今回の換気モードの説明第2弾ではSIMV(Synchronized Intermittent Mandatory Ventilation:間歇的同期式強制換気)について説明していこうと思います。
強制換気も入りながら自発呼吸も入る??なんだそりゃ??と思った読者の皆さん。
一緒に学んで臨床に還元できるようにしていきましょう。
では換気モードの世界へようこそ
SIMV(Synchronized Intermittent Mandatory Ventilation:間歇的同期式強制換気)ってどんなもの?
SIMVとは
Synchronized :同期式=患者の自発呼吸(吸気努力)と同じタイミングで換気を行い
Intermittent :間歇的=強制換気以外でも(圧補助の元)、換気を行い
Mandatory Ventilation:強制換気=設定した換気回数の換気を行う
という、日本語に直してみればなるほど?という換気モードです。
どんな風に換気を行うのか
Assist/Controlモードのように振る舞う
上記で説明したように設定した換気回数分は必ず換気を行う為、ガスの送り始め(吸気)は患者の吸気努力(吸気トリガー:自分で吸う力)で始まります。これによりファイティングを防ぐ機能が原理的には備わっています。
但し、呼吸の終わり(呼気)は機械で設定された換気回数を60秒で割った回数に合わせる為、機械が決めます(※これをTime cycleなんて呼んだりもします)。
また、連続して吸気努力を検知した(しゃっくりなどもそう)場合には、最初の吸気努力に対してのみ、強制換気が行われます。
吸気トリガーには2種類がり、”圧トリガー” “フロートリガー”がありますが、ここでは割愛します。
トリガーを鋭敏に(数字を大きく設定)すると、患者の吸気トリガーをよく拾うことになり、結果として換気回数の増大(過換気)になります。
逆に鈍感に(数字を小さく設定)しても、患者の自発呼吸を検知できず、結果として低酸素を来たすかもしれません(実臨床では有り得ないですが・・・)。
自発呼吸に対しては基本何もしない
強制換気と強制換気の間では、基本的に換気動作は行いません。
しかし、それではしんどい。呼吸をしたいのに吸いたいだけ吸う筋力がまだ無いのです。
なので、圧補助換気(PSV)をいれることで、欲しいだけのガスを送って補助してあげるのです。
もちろんそれにはトリガーが重要になるので、トリガー設定は肝要です。
しっかりとトリガーできるだけの設定をしてPSが入るようにしてあげましょう。
適応は?
SIMVモードの適応は、自発呼吸がまだ弱い患者~抜管前となります。
その為、挿管してすぐの患者の場合、A/C-PCV,A/C-VCVが選ばれる場面も少なくありません。
しかし、時間が経つにつれ病態が回復し、呼吸筋の体力も戻れば自発呼吸が出てきます。
そんな患者に対してSIMVは適応を持ちます。
メリットとデメリット
では詳しく解説していきましょう。
メリット
- ファイティングの軽減
基本的には患者の吸気努力に同調して強制換気を行います。また、強制換気と強制換気の間に吸気努力が発生しても、圧補助換気が入ることで呼吸間隔がリセットされるため、強制換気が入ることはありません。
- 最低換気回数は保証される
A/C,CPAPモードが混在したモードである以上、最低換気回数は保証されます。
つまり、自発呼吸が設定換気回数より少ない場合は、残りの回数は全て強制換気になります。その為、最低換気回数は保証されるというわけです。
逆に自発呼吸が設定換気回数より多い場合は、強制換気は回数分、はみ出した分は圧補助が入る自発呼吸となります。
デメリット
- 強制換気は自発呼吸かの判断には慣れが必要。
昔の呼吸器にはグラフィックスモニターがなく、数字のみのメーター式でした。その為、今している換気が強制換気なのか圧補助換気なのかの判断がとても難しかったのです。
今の人工呼吸器は、自発呼吸の場合に画面にマークが出たり、基線の色が変わるなどの工夫がされており、判断が容易になりました。
なのでしっかりとモニターを観察することが必要です。
- 人工呼吸器からの離脱が難しい
近年、様々な研究/試験から、SIMVでは離脱/抜管までの期間が延びることが判明しています。
その原因の一つとして挙げられているのが”人工呼吸器と患者との同調性の低さ”があります。
SIMVは2種類の換気パターンがありますが、患者からしてみればどちらのパターンで換気が行われるか分からない為、結果的に同調性が低くなると言われています。
結果として、SIMVは使用が難しく、慣れた医師や医療従事者でなければ管理が難しくなります。
あとがき
以上がSIMVモードの概要になります。
上述したように、諸外国では使用する呼吸器の換気モードはA/C,CMVとCPAPの2種類だけとなりつつあります。
その理由はSIMVの管理の煩雑さにあります。自発呼吸と強制換気の割合により、呼吸筋の疲労具合が変わってくるため、結局抜管までの時間が伸びてしまう。という機序です。
なので、SIMVは忌避される傾向にあるのです。
それでも、本邦ではまだまだ現役のモードなので、よく理解して使う必要があります。
少しでも、そんな方々の整理の一助になれば幸いです。
それではここまでお疲れ様でした!!
ではまた!!
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