SIMVとS/Tモードの違い

人工呼吸器

 おはこんばんちわなら

 さて、今回は呼吸器のモードについて。

 ある読者から、「SIMVとS/Tモードが同じように書いている」という指摘を受けました。

 ふむ。確かに同じように書いてあるかもしれない。けどそもそも違うのか??という事で、今回は振り返りも兼ねて記事を執筆することにしました。あ、その指摘を受けた記事は以下の記事です。

 ではさっそく、本題のモードの世界へ行きましょう。

SIMVモードの設定項目について

さて、SIMVについても一応記事にはしています。

 で、具体的な設定項目はPC-SIMV , VC-SIMVともに

  • 一回換気量
  • 吸気圧
  • 換気回数
  • 吸気時間(または吸気流量)
  • PS : プレッシャーサポート
  • PEEP
  • 酸素濃度

 となります。では続きまして

S/Tモードの設定項目

 お次はNPPVにおけるS/Tモードの設定項目について。

 こちらの設定項目は

  • IPAP
  • EPAP
  • 吸気時間
  • 換気回数
  • 吸気立ち上がり
  • 酸素濃度

 となります。この設定項目は、今後本邦で主流になるであろうNKV-330を参考にしています。

両者の共通点と差異について

共通項

 まず共通する使用方法として、このモードは自発呼吸もある患者に用いられるということです。

 但し、100%自発呼吸ということではなく、部分的に呼吸を補助するというのが両者に共通する設計思想です。

 SIMVの設定項目にあるプレッシャーサポートは、S/TモードではIPAPとEPAPの差圧ということなります。但し、厳密にはSモードとしてトリガーした場合の話です。

 また、PC-SIMVでの吸気圧に関しても、S/TモードではIPAPが実質それを担います。

 IPAPがPSとして機能するのは、あくまでも自発呼吸があり、その吸気努力をトリガーした時のみなのです。EPAPはPEEPであることに異論はありませんが、前者の解釈はどうでしょうか。少なくとも筆者はこのように理解しています。

 吸気時間の設定に関しては、これは両モード共に強制換気時のみ有効であります。

一定時間内に自発呼吸が無い場合、設定されたIPAPおよび呼吸時間(Ti)により強制換気を行い、設定された呼吸回数(RR)を下回らないように動作します。

NKV-330 取扱説明書 基本編 p.16-40

上記引用はNKV-330 の取扱説明書のS/Tモードの文章です。このように、吸気時間は強制換気時のみ有効であり、自発呼吸の際には全てのサイクルを患者自身に委ねることで、完結することになります。

 酸素濃度はどのモード・換気様式でも共通です。

差異

 決定的に違う点は、侵襲的か非侵襲的かなのかです。

 侵襲的人工呼吸管理に用いられるSIMVモードは、トリガーを正確にリークなくすることが出来ますが、非侵襲的呼吸管理では、リークがあることが前提なため、IPPVに比べるとトリガーが劣る場合があるという弱点が考えられます。

 そのため、NPPVについてはマスクフィッティングがとても重要になってきます。基本的には、マスクリークは30Lを下回るよう装着するのが理想的と言われています(エビデンスは不明)。

 SIMVはNPPVでも搭載されている機種は、あります。VELAです。ただし、VELAではNPPVというよりNIVとなります。本来はIPPV機種ですからね。

SIMVで気を付けるべき点・S/Tモードで気を付けるべき点

 さて、これまで共通点と差異を述べてきましたが、「ほとんど同じじゃないか」と思った読者の方も多いのではないでしょうか。

 実際、筆者もちょっと考えてしまいました。ん~何が違うんだ…と。で、そこでX(旧Twitter)の叡智をお借りすることにしました。

 で、あーそりゃそうだわ。となったので解説しますね。

換気動作の違い

 SIMVとS/Tモードも、設定項目としての換気回数はあります。しかし、両者には決定的な違いがあります。

 それは呼吸回数の担保の方法です。

 SIMVの場合、設定した呼吸回数分を必ず強制換気として送気します。その際、ファイティングを起こさないように、下記で説明するトリガーウィンドウ(アシストウィンドウ)が設けられます。しかし、そのウィンドウが開いている時間内に自発呼吸が無い時、強制換気としてPSを伴って換気が行われます。

 しかし、S/Tモードでは強制換気は行われません。では換気回数を設定する意味は何なのか?それはバックアップ換気の意味合いが強いです。

 普段Sponttaneous modeとしてS/Tモードは動いています。これは自発呼吸モードということです。しかし、吸気時間(Ti)を1秒、換気回数を12回/分として設定した場合、5秒に1回換気を行うということです。5秒間の間に自発呼吸を検知(トリガー)出来なければ、そこでバックアップ換気としてのTimed modeが働きます。しかし、吸気圧や一回換気量が決まっている訳ではありません。あくまでプレッシャーサポートとしての換気がされるというわけです。

 というわけで、S/Tモードでは常にウィンドウが開いているような状態で、強制換気は入りません。逆を言えば、常に自発換気をトリガーするのでS/Tモードでは過換気に注意が必要なわけです。

トリガーウィンドの違い

 さて、SIMVとS/Tモードでのアシストウィンドウの違いですが、ちょろっとお話しましたが、設定例がTi 1s、換気回数12回で換気を行った場合、アシストウィンドウが常に開いているのがS/Tモード、5秒間の内、数秒だけウィンドウが開いているのがSIMVだということです。

 基本的にペースメーカー同様、一回換気が行われると、そこでTime cycleはリセットされます。しかし、SIMVでは再度説明しますが、決まった回数の強制換気が行われます。これはアシストウィンドウに引っかかる引っかからないは関係ありません。しかしS/Tモードではあくまでバックアップ換気なので、一分間に設定回数の換気が行われていれば、強制換気を行うことはありません。あくまでトリガーに合わせてPSでガスを送気する動作をするのみです。

 以上がSIMVとS/Tモードの共通点と違いということになります。

あとがき

 さてさて、今回は基本に忠実に。しかし少し応用的な部分をお話させていただきました。

 自身、呼吸器界隈を離れて、執筆時点で4,5年が経過しています。いや~なんか細かい部分忘れてるもんですね。

 言われてみれば、そりゃそうやん!!!とか思いました。テーマをくれた読者には感謝ですね。

 こんな感じで、読者からの疑問質問も記事に出来ればなーと思うので、興味のある方はどしどしご連絡ください。

 では今回はこの辺で。

 ばいちゃ~

 

 

コメント

  1. 長野ななっと より:

    STモードは、気切挿管下でも設定する事がありますので、NPPV専用モードの様な書き方は良くないと思います。

    STモードの際はTiを長めに。

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