人工呼吸器からの離脱~SBT・RSBIについて~

人工呼吸器

 

さて、今回は人工呼吸器からの離脱~ウィニング~第2弾としまして、その中で使われるプロトコルであるSBTとRSBIについてご紹介したいと思います。

 これらをどのように活用し、ウィニングへと導くのか。

 それらについて解説出来ればと思います。

 では行きましょう。ウィニングの世界へようこそ。

そもそもウィニングの意味って??

人工呼吸器からの離脱の事を、我々は「ウィニング」と言います。

ですが、そもそもウィニングってどういう意味なんでしょう。実は昔調べたことがあります。

で、意味は何か?と言いますと

Weaning = 乳離れ

なんです。それが転じて離脱となりました。上手い事意訳するなーと感心した思い出があります。

離脱に用いるプロトコル

 さて、前回の記事内で、離脱プロトコルを2つご紹介しました。今回はそれをテーマに執筆していきます。

 RSBIとSBTの運用方法については上記記事をご参照頂き、今回はプロトコルの詳細について述べていきます。

 Rapid Shallow Breathing Index : RSBI

 Rapid Shallow Breathing Index : RSBIとは、そもそも

Rapid :素早い

Shallow :浅い

Breathing :呼吸

Index :指標

と称されるもので、最も正確に人工呼吸器の離脱成功を予測すると言われていたプロトコルになります。

 具体的な方法としては、抜管1分後の呼吸回数を一回換気量(単位:L)で割って求めるものになります。

ex)呼吸数24回、一回換気量320mLの場合

$$RSBI = 24/0.32 = 75$$

 となります。

 RSBI>105の場合、抜管は失敗する可能性が高い。と言われていました。

 しかし、2022年に発表された論文1)では離脱可能性の予測は、最初に報告された程正確ではなかったとされています。

 論文中では、「48件の研究で、10,946名でのRSBI測定が行われた。抜管成功の予測におけるRSBI<105のプール感度は0.83と中程度で、特異度は0.58と低かった。診断オッズ比は5.91であった。RSBI閾値を80未満ないし80-105とした場合も、同様の感度・特異度・オッズ比であった。」とあり、

結論として「RSBIの感度は中程度で特異度は低く、特に抜管成功の事前確率が高い患者では有用でないことが示唆された。他の変数と組み合わせたり、SBT実施の基準の一つとして活用するのが良いだろう。」と締めくくられています。

 尚、RSBIを絡めた人工呼吸器からの離脱成功を予測するのにつかわれるパラメータは次の通りです。

Spontaneous Breathing Trial : SBT 自発呼吸トライアル

 さて、実臨床ではSBT:自発呼吸トライアルはよく聞かれるのではないでしょうか。

 確かに離脱の成功の可否を予測する質の高いエビデンスは存在しません。しかし、ARDSが出すPEEP,FiO2表と同じく、SBTはde fact standardとなっています。

 SBT実施の主な方法は3つあります。

  • Tピースを用いた方法
  • 人工呼吸器を用いた方法
  • ATC® : Automatic Tube Compensation

 となります。

 Tピースに繋ぐ方法では、気管チューブにTピースを繋ぎ、加湿した酸素を与える。

 人工呼吸器を用いた方法では、PS : プレッシャーサポートもPEEPも0cmH2Oに設定して行うのが理想的です。但し、低いPS(5~10cmH2O)やPEEP(5cmH2O)を用いて行う方法もあります。

 また、ATC ®:Automatic Tube Compensation 自動チューブ補正を用いる方法もあります。この方法は、ドレーゲル社の機能であり、気管内チューブによる呼気・吸気抵抗を相殺させる機能です。
 この機能は、吸気・呼気時の抵抗を相殺させることで、呼吸仕事量を軽減し、呼吸満足度を上昇させると言われています2)
 呼吸仕事量の軽減は、呼吸筋の疲労軽減による人工呼吸器からの早期離脱を可能とする可能性があります。ATCは独立したモードではなく、PSVとは別の呼吸器オプションとして使用するのが望ましいでしょう2)

SBTに失敗した場合

 さて、SBTに挑戦したはいいはいいが、失敗してしまった場合はどのようにフォローすればいいのでしょうか。

 多くの場合、失敗の原因として多いのが呼吸筋力と呼吸筋負荷のアンバランスが崩れている事に起因します。

 呼吸筋低下の原因としては

  • 重症疾患による筋力低下
  • 電解質異常
  • 低栄養
  • 原発性神経筋疾患

 があります。

 呼吸筋の過度の負荷がかかる原因としては

  • 高い気道抵抗(ex:COPD)
  • 低いコンプライアンス(ex:肺炎、肺水腫)
  • auto-PEEP
  • 過大な分時換気量

 が挙げられます。

 SBTに失敗した場合には、次に行うまでに(通常は翌日)、SBTに失敗した原因を検索し、治療するように努力すべきなのです。

 医原性の原因によってSBTが失敗することもある。閉塞しかかった気管チューブや人工呼吸器回路の死腔、Tピースで呼吸している時のエアロゾルによる気道抵抗上昇などがその例である。

人工呼吸器離脱のメリット

 重症患者早期離床の効果を支持するエビデンスが最近増えています。

 早期離床によって、呼吸筋を含む骨格筋のコンディションが改善します。また、早期離床じゃせん妄のは発症頻度低下とも相関しているが、これは人工呼吸器からの離脱が早くなるかもしれません。

あとがき

 さて、今回は人工呼吸器離脱プロトコルについて解説してみました。

 前回記事と合わせてお読みいただければ、その理解は深まることと思います。

少し言葉足らずな部分もあるかもしれません。その点に関しては絶賛コメント受付中です。

 まだまだ加筆修正も出来ればと思いますが、今回はこの辺で終わりにしたいと思います。

 ではまた次の記事でお会いしましょう。

 まったね~

1)Vatsal Trivedi, MD , Dipayan Chaudhuri, MD ,Rehman Jinah , MD ,Jan O. Friedrich, MD, PhD ,Bram Rochwerg , MD ,Karen E.A. Burns, MD ;he Usefulness of the Rapid Shallow Breathing Index in Predicting Successful Extubation A Systematic Review and Meta-analysis ;CRITICAL CARE: ORIGINAL RESEARCH| VOLUME 161, ISSUE 1, P97-111,

2)星 邦彦 , 松川 周 ; Automatic Tube CompensationとProportional Pressure Support ; 人工呼吸:19巻2号

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