Advance換気モード〜APRV(Airway Pressure Release Ventilation:気道内圧開放換気)とは〜

人工呼吸器

換気モードの説明第4弾ではAPRV(Airway Pressure Release Ventilation:気道内圧開放換気)について説明していこうと思います。

BIPAPモードと何が違うのか?どういう場合に用いるのか?

そのあたりを解説していこうと思います。

では換気モードの世界へようこそ

APRV(Airway Pressure Release Ventilation:気道内圧開放換気)ってどんなもの?

APRVとは

Airway Pressure :気道内圧

Release :解放=圧を解除する

Ventilation:換気

という、日本語に直してみれば少し整理できる換気モードです。

APRVには”Vantilation”という単語が付いています。その点にも注意しましょう。

どんな風に換気を行うのか

高い圧と低い圧を交互に掛けるが・・・

 BIPAP:二相性陽圧換気の変法でもあるAPRV(Airway Pressure Release Ventilation:気道内圧開放換気)ですが、その違いは高圧相にあります。

 高圧相の時間が極端に長く(3~5秒)、低圧相の時間は約1秒程度とこれもまた極端に短いのが特徴です。

高圧相でも自発呼吸が可能

 本来、人工呼吸器は圧を掛けている=吸気という認識の為、それ以上の圧を掛ける、つまりガスを吸う動作は出来ません。

 しかし、APRV(Airway Pressure Release Ventilation:気道内圧開放換気)の場合には、圧を掛けている部分が吸気という訳ではありません。その為、高圧相でも自発呼吸が可能となります。

 吸気と呼べるのは、高圧相から低圧相へ切り替わるその瞬間のフローがそれに当たります。そして、上記でも述べたように、高圧相でも吸気努力を検知すれば自発呼吸が可能なのです。

常に肺胞に圧をかけ続け、虚脱を防ぐ

 高圧相の時間が長ければ長いほど、肺胞自体への圧が掛かる時間が長くなり、結果として肺胞の虚脱を防ぐことが出来ます。これにより、酸素加が出来る面積を増やし、低酸素血症へ対処することが出来ます。

適応は?

 低酸素血症

 動脈血中の酸素分圧が60mmHg以下になることを呼吸不全と定義しています。二酸化炭素分圧の増加を伴わない場合(45mmHg以下)をI型呼吸不全、45mmHgをこえる場合をII型呼吸不全と呼びます。このような呼吸不全が1か月以上続く状態を慢性呼吸不全といいます。

一般社団法人 日本呼吸器学会 
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/h/h-02.html#:~:text=%E5%8B%95%E8%84%88%E8%A1%80%E4%B8%AD%E3%81%AE%E9%85%B8%E7%B4%A0%E5%88%86,%E5%91%BC%E5%90%B8%E4%B8%8D%E5%85%A8%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

上記の中でもI型呼吸不全に用いることが多いでしょう。また、ARDS( Acute Respiratory Distress Syndrome:急性呼吸促拍症候群)においてもその真価を発揮します。

メリットとデメリット

では詳しく解説していきましょう。

メリット

  • 肺胞虚脱の予防

 高圧相では高い気道内圧(Airway Pressure :Paw)を保持することで、肺胞の虚脱を予防することが出来ます。「低圧相で圧を開放するから虚脱するではないか」と思うかもしれませんが、呼気を吐き切る前(基本的には呼気を75%程吐いた時点)に高圧相へ切り替えます。その為、完全に肺胞が虚脱することは防がれます。

  • ファイティングが起きない

 自発呼吸が主体となるため、患者と人工呼吸器の同調性はかなりよくなり、強制換気がないので、ファイティングは起こらなくなります。高圧相ー低圧相切り替わりの場面で自発呼吸が出現した場合にも、自発呼吸を優先するため、自発呼吸の呼気に合わせて低圧相へ切り替わります。

  • 低酸素血症としてのレスキュー

 上記でも説明したように、APRV(Airway Pressure Release Ventilation:気道内圧開放換気)では長時間の高圧(PHigh)を掛けることで肺胞の虚脱を防ぎ、またガス交換が出来る面積を増やす=機能的残気量(Functional Residual Capacity:FRC)の増加により、低酸素血症へのレスキューとして用いることが可能です。

 ARDS( Acute Respiratory Distress Syndrome:急性呼吸促拍症候群)においても、その真価は発揮されます。

デメリット

  • 血圧の低下を招く恐れがある

 高圧を掛けることにより、心臓を圧迫します。つまり、心拍出量の低下や静脈還流量の低下を招くため結果として血圧の低下を招きます。

 その為、脳還流の低下などの恐れから頭部挙上を行う場合は注意が必要です。

  • 適切なバックアップ換気とアラームの設定が肝要!

 BIPAP(+PSV)では自発呼吸があることが前提で換気を行いますが、吸気トリガーにより強制換気が入ります。何らかの原因(入眠や鎮静)で自発呼吸がなくなった場合には、適切なアプニア(apnea:無呼吸)設定やバックアップ換気(PCV)が行われなければなりません。

 また、バックアップ換気でも一回換気量や分時換気量の低下にも配慮が必要なため、適切なアラーム設定が肝要となります。

以上がAPRVモードの概要になります。

あとがき

今回はAPRVに関しての解説をしてきました。

BIPAPの変法として用いられ、ARDSのレスキューとしての役割も持ちますが、使われる場面がとても限られる為になかなか実践の機会がないのがAPRVです。しかし、これさえも使いこなせれば、ある意味人工呼吸器のステップアップ間違いなしです!!

それではお疲れ様でした!!

ではまた!!

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