換気モードの説明第4弾ではBIPAP(Biphasic Positive Airway Pressure:二相性陽圧換気)について説明していこうと思います。
他の3つのモードと何が違うのか?どういう場合に用いるのか?
そのあたりを説明していこうと思います。
では換気モードの世界へようこそ
BIPAP(Biphasic Positive Airway Pressure:二相性陽圧換気)ってどんなもの?
BIPAPとは
Biphasic :二相性=2つ(高圧相と低圧相)の
Positive :陽圧を
Airway Pressure:気道に掛ける
という、日本語に直してみれば少し整理できる換気モードです。
CPAP同様、”Vantilation”とは付いていません。換気という日本語は便宜上付けられているものですので注意しましょう。
なお、メーカーによって名称が異なり、ドレーゲルは「BIPAP」、コヴィディエンは「Bi-Level」、MAQUETは「BI-Vent」となっているので注意が必要です。
どんな風に換気を行うのか
高い圧と低い圧を交互に掛ける
”二相性”と名の付くように、BIPAPでは高い圧(高圧相)と低い圧(低圧相)の二つを用いて換気を行います。
臨床をご存知の方や勉強をしている人であれば、「それってマスク換気がそうじゃないの?」と思う方もいるかもしれません。
実際呼び名が違うだけで、二相という意味では同じです。
高圧相でも自発呼吸が可能
本来、人工呼吸器は圧を掛けている=吸気という認識の為、それ以上の圧を掛ける、つまりガスを吸う動作は出来ません。
しかし、BIPAPの場合には、圧を掛けている部分が吸気という訳ではありません。要するに高圧のPEEPなのです。その為、高圧相でも自発呼吸が可能となります。
常に肺胞に圧をかけ続け、虚脱を防ぐ
高圧相の時間が長ければ長いほど、肺胞自体への圧が掛かる時間が長くなり、結果として肺胞の虚脱を防ぐことが出来ます。
これにより、肺胞の再開存(リクルートメント)が可能になります。
波形について
上記でも説明した通り、高圧相でも自発呼吸を行うことが可能となっているのがBIPAPの特徴です。
また、低圧相の場合にはPSを付加した呼吸が可能となります。
これによりガス交換の促進、肺胞の再開存(リクルートメント)が可能となります。
適応は?
BIPAPは基本的に炭酸ガス(CO2)が溜まる呼吸不全(Ⅱ型呼吸不全)に適応があります。
その他にも、
- 呼吸する力が弱い呼吸不全(呼吸するための筋肉や神経に問題が起こり呼吸しづらくなる場合)
脊髄損傷、筋ジストロフィー、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)ギラン・バレー症候群 など - 呼吸に大きな力を要する呼吸不全(酸素を取り込む肺自体に問題が起こり呼吸しづらくなる場合)
肺気腫、塵肺・珪肺、肺結核後遺症、肺炎、肺水腫など
上記のような疾患に適応があります。
メリットとデメリット
では詳しく解説していきましょう。
メリット
- すべての換気が患者の意思で行える
高圧相でも低圧相でも自発呼吸がメインとなるため、吸気開始のタイミング、吸気時間、呼気開始のタイミングを患者自身で決定することが出来ます。
- ファイティングが起きない
また、自発呼吸が主体となるため、患者と人工呼吸器の同調性はかなりよくなり、強制換気がないので、ファイティングは起こらなくなります。
- 最低換気回数は保証される
万が一、自発呼吸が途中で止まってしまった場合にも、基本的にはバックアップ換気が設定できるので最低換気回数は保証されます。
但し、このためにはアプニア(無呼吸)時間設定を適切に行う必要があります。
基本的には25~30秒で設定している施設が多いのではないでしょうか。
デメリット
- 血圧の低下を招く恐れがある
高圧を掛けることにより、心臓を圧迫します。つまり、心拍出量の低下を招くため結果として血圧の低下を招きます。
その為、脳還流の低下などの恐れから頭部挙上を行う場合は注意が必要です。
他にも注意点はいくつかりますが、詳しくはPEEPを説明した記事をご覧ください!!
- 適切なバックアップ換気とアラームの設定が肝要!
BIPAP(+PSV)では自発呼吸があることが前提で換気を行いますが、吸気トリガーにより強制換気が入ります。何らかの原因(入眠や鎮静)で自発呼吸がなくなった場合には、適切なアプニア(apnea:無呼吸)設定やバックアップ換気(PCV)が行われなければなりません。
また、バックアップ換気でも一回換気量や分時換気量の低下にも配慮が必要なため、適切なアラーム設定が肝要となります。
以上がBIPAPモードの概要になります。
あとがき
BIPAPはあまりお目にかかることのない換気モードではあります。
しかし、だからこそいざという時の為に備え、知識を付けておくが必要と思われます。
高圧と低圧のPEEPを掛ける。という考えはあまり慣れないかもしれませんが、しっかり知識を整理して備えましょう。
ではここまでお疲れ様でした!!
ではまた!!
コメント