼申し上げます。
最後は無愁訴透析を目指した新しい透析方法として、QDを減らしたHF寄りのOHDFのお話。
ただ残念だったのが、僕の後の質問者が「去年のHDF学会で、この方法は有意差が付かず否定されてましたよね。そこどうなんですか。」と手厳しい質問を飛ばしており、いや~学会は怖いな~と思いました。
それでも、Green Nephrologyという意味では、別に劣勢でないのであればいいのでは?とも思った次第です。
万物流転~バスキュラーアクセスに関するタスクシフト~
お次は臨床工学技士におけるタスクシフト/シェアについて。
といっても、内容は正直これまでされている内容とあまり変わりありません。
が、そこは学会はアクセス医学会ですので、エコー下穿刺の話を中心に展開が進みました。
エコー下穿刺を通じて、我々臨床工学技士が医師や看護師、そして患者、強いては透析医療にどのように貢献できるかを、広い視野で見ていくべきだ。という意見が出ていました。
どこもエコー下穿刺人員を育てるのは大変らしく、それも急務だと言っていました。
リン管理への挑戦~テナパノル(フォゼベル)の有効性と安全性のバランス~
こちらは二日目のランチョンセミナーになります。
演者はあの高名な菊池勘先生。いや~まさか菊池先生とは知らずにランチョンに並んだので、とてもラッキーでした。
内容としては、JRDRを用いた日本の透析の疫学についてと、DOPPSによる欧州やアメリカと日本との生命予後の比較から始まりました。
日本の透析は、すでにDOPPSフェーズ1の時代から、欧米より優れた治療を提供していた。ということが説明されており、この要因に、内シャントの多さが関わっているということでした。
その為、アメリカではグラフトやカテーテル中心の治療から、徐々に内シャントが普及し、予後が伸びていたということでした。ただ、それでも欧米の予後は日本には届かない点が、日本の透析がいかに優れているのかを証明する事にもなっていました。
そして話題はリン管理へ。
現行GLでのJカーブのデータから、EPISODE Studyでのタイムアベレージモデルでの説明により、より厳格にリン管理を行う方が、予後は伸びる。という話でした。
短期的に観た場合、リン値が極端に低値なのは栄養不良による予後の悪化を招きます。しかし、長期的に観た場合、リンの低値(<4.5)は、CVDに代表される様な長期合併症の予防に働くため、やはり、積極的な食事指導、そして新薬であるテナパノル塩酸塩であるフォゼベルを用いた管理を行うべきである。という講演でした。
また、これは各種疾患での血圧管理と同様でありますが、すでにCVDやLEADの既往がある患者に関しては、リンを正常値で維持することは、合併症の更なる進展を予防することが明らかになっています。
合併症の未発症の患者に関しては、リンの値が5.5を下回ると、予後は変わらない。という事でありました。
この事より、患者個々にリンの目標値を設定するという、現行GLから新GLで唱えられているテイラーメイド治療へと舵が取られるべきである。という言説となっています。
アルブミンのみが栄養状態を示すわけではない。ということはこのブログでも散々説いてきました。
しかし、栄養不良や炎症と共にアルブミンが低下することも事実なため、まずは原因検索を行い、最低限アルブミンが3.5以上へ回復することを待ち、その後、リンが高値であれば高リン血症への治療介入を行うべきであるという話がなされました。
逆にアルブミンが4.0以上の患者は、リンを正常値に近づける程予後が良いという事も判明している為、積極的な治療介入の必要性も説かれていました。その為、栄養状態の良い症例が出現した場合には、高タンパク低リンへの食事指導や積極的な治療介入を行い、リンを厳格に管理すべきである。という内容に終始していました。
フォゼベルの服用に関しての話題では、現時点の添付文書では食前服用となっていますが、Naの排泄量、リンの値を診た場合、食前ではNaの排泄量が一番多いのに比して、食後に服用した場合では、Naの排泄量はとても低いものでした。しかし、リンの値はそこまで変わらないということで、服用タイミングと副作用の下痢を考慮した場合、もしかしたら食後の方が有用ではないか。とのことですが、ここは難しい話題だというのが感じました。
ただ、やはりポリファーマシー問題を考えた時、テナパノル塩酸塩は現行のリン吸着剤の錠数を大きく減らす可能性を秘めている為、出来れば採用したいですね。それほどにポリファーマシー問題は喫緊の問題であると感じています。
テナパノル塩酸塩の副作用である下痢に関しては、服用初期に起こりやすく、1~3週間の服用期間の後には、下痢は軽くなることを指導し、上記で述べたように食後や帰宅後など、安心して排便が出来る環境を整えた状態で開始することが推奨されていました。
先にも述べたように、初期には副作用が観測されますが、そこを乗り越えると、ブリストルスケールは5程度で安定するとのことで、リンの低下の威力を勘案すると、とても有効な薬剤です。また、8割以上の患者で、リン吸着剤などが3割以上削減できたという報告は、ポリファーマシー問題に一石を投じるものです。
その為、しっかりと指導し、テナパノル塩酸塩の服用を推奨していきたいですね(当院は院長がテナパノル塩酸塩否定派なため、採用がされていません。院長の力量不足ですね)。
PTHの管理に関しては、やや低めのPTH管理法がリンが低値である。という報告と共に、大腿骨頸部骨折の低下とも大きく関係していることが報告されています。特に高齢者、女性、低BMIの患者において、PTHを240を超えないように管理することで、頸部骨折のリスクが有意に低下した。とも報告されていました。
ただ、筆者のブログでもご紹介しましたが、PTHの極端な低値というのは、実は隠れた低栄養のサインである可能性もあります。
その辺りも勘案して、PTHは240以下、出来れば160辺りを目標として管理すべきでしょう(当院は平均値が229.5 pg/dL , 中央値が129±359.4 pg/dLと大変高値です。やありCalcimimetics未使用が響いています)。
これから発出されるであろうCKD-MBD新ガイドラインには、大いに期待したいと思います。
あとがき
さて、今回は第29回日本透析アクセス医学会学術集会・総会への参加備忘録を執筆させていただきました。
生憎と、筆者はエコー下穿刺はしていない為、エコー下穿刺競技会には参加していません。
入賞された皆様に於かれましては、おめでとうございます。あの会で1位を取るという事は、技術もさることながら、患者への安心感や信頼感を絶対なものにするという効果があると思います。
大会長の野口先生も、この度は学会が大変盛会に終わりましたこと、とても嬉しく思います。2000人越えの会になったことは本当に喜ばしい事です。
今回、片道6時間という大旅程を完遂できた事は、筆者的には奇跡的です。体調不良もなく、学会を楽しめたのは本当に良かったと思います。
それと、ここでプチ募集ですが、野口智永先生のエコー下VAIVTの見学会を実施できることとなりました。2025年10月以降、随時実施できるという事なので、ご興味のある方はXの鈴木さん( @YasuhikoSuzuki)さんへコンタクトをお取りください。日程を組んでくださると思います。
さて、という訳で、あとがきも長くなりましたが、ここら辺で学会備忘録も〆たいと思います。
では皆さま、これからも学会での勉強と自信を胸に、業務に邁進してまいりましょう。
では、あでぃおーす!!



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