ロカルトロール?オキサロール?その違いを解説

血液透析

 おはこんばんちわなら

 さて、今回は血液透析の現場でよく使われる薬剤である「ロカルトロール」と「オキサロール」の違い、使い方について説明していこうと思います。

 内服の薬剤についてもあるので、ちょっとだけそこら辺も混ぜて紹介できればな、と思いますので、どうかお付き合いいただければと思います。

 では行きましょう。

 活性型ビタミンDの世界へようこそ

ロカルトロールの名称紹介

 ロカルトロールの名称ですが

 Roch Calcitriol → Rocaltrol

 となっているようです。一般名はカルシトリオールですね。

効果効能

 ロカルトロール®(カルシトリオール)は直接的な活性型ビタミンD3製剤に当たります。その為、肝臓や腎臓の水酸化を受けることなく、本剤自体がカルシウムの吸収を促進し、腎臓においてカルシウムの再吸収を促進することにより血清カルシウム値を上昇させます。また、破骨細胞、骨芽細胞を再活性化させて、骨代謝を改善し、骨形成を促進します1)

薬物動態に関する資料

 単回投与に関して

 カルシトリオールとして4.0μgを単回経口投与した時、血中濃度は投与後4時間でピーク(101.0pg/mL)に達し、その後徐々に低下して投与後24時間でほぼ投与前値に復しました。

 カルシトリオールとして2.0μgを単回投与した時、カルシトリオールの半減期は16.2時間でした。

 外国人による成績ではありますが、カルシトリオールとして0.5μgを単回経口投与したとき、その血中濃度は投与後4~8時間でピーク(約60pg/mL)に達し、投与後24時間で投与前値に復しました。

 そしてカルシトリオールとして0.5μg/日を7日間連続経口投与したとき、投与期間中の投与後4時間のカルシトリオールの血中濃度はほぼ一定(63~83pg/mL)に保たれ、最終投与後にはほぼ投与前値に復しました。

透析性について

腹膜透析について

 カルシトリオールの除去データはありませんが活性型ビタミンD製剤非投与時の腹膜透析患者において3.7ng/日の1α,25(OH)2Dが腹膜透析中に除去されること、類似薬であるアルファカルシドールド2μg/日4週間投与後の腹膜透析患者において血中プールの6~8%、平均5,150pg/日(2,500~7,100pg/日)の1α,25(OH)2Dが腹膜透析中に除去される(外国人データ)ことから、少量が腹膜透析液中に除去されると推定されます。

血液透析について

 データはやはりありませんが、カルシトリオール注射剤を注入したウシ血液を各種透析膜を用いた透析機5台で透析した時、カルシトリオールの除去は認められなかったことから、透析によって除去されないと推定されます。

慢性腎不全患者について

 HDを受けていない慢性腎不全患者6例にカルシトリオールとして2.0μgを単回経口投与したとき、カルシトリオールの血中濃度は健康成人4例に2.0μgを単回経口投与したときに比べ、最高血中濃度の低下と消失時間の延長が認められました。

透析患者について

 日本人において、透析患者3例にカルシトリオールとして4.0μgを単回経口投与したとき、カルシトリオールの半減期は21.9時間であった。

 注)本剤の慢性腎不全において承認された用法用量は1日0.25~0.75μgを経口投与です。

適応疾患

適応疾患は以下の3つです。

  • 骨粗鬆症
  • 慢性腎不全
  • 副甲状腺機能低下症、その他のビタミンD代謝異常に伴う疾患

 なお、禁忌事項でもありますがカルシトリオールは患者のカルシウム濃度の十分な管理の元に投与量を調節する事とあります。

禁忌事項

 禁忌内容とその理由

 高カルシウム血症又はビタミンD中毒症状を伴う患者の血清カルシウム値を更に上昇させる。

 理由としては、カルシトリオールは小腸でのカルシウム吸収を促進する作用があり、高カルシウム血症又はビタミンD中毒症状を伴う患者には血清カルシウム値を更に上昇させる恐れがあるため投与しないこと。とあります。

カルシウムの吸収や活性型ビタミンDの機序について

 カルシウムの吸収、及び活性型ビタミンD3の役割については下記の記事でも解説しているので、良ければご参照ください。

オキサロールの名称紹介

 次にオキサロール®ですが

 慣用名:22-oxacalcitriol(オキサカルシトール)に由来

 とのことです。一般名はマキサカルシトールです(インタビューフォームから引用)。

効果効能について

 オキサロール注は、直接的なPTH合成・分泌抑制作用、繊維性骨炎及び骨異代謝異常の改善作用の機序により、血清PTH低下効果、高回転を示す骨組織大及び骨マーカーの改善を示します。

 活性型ビタミンD3製剤に比べ、カルシウム上昇を抑えながらPTH低下を来たすということです。

薬物動態について

 健康成人における単回静脈内投与のデータは下記のとおりです。

  • 反復静脈内投与

 健康成人男子5例にマキサカルシトールとして3.3µg/回を1日1回、隔日4回注)静脈内投与し、1回目投与時と4回目投与時の血清中マキサカルシトール濃度推移を検討した結果を示します。 その結果、投与5分後に1回目、4回目それぞれ平均214.6、203.8pg/mLの濃度を示し、その後平均で103.8、99.4分とほぼ同様の半減期(T1/2)で消失し、その他の薬物動態パラメータを1回目と4回目投与で同様な値を示しました。

  • 維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進患者

 維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症を伴う患者14例を対象にオキサロール注10~17.5µg(初回、最終は10µg)を初回投与後と25週目の最終投与後(途中中止、休薬例を除いた11例)の血清中濃度推移を検討しました。 その結果、投与後最初の採血点(5分後)にそれぞれ758.4、557.5pg/mLの濃度を示し、その後それぞれ62.2、39.3分の半減期(T1/2)で消失しました。

透析性について

 実はこの項目に関しては、インタビューフォームには資料がありませんでした。

 透析で多用する薬剤なだけにちょっとだけ不親切だな~とか思ったり。
ただ、ヒトへのタンパク結合率の記載はありまして、以下の通りのようです。

 この血漿タンパク結合率を見る限りは、HDであればあ~おいそれと除去されることはなさそうです。但し、HDFでの高Alb漏出膜などを使う場合には注意が必要かもしれません(まぁそんな患者だと、そもそも状態いいのであまり使わないかもしれませんが)。

適応疾患

 適応疾患は以下の通りです。

  • 維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症

 どうも適応は維持透析下のSHPTのみのようですね。機序からしても妥当と言えば妥当なのかもしれません。

 用法用量の項目に関しては

用法及び用量に関連する注意

7.1 初回は血清インタクト副甲状腺ホルモン(intact-PTH)が500pg/mL未満[あるいは血清高感度副甲状腺ホルモン(HS-PTH)が40,000pg/mL未満]では、本剤を1回5µg、血清intact-PTHが500pg/mL以上(あるいはHS-PTHが40,000pg/mL以上)では、1回10µgから開始する。

7.2 血清intact-PTHが150pg/mL以下に低下した場合は本剤の投与を中止する。[8.2、8.5参照]

オキサロール インタビューフォーム

 とあります。ガイドライン9分割図ではPTHは描かれていないわけですが、どのように薬剤を使えばいいかの目安は描かれています。左下から始まる4マスは図にもある通り活性型ビタミンD3製剤の投与が推奨されています。

重要な基本的注意とその理由

重要な基本的注意

8.1 本剤は従来の経口活性型ビタミンD剤により効果が十分に得られない症例に対して経口活性型ビタミンD剤から切り換えて投与すること。また、本剤により改善、維持された場合には、経口活性型ビタミンD剤への切り換えも考慮すること。

8.2 本剤の投与量については、血清PTHレベル、血清カルシウム及び無機リン値に注意しながら、減量・休薬を考慮すること。[7.2、8.3-8.5、9.1.1、10.2、11.1.1参照]

8.3 本剤は血清カルシウム上昇作用を有するので、本剤投与中、血清カルシウム値を定期的(少なくとも2週に1回)に測定し、血清カルシウム値が11.5mg/dL(5.75mEq/L)を超えないよう投与量を調節し、超えた場合には投与を中止(休薬)すること。 また、目安として血清カルシウム値が11.0mg/dLを超えたときには、さらに測定頻度を高くし(週に1回以上)、減量あるいは中止すること。投与の再開については、血清カルシウム値が11.0mg/dL(5.5mEq/L)未満に回復したことを確認した後に投与量を減じて行うことが望ましい。 低アルブミン血症(血清アルブミン量が4.0g/dL未満)の場合には補正値を指標に用いることが望ましい。[8.2、9.1.1、10.2、11.1.1参照] 補正カルシウム値算出方法: 補正カルシウム値(mg/dL) =血清カルシウム値(mg/dL)-血清アルブミン値(g/dL)+4.0

8.4 慢性腎不全における二次性副甲状腺機能亢進症においては、しばしば高度の高リン血症を呈し、これが増悪因子のひとつとなることがあるので、定期的に血清無機リン値を測定し、そのコントロールを行うこと。[8.2参照]

8.5 本剤の長期投与により血清カルシウム値の上昇頻度が高くなることが認められている。これは、本剤の効果により血清PTHの低下に伴って骨代謝が正常化しやすくなることによると考えられる。[7.2、8.2、9.1.1、10.2、11.1.1参照]

オキサロール インタビューフォーム

 上記5つが基本的な注意事項として挙げられています。

 経口活性型ビタミンD剤との棲み分けをしっかりと区別したというのが第1です。そして既存の経口活性型ビタミンD製剤でコントロールが効くようになった場合には切り替えましょうとなっています。

 また、PTHを抑制することにより骨代謝回転が抑制され、結果として血清カルシウム値が上昇する傾向が認められます(副作用で最も多かったのが高カルシウム血症でした)。

 そのため、基本的注意にもある通り、2週間に1度の頻度でカルシウムとリン値を監視するよう設定されています。ここで注意としては、カルシウムは補正カルシウム値で計算せよ。ということです。透析患者に関しては、大体補正カルシウム値が用いられるのではないでしょうか。

 また、オキサロールの長期投与によって血清PTHが低下し、骨代謝回転が正常化することで骨の緩衝能が低下。血清カルシウム値が上昇しやすくなることもあるため、注意が必要です。

2剤の使い分けについて

 今回はここまでつらつらとロカルトロールとオキサロールについて書いてきたわけですが、実際にはどちらをどのように使い分けるのでしょうか。

 それはずばり、「PTHの下がり具合」です。

 これらビタミンD3製剤は、腸管からのカルシウム吸収を促進し、血中のカルシウムを適正値に維持することで、PTHの過剰分泌を防ぎます。逆を言えば、透析患者は腸管からのカルシウム吸収が出来ないのです。その理由に関しては再度、下記の記事をご確認ください。

 オキサロールは活性型ビタミンD誘導体なため、そもそも不活化したビタミンDが無ければ話になりません。

 その点、ロカルトロールは直接的な活性型ビタミンD製剤であるため、強力に作用します。また、カルシウム値の上昇が緩やかというお墨付きです。確かに副作用では高カルシウム血症が一番多かったのですが、それだけ強力という事なのでしょう。

 その為、PTHの下がり具合に抵抗性を感じたらオキサロールからロカルトロールへ切り替えるという使い方が一般的です。

 ただ、現在はカルシウム受容体作動薬であるパーサビブやウパシタが発売されたため、あまりロカルトロールの出番は無くなったのかもしれません(筆者の施設はカルシトリオールしか使っていないので)。

あとがき

 今回は透析臨床でよく見る注射薬剤であるオキサロール®とロカルトロール®の違いについて述べてみました。

 しかし、上でも述べたように昨今はパーサビブやウパシタ等のカルシウム受容体作動薬がメインとなり、カルシウムを上げる為のサブとして使われることが多くなりつつあるようです。

 では今回はこの辺でお開きにしようかと思います。

 ではまた~~

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