さて、筆者の施設は院長方針で研究発表や学会参加を禁止されています。
そして後輩技士に関しては「発表なんかして意味あるんすか?(笑)」とバカにしてくる始末です。
筆者の恩師は「医療従事者たるもの科学者たれ」という言葉を、卒業間近の時に残してくれたことを、今でも覚えています。
筆者も、その言葉を胸に、日々業務に勤しんでいる訳です。
が、研究発表をすることは果たして独りよがりなのか。それとも公共の福祉に資する事なのか。
今回はそれを研究した論文をご紹介しようと思います。
では行きましょう。学術の世界へようこそ。
まず結論:発表している病院のほうが“死亡が少ない”傾向
この研究が扱ったのは、””急性心筋梗塞(AMI)””という、心臓の血管が詰まって起きる重い病気です。対象はなんと 56,923人、384病院。期間は2014年から2018年まで。
研究者が注目したのはシンプルで、
- その年に、病院の医師が循環器の大きな学会(日本循環器学会の年次集会)で
1回以上発表している病院か?
という点です。
結果はこうでした。
- 発表なしの病院:院内死亡 10.9%
- 発表ありの病院:院内死亡 7.7%
数字だけ見ると、発表ありの病院のほうが、明らかに死亡率が低い。
もちろん「発表してるから助かった!」と言い切るのは早いです。病院には規模や体制、患者さんの重症度など色んな違いがあります。そこで研究者は、それらを統計的に調整しても同じ傾向が出るかを確かめました。
“研究する病院”は、何が違うのか?
ここがこの論文の面白いところです。
研究者は「発表している病院は、治療が“ガイドライン通り”に行われているのでは?」と考えました。
心筋梗梗塞では、退院後の再発や死亡を減らすために、推奨される薬があります(抗血小板薬、β遮断薬、スタチンなど)。この研究では、そうした主要な治療が入院中に行われている割合を比べています。
すると、発表ありの病院のほうが、こうした推奨治療を受けている割合が高い。
たとえばスタチンは、発表なし病院で77.1%、発表あり病院で84.3%でした。07a29988-1119-4362-b5f7-5261484…
つまり――
発表している病院は、「エビデンスに沿った治療(EBP)」が、より実装されている可能性がある
というわけです。
さらに踏み込む:差を生んでいるのは“発表”ではなく“EBP”?
研究者はもう一歩踏み込みます。
統計モデルに、患者さん側の条件(年齢、重症度など)や病院側の条件(病床数など)を順に入れていくと、死亡率の差は少しずつ小さくなります。
そして最後に、EBP(推奨治療が実施されているか)を“媒介”として入れる解析をすると、
発表あり・なしの差が ほぼ消える(OR 1.00) という結果になりました。
これが意味するのは、
- 発表あり病院のほうが死亡が低い
- でもその背景には「EBPが回っている」ことがありそう
- “発表そのもの”というより、“発表するような病院文化・仕組み”が診療に効いているのかもしれない
というストーリーです。
学会発表は、もしかすると「病院の学びのエンジンが回っている証拠」なのかもしれません。
ただし注意:これは「因果」を証明したわけではない
ここは大事なので、釘を刺します。
この研究は観察研究です。つまり、
- 研究熱心な病院は、もともと人材が厚い
- ICUやカテーテル室など設備が整っている
- 教育体制が強い
- チーム医療が回っている
など、他にも良い要因が重なっている可能性があります。論文でも未測定交絡の可能性が述べられています。
なので結論は、
「学会発表すれば死亡率が下がる!」
ではなく、
「学術活動がある病院は、EBPが実装されやすく、成績が良い“傾向”がある」
このくらいの温度感が妥当です。
透析医療に置き換えて考えると、もっと面白い
ここからは少し応用の話です。
私は透析の現場にいますが、この研究の発想は、透析領域でもかなり示唆的です。
透析で患者さんの予後に効くのは、派手な新技術よりも、
- 必要な透析量(Kt/Vなど)が確保できているか
- 貧血治療(ESAや鉄)が適正か
- 骨・ミネラル管理(リン、PTHなど)がブレていないか
- 低血圧や感染などの合併症が減っているか
という“地味だけど効く”運用の積み重ねです。
これらは、まさに透析版のEBP(エビデンスに沿った実装)です。
そして、学会発表が多い施設というのは、突き詰めれば
“”「データを集める」「振り返る」「改善する」””が回っている施設でもあります。
だから「発表のために頑張る」より、
- 指標を決めて(例:Kt/V、Hb、リン、入院)
- 定期的に見て
- 現場のルールを整える
こういう仕組みが先にあって、結果として発表がついてくる。
今回の論文は、そんな順番の大切さを示しているように感じます。
まとめ:学会発表は“ゴール”ではなく“エンジンの音”
この研究が教えてくれるのは、たぶんこういうことです。
- 学会発表がある病院は、患者さんの死亡が少ない傾向がある
- その背景には、ガイドラインに沿った治療が実装されている可能性がある
- 発表そのものより、「学び→実装→改善」が回る文化が本体かもしれない
学会発表は、いわば“エンジンの音”。
音が鳴っている病院は、前に進んでいる――そんな読み方ができる論文でした。
あとがき
さて、というわけで、今回のメインテーマは循環器領域ですが、内容として「学会発表・学術活動が如何に大切か」というテーマを扱った論文をご紹介しました。
当院の院長は「博士号無・論文無・専門医無」の3拍子揃った後期高齢者です。学会にも参加したことのないおじいちゃんなので、「クリニックは研究なんかする場所じゃない」と宣う始末です。
そしてそれにかこつけて、メディカルスタッフも最初に述べたように、学術活動や日々の学習を見下しているような輩ばかりです。
果たしてそれが患者の為になっているのか?答えは簡単でNOです。
当院の最新の治療実績としては
- ・血流量 200 ± 38.9 mL/min
- ・Kt/V 1.8 ± 0.4
- ・補正Ca/P 9.4 ± 1.0 / 4.8 ± 1.6
- ・i-PTH 156 ± 202.7
- ・Hb 10.7 ± 1.6 (最低 5.5)
- ・TSAT/フェリチン 22.1 ± 11.2 / 88.9 ± 171.2
- ・β2-MG 28.5 ± 6.2
というのが、大まかな実績です。
筆者が入職した当初、Kt/Vは1.74 ± 0.33でした。最低は0.88という、長年透析をしている患者がほったらかしだったことには驚愕しました。透析条件は、この頃はまだ我々メディカルスタッフが提言出来たので、積極的に筆者が提案し、改善していった経緯があります。そのおかげで、有意差を以て透析効率は上昇を続けています。
しかし、やはり「博士号無・論文無・専門医無」の3拍子揃った後期高齢者ですんで、その他の項目はガイドラインを無視した治療を行っている為、リンの値はめちゃくちゃで、処方に関してもフォゼベル否定派なため、大量のリン吸着薬が処方されており、患者のポリファーマシー問題には無関心です。
カルシミメティクスも、院内処方だから~を言い訳に、オルケディア 1 mgを一回5錠などの処方は当たり前。剤形に 4 mgがありますよ。と上申したことはありますが、逆ギレされました。ウパシタやパーサビブも、恐らくコストが高いからと使わないのでしょう。便利なのにね。
と、学術面では大きく劣っている当院。
大きい地域を少ない施設で担っているからと傲慢さが垣間見えますね。
皆さんの施設ではどうでしょうか。皆さんの施設では、当院を反面教師として活動して頂ければと思います。
それでは、今回はこの辺で終わりにしたいと思います。ではまた~

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