人工呼吸器からの離脱~ウィニングについて~Part1

人工呼吸器

 さてさて、当ブログは色々なことを書くブログですが、今回は人工呼吸器について書いてみようと思います。

 人工呼吸器も、挿管したはいいけれど、どう管理すればいいの?いつ離脱すればいいの?どう離脱すればいいの?と困りごとは多岐に及びます。

 今回はそんな中でもウィニングー人工呼吸器からの離脱ーに焦点を当てて解説出来ればと思います。

 ただ医師任せに離脱できればいいや。となっていませんか??

 そうではなく、普段からの管理が大事だということを念頭に置いてお話しできればと思います。

 では行きましょう。ウィニングの世界へようこそ。

まずは離脱可能かどうかを評価する

 さて、やみくもに人工呼吸器を離脱しようとしても、それはとても危険であり、且つ無謀です。

 では離脱可能かどうかをどのように評価すればいいのでしょうか?それは下記の4項目によります。

  • 人工呼吸器が必要になった原因が改善している
  • ガス交換が十分である
  • 自発呼吸が可能である
  • 血行動態が安定している

 まぁ当然と言えば当然でありますが、しかしこれらを改善するまでの道のりは意外に長いものです。

 では一つ一つ解説していきましょう。

人工呼吸器が必要になった原因が改善している

 言わずもがな。挿管、もしくはマスクを装着する原因になった病態が改善している事が必須条件になります。

 但し、呼吸不全は呼吸不全単発が改善するのではなく、その他にも発熱や栄養状態、電解質バランスが改善している事も必要です。その他の臓器不全があることもウィニングには不利に働き、再挿管などの事態を引き起こすのでしっかりと治療を行ってからウィニングをしましょう。

ガス交換が十分である

 上記と同様で、ガス交換能が十分でない場合も離脱は困難となります。ではその指標とはどういったものでしょうか?一般的には以下の様に評価されているようです。

  • FiO2≦0.5
  • 呼気終末陽圧(PEEP)≦8cmH2O
  • 動脈血酸素分圧(PaO2)>60mmHg
  • pH>7.25
  • 死腔/一回換気量比(VD/VT)≦60%
  • 分時換気量(MV)≦12L/分

 pHを高く保つために、多い分時換気量が必要になる場合など、ガス交換能がまだ不十分な場合には人工呼吸器離脱に成功する可能性は必然的に低くなります。

 逆に上記の基準を満たし、安定した状態でCPAPなどが行えているのであれば離脱の成功は高くなります。

自発呼吸が可能である

 さて、人工呼吸は厳密には挿管して行う、マスクを装着して行います(鉄の肺は置いといて)。

 ということは、空気を送ってー陽圧にして換気を行うということです。

 ですが、我々が自然に行う換気ー呼吸ーというのは陰圧で行われるものです。

 なので、離脱に際してはどれだけ自然な状態に近づけた状態で換気が行えるか。を診ることになります。

 自然な状態とはつまり、自発呼吸が出来るかどうかにかかっています。

 では自発呼吸の具合をどのように評価するかですが、そのプロトコルには自発覚醒トライアル(Spontaneous Awakening Trial : SAT)があります。

自発覚醒トライアル(Spontaneous Awakening Trial : SAT)とは

 人工呼吸を行うというのは鎮静:Sedation を掛けるという事とほぼ同義です。その為、鎮静を浅くする、もしくは中止をして覚醒具合を見るトライアルがこの自発覚醒トライアル(Spontaneous Awakening Trial : SAT)です。ではこのプロトコルが具体的にどのようなものなのかを見ていきましょう。

 まず毎日のスクリーニングとして以下の事を行います

  • 活動性の痙攣、またはアルコール離脱に対して鎮静薬の静注投与が行われていない
  • 興奮が続くという理由で鎮静薬が増量されていない
  • 筋弛緩薬が投与されていない
  • 24時間以内に急性の心筋虚血を起こした徴候はない
  • 頭蓋内圧亢進の徴候はない

 これらスクリーニングに問題がなければSATを行います。

 SATの手順としては以下の通りです。

  • 全ての鎮静・鎮痛薬を最大4時間まで中止する
  • ※但し、疼痛に対して鎮痛が必要な場合はこの限りではありません
  • 呼びかけに対して開眼する

以上2項目が上手くいけば、SATは成功となります。

逆に以下の様な症状・徴候が現れた場合はSATが失敗したことです。

  • 持続する不安・興奮・疼痛
  • 5分以上にわたって呼吸数>35回/分
  • 5分以上にわたってSpO2<88%
  • 急性の不整脈
  • 頻脈・徐脈・呼吸補助筋の使用、胸腹奇異呼吸、冷汗、著明な呼吸困難のような呼吸促拍の徴候のうち2つ以上

 SATに失敗した場合には、鎮静薬を中止前の半量で再開し、患者が快適になるように容量を調整する。

鎮静:Sedationに関する注意

 鎮静薬の選択も人工呼吸器の離脱には関係する可能性がある。

 ベンゾジアゼピンの投与はせん妄の発症と相関があり(単剤で2.4倍、複数内服で約5倍のリスク上昇)、せん妄は人工呼吸器装着期間の延長と相関がある。

 一方、デクスメデトミジンを使用すると、ベンゾジアゼピンを使用した場合と比較して人工呼吸器装着期間を短縮し、せん妄の頻度は減少します。

離脱に対する評価方法

 離脱離脱とはいいますが、はてどのように人工呼吸器から離脱すればいいのでしょうか。

 これまで様々なTrialが組まれては失敗、もしくは成功に近い何かとなって散っていきました。

 その中で数少ない、ある程度のコンセンサスを得られた方法があります。それが下記に紹介するプロトコルであります。

  • Spontaneous Breathing Trial : SBT 自発呼吸トライアル
  • Rapid Shallow Breathing Index : RSBI

 この二つは人工呼吸器からの離脱予測という観点からはある程度推奨されたプロトコルになります。

 ただし、気を付けなければならないのは、これらが質の高いエビデンスという訳でないという事です。

 そのことに気を付けて上記プロトコルを運用する必要があります。

抜管について

 さて、上記プロトコルや、様々な職種によるDiscussionを経て、患者は人工呼吸器からのウィニングを達成するわけですが、その最後が「抜管」になります。

 具体的には、30~120分のSBTに成功すれば、抜管を考慮します。

 一般的に再挿管となった場合、合併症率も死亡率も上昇してしまいます。また、抜管できる患者を長期にわたって挿管しているのも予後を悪化させてしまうため、早期の抜管が推奨されます。

 抜管に際し、以下の簡単な動作が出来ない場合、他にも2項目の評価が規定から外れるようであれば、再挿管のリスクが高くなると報告されています。

  • 開眼する
  • 追視する
  • 手を握る
  • 下を突き出す
  • 咳嗽の最大流量が60L/分以下
  • 気道内分泌物が2.5mL/時以上

 抜管後に注意が必要なのは、上気道閉塞です。上気道の腫脹が疑われる場合には、抜管前の短期間ステロイドで治療する適応となり、抜管する際には再挿管に慣れたDr.等がベッドサイドで待機するようにしましょう。

抜管後の観察・管理について

 抜管後、再挿管リスクの高い患者に際しての対応は、現在ではHFNCかNPPVかで適応が分かれるところがあります。

 これを書いてて思い出しました。当ブログ、呼吸生理について何も執筆していない事を・・・。

 なので、近いうちに機会があれば呼吸生理について執筆したいと思います。

 さて、話が脱線してしまいましたが、HFNCかNPPV、どちらをハイリスク患者に用いればいいのでしょう。

 当ブログではどちらも記事として執筆はしています。

 

 上記ページで各適応については述べています。

 また、HFNCに関してはROX Indexについても紹介していますので、詳細は上記をご覧ください。

 ROX Indexとは、簡単にいえば再挿管するか、それともNPPVに変更か、はたまたHFNCを継続するかの情報を提供する指標です。

$$ROX Index=S_PO_2/F_IO_2/RR$$

$$ROX Index ≧4.88$$

 RI≧4.88で再挿管のリスクは低くなるので、そのままHFNCを継続しても問題なしと評価されるわけです。

 但し、ガス交換能が落ちている場合にはNPPVを考慮すべきでしょう。

 このように、各々のバックグラウンドを考慮して酸素慮法や人工呼吸器を選択すべきでしょう。

あとがき

 さてさて、今回は色々と端折った部分が多い記事となってしまいました。

 この補遺的記事に関しては、いずれ執筆できればと思いますのでご了承ください。

 それにしても、随分筆者の記事にしてはボリューミーな記事になってしまいました。読んでくれる読者がどれくらいいるか…

 とりあえず、ウィニングに関しての第一弾記事はここらへんで〆たいと思います。

 ここまでお読みいただきありがとうございました。

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