おはこんばんちわなら~
今回は珍しく薬剤の紹介です。
しかもド定番ど真ん中の血圧に関する薬剤、リズミック®(アメジニウムメチル硫酸塩)とドプス®(ドロキシドパ)についてです。
よく血圧を上げるお薬、なんて言って患者に飲ませることのある薬剤ですが、本当にその使い方であってるのか、疑問に思ったことは無いですか?
それでは行きましょう。いざ薬剤の世界へ。
リズミック(Risumic)の紹介
名称の由来
”rhythm”と”music”の合成語。音楽のリズムのようにrithmical(軽やかな、調子のよい)ということから朝起き不良、めまい、たちくらみなどの低血圧に伴う多彩な愁訴を改善して、日常生活をリズミカルに過ごすことが出来るという意味合いを込めている。らしいです。
あーなるほど。とクスッとしました。
薬効分類
リズミックは交感神経刺激剤に分類される低血圧症治療剤で、交感神経活動を活発にし、血圧を上げることで低血圧症によるふらつき、めまいなどの症状を改善する薬剤です。
詳細としては、ノルアドレナリンと競合して末梢神経終末に取り込まれ、ノルアドレナリンの再取り込みを抑制すると同時に、神経終末においてノルアドレナリンの不活化を抑制し、間接的に交感神経機能を亢進させます。α1受容体刺激作用、β1受容体刺激作用により、血管系・心臓系の両方に作用し、血圧を上昇させます。
これにより、心臓の心拍数増加と血管収縮作用により血圧を上昇させ、透析施行時の血圧低下を改善します。
薬物動態について
透析患者への適応は1回10mgとなっています。
しかし、インタビューフォームでは20mgでの薬物動態で確認された項目が載っています。それによると
非透析日:Tmax=4.4±0.7h , Cmax=82.9±4.9ng/mL , t1/2=25,9±3.9h
透析日 :Tmax=3.6±0.7h , Cmax=70.7±5.7ng/mL , t1/2=19.2±2.7h
※透析日は透析直前投与
となっています。Tmaxは内服後に最も血中濃度が高くなる時間を示します。また、Cmaxは血中での最高濃度を、T1/2は血中濃度が最も高くなった時間からの半減期を示しています。
また、透析施行日におけるCmaxおよびAUCは透析(投与後5時間透析実施)によって、透析未実施日よりも14%,20%低下したが、健常人よりも高い値であったとあります。
本剤の効能・効果
本態性低血圧症、起立性低血圧、透析施行時の血圧低下の改善
以上の3つが適応症例となります。
透析性について
血漿タンパク結合率は20.7%となっています(健康成人、10mg投与2時間後、限外ろ過法)。
排泄は尿中なので、腎臓という事になります。
透析患者にアメジニウムメチル硫酸塩10mgを1回経口投与し、経時的に血漿中及び透析液中未変化体濃度を測定した。ダイアライザー通過後の血漿中未変化体濃度は、通過前の約1/2であり、透析によって一部が除去され、透析液への移行がみられたとのこと。
ということで、ほとんどが透析されます。それでも効果を発揮するのだから凄いです。
ドプス(DOPS)の紹介
名称の由来
(-)-threo-3-(3,4-dihydroxyphenyl)-L-serineよりDOPSとした。とインタビューフォームには書いておりました。
へー・・・・って感じでした。
薬効分類
ドプス®(ドロキシドパ)はノルアドレナリン作動性神経機能改善剤としてノルアドレナリン前駆物質である芳香族L-アミノ酸脱炭素酵素により、直接1-ノルアドレナリンに変換されます。
透析患者ではノルアドレナリンに変換され、補充、分泌を介して、末梢の交感神経機能を賦活することで血圧、及び脳血流の低下、運動抑制を改善すると考えられています。
が、ここで驚きなのが、臨床試験における血圧低下抑制効果については明確ではない事です。
機序が良く分かっていないんですね~。
薬物動態について
血液透析患者5例にドプスカプセル1回300mgを透析開始1時間前に経口投与した場合、未変化体の血漿中濃度は投与6時間後に最高値(1.43μg/mL)を示し、投与36時間後に定量限界以下(0.05μg/mL)となった。また、血漿中ノルアドレナリン濃度は投与3時間以降、投与前値に対し有意な高値を認め、以後投与6〜36時間まで持続した。と添付文書にはあります。
本剤の効能・効果
1)パーキンソン病(Yahr重症度ステージⅢ)におけるすくみ足、たちくらみの改善
2)下記疾患における起立性低血圧、失神、たちくらみの改善
シャイドレーガー症候群、家族性アミロイドポリニューロパチー
3)起立性低血圧を伴う血液透析患者における下記症状の改善
めまい・ふらつき・たちくらみ、倦怠感、脱力感
まぁ当然といえば当然ですが、透析以外にも適応があります。
血液透析患者の場合、透析終了後の起立時に収縮期血圧が15mmHg以上低下する患者への適用であること。なお、本薬の作用機序は不明であり、治療後の血圧低下の減少度は個体内変動を超えるものではない。と注意事項にあります。
透析性について
血液透析患者にドプスカプセル300mgを1回経口投与した場合、血液回路の動静脈側濃度差から算出した未変化体及びノルアドレナリンのダイアリザンスはクレアチニンとほぼ同程度であった。
つまり、結構な割合で透析によって除去されるということですね。
【適切】な使いどころ
リズミック®(アメジニウムメチル硫酸塩)については?
薬物動態の欄をお読みいただければわかるように、おおよそ3時間から4時間後に血中濃度はピークを迎えます。つまり、終わりに向けて血圧を上げたい方に内服して頂くのが正しいわけですね。
上記はインタビューフォーム内にある図表になります。
図にもある通り、透析施行日における血漿濃度は約2時間でほぼピーク値を示します。なので、もし透析開始2時間後から下がるのが日常茶飯事の患者であれば、透析開始時に内服してもらう。という使い方が正しいのでしょう。
血圧が下がっても、そこから内服したのでは間に合いません。そこをよく考慮した上で使用してください。
ドプス®(ドロキシドパ)については?
本剤の効能・効果にある通り、本来ドプスの適応は起立性低血圧を伴う透析患者です。
こちらの図もドプスのインタビューフォームから引用したものです。
血漿中ドロキシドパ濃度は透析施行日でおおよそ6時間でピークを迎えているようです。5時間目、及び8時間目の濃度もピーク値から見ると1段階下がるもののそれなりの濃度を維持しています。
投与後、24時間ではわずかに検出されるのみ。36時間では定量限界(0.05μg/mL)以下となったようです。
さて、問題となるのは芳香族L-アミノ酸脱炭素酵素が変換されたノルアドレナリンがいつまで持続するのかですが、投与後3時間以降、投与前値に対し有意な高値を認め、以後投与6~36時間まで持続するようです。
つまり3時間透析の患者であれば開始時、4時間透析の患者であれば1時間後、という内服の仕方が正しいのではないでしょうか。
あくまでも先述したように、ドプス®は起立性低血圧の予防に用いる薬剤であり、血圧上昇効果はありません。有害事象として2.0%の報告があるので、本来の作用を狙ったものではないのです。
なので、筆者はドプス®を使う場合、「血圧が下がらないようにするお薬ですよ」と説明するようにしています。正直このように説明している透析医療従事者は見たことがありません。正しいかどうかはさておきですが……
詳細な作用機序
リズミック®について
薬効の項でも先述したように、ノルアドレナリンと競合して末梢神経終末に取り込まれ、ノルアドレナリンの再取り込みを抑制すると同時に、神経終末においてノルアドレナリンの不活化を抑制し、間接的に交感神経機能を亢進させます。α1受容体刺激作用、β1受容体刺激作用により、血管系・心臓系の両方に作用し、血圧を上昇させます。
しかし、透析において血圧の低下は付き物です。
血圧の低下と共に、リズミック®により血圧を上昇させようとする力が働くので、結局は拮抗し、血圧の維持に寄与します。上がりも下がりもしない。と筆者は考えます。
その為、良く分かっていない患者には、服用時に「血圧を下げないようにするお薬だよ~」とか「血圧のお薬です~」と言うようにしています。
ドプス®について
ドプス®の項でも説明した通り、芳香族L-アミノ酸脱炭素酵素がノルアドレナリンに変換されることで、血管内へノルアドレナリンの供給量を増やすことで血圧低下を予防します。
さて、ではノルアドレナリンとは何か?α1受容体とは何か?β1受容体とは何か?になりますね。
ノルアドレナリンとは
ノルアドレナリン(アメリカではノルエピネフリン)はノルアドレナリン作動性ニューロンから放出される神経伝達物質であり、また副腎から血液へ放出されるホルモンとしての役割を持ちます。
ノルアドレナリン/アドレナリンは共にアドレナリン受容体に結合し活性化します。この受容体にはαおよびβの分類があり、さらに細分化するとα1A-α1D , α2A-α2C , β1-β3から構成されています。
ホルモンとしてのノルアドレナリンは、アドレナリンと共に末梢神経系へ作用し、心拍数を増加させたり血管を収縮する方向へ亢進します。ノルアドレナリンはα1A,B,D , α2A,B,C , β1へ結合します。
α受容体とは
α1A,B,D は平滑筋の収縮を亢進させることが出来ます。動脈の解剖として、動脈壁は内皮細胞と結合組織からなる内膜、平滑筋と弾性線維からなる中膜、疎性結合組織からなる外膜の3層構造です。ターゲットである中膜の平滑筋へノルアドレナリンは作用し、α1A,B,Dへ結合することで 細胞内Caを上昇させ、収縮させることができます。※尚、α1C受容体と呼ばれるものは存在しない。
α2A,B,Cアドレナリン受容体はノルアドレナリン軸索終末に存在し、ノルアドレナリンの放出を抑制し、心筋弛緩や血小板活性化に作用します。
β受容体とは
β1 の主な作用は心筋収縮の亢進となります。詳細は相当ややこしいので割愛…したいのですが、Gs:アデニル酸シクラーゼの活性化を介したcAMPの活性化、PKA活性化によりL型電位依存性カルシウムチャンネルや、筋小胞体リアノジン受容体がリン酸化されて活性化し、細胞内のカルシウム濃度が上昇、結果的に心筋の興奮性を亢進することになります。
β2 は平滑筋を弛緩させる方向へ作用し、β3は脂肪代謝亢進、膀胱排尿筋弛緩へ作用する。
しかしながら、ノルアドレナリンはβ2 , β3には結合しない。
あとがき
さてさて、今回は思いの外長い記事になってしまいましたね。
纏まっているのかどうなのか……??
自分用の備忘録としてはいいかな~とか思ってますが、読む方はどうでしょうか??
良ければコメント等いただければ対応いたします。
血圧関係の薬で、透析最強の昇圧剤となればエホチールです。
なので、次回はエホチール単品で何か記事に出来ればいいかな~とか思っています。
今回はこの辺で終わりにしたいと思います。
ではまた~~
参考文献
1)医薬品インタビューフォーム、リズミック®錠100mg<アメジニウムメチル硫酸塩錠>、2022年4月改訂(第23版)
2)医薬品インタビューフォーム、ドプス®OD錠 100mg ドプス®OD錠200mg 日本薬局方ドロキシドパ細粒 ドプス®細粒20%、2022年4月改訂(第13版)
3)ノルアドレナリン , https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%83%8E%E3%83%AB%E3%82%A2%E3%83%89%E3%83%AC%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%B3
4)上野 智敏 , 乳原 善文 , ~至適透析を理解する~ 血液透析処方ロジック、中外医学社
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