内定取り消しをされてしまった場合の対処~慣習と労働基準法~

自己紹介

今回は筆者が半年の求職活動中に起こった珍事件についてご報告したいと思います。

その名も【内定取り消し事件】です。

法曹の方からすれば語弊も甚だしい。と思われるかもしれません。

しかし、我々医療従事者の就職活動のその特殊性に少しでも触れていただき、ご理解いただければと思います。

また、後輩諸氏など、これから就職活動を行う方々に関しても、こういう落とし穴があるの!?という部分を知ってもらえればいいと思います。

では本題に入りましょう。

事のあらまし

6月中旬、とある人材紹介会社から連絡が入ります。

「こちらで匿名でエントリーさせていただいた尼崎市にある石Kクリニック様から、是非面接をというご連絡をいただきまして、ご連絡差し上げました。」と。最初は思いました。

(おいおい勝手にエントリーしてんのかよ・・・)と。ただまぁ必死で内定先を探していた手前、好き嫌いは言っていられません。

「とりあえず明後日以外は全部予定詰まっているので、そこか来週でお願いします。」と答えたのです。

するとあれよあれよと話は進み、すぐに面接は希望通りの日時で決まりました。

面接当日

面接に挑んで驚いたことは二三ありました。

院長と事務長の夫婦経営、いわゆるワンマンです。まぁクリニックというのはそういうものなのでしょう。ここまではいいです。

おかしいのはここからでした。

面接に技士長が同席しないのです。あれ?と思い、質問タイムになった時によくよく聞いてみると、なんと技士長のポストが空いているのです。

技士はバイトで15人で回している。看護師も常勤は二名。他はバイトだというのです。

驚きました。他にも驚いたことはありますが、学術的なことになるので割愛します。

この時点で人材紹介会社と話が違うではないか!!と猛クレームです。

技士長ポストとは聞いていませんでした。他にもクリニックの経営方針に関し、疑義がいくつもありました。

が、そこはクリニック。仕方がないと思いながら帰りました。

内定の連絡

翌日、夕方にエージェントから無事内定が出ました。と連絡が来ました。

その年収は他の追随を許さない物でした。さすがクリニック。金額が違います。エージェントからも、年齢から見たら破格の値段だと言われました。

但し、他にも採用面接を受けている施設があったため、一旦保留とさせてください。と返事をしたのです。

内定取り消し

ここで事件が発生します。

翌週月曜日に、突然クリニックから直接電話が来たのです。「今回内定出したけど、ちょっと取り消しにしたいのよ。ごめんなさいね~。」と。突然のことで何が何やら。驚いて「はぁ・・・・?」としか返せませんでした。

SNSでの情報集め

内定取り消しについて呟いたところ、様々な反応が返ってきました。その中で気になったのが「契約違反になる」というものでした。

しかし、ここで一つの壁にぶつかったのです。

慣習と労働基準法

私たち医療従事者は、人材紹介会社を介して転職活動をする際、「労働条件通知書兼内定通知書」という形で内定をもらいます。

本来というか、慣習ではこの状態で【内定】だと思うじゃないですか?

しかし、労働基準法上、これでは【内定】とは言えないのです。

では内定とは何か?それは「雇用の開始する日を定めた時」とあるのです。

どうも法律用語では【就労始期付解約権留保付労働契約】というそうです。

今回の内定通知書でも、入職日については記載がありました。その為、この内定通知書は法的効力が存在することになります。

就労始期付解約権留保付労働契約とは

「始期付」とあるのは、内定の時期から実際に入社し就労するまでは一定の期間があるためで、また「解約権留保付」とは、入社までにやむをえない事由が発生した場合には内定を取り消しすることがあるから、いわば条件付きの労働契約であるのです。

採用内定の法的な性格「始期付解約権留保付労働契約」とは https://s-paycial.shinwart.co.jp/column/mizoguchi04/

とあります。まぁ色々と難しい話が引用先には書いていましたので割愛しますが、簡単には内定は取り消せない。ということでした。

慣習に倣えば

私たち医療従事者は就職活動の性質上、エージェントを通してでも、自己応募でも、中途採用の場合には「〇月〇日から働きます。」とは言い辛い、もしくは言えません。

実際内定というのはそういうものです。働く時期についての定めなどないのです。

内定が出てから就労時期について相談し、そして就労する。というのが中途採用、もしくは医療業界の通例であります。

その為、内定通知書には仮押さえでも入職日を書いているのが通常だと思われますし、筆者の場合、離職中の身なのですぐに入職は可能なため、記載されている入職日で問題ありませんでした。

にも関わらず、就労始期を定めない内定であれば、実質これは内々定という状態だという事なのです。

対応

執筆時点では、まだ労働基準監督署に相談している状態です。

翌日、人材紹介会社を通じてクリニックへ連絡を取ってもらえないか?という労働基準監督署の助言に従い、まずは紹介会社へ連絡。しかし、数時間後に返ってきた回答は驚愕のものでした。

「結果から申し上げますと、内定が出てしまった時点で個人の契約になるので、こちらとしてももう出来ることが無いので、ご自身で連絡を取ってもらうしかないんです。」と。まぁ責任放棄とも取れます。

しかし、同情できる余地もあります。紹介会社曰く、クリニックの事務長からは門前払いをくらい、全く連絡が付かない状態だというのです。

自身も仕方なくクリニックへ電話をしてみました。「内定取り消しはどういうことなのか。労働基準監督署にも話は通したが、これ違法ですよ。」と。しかし、全く取り付く島もありません。

このことをすぐに労働基準監督署へ連絡、そして制度としての「助言」を活用することになります。

助言とは?

労働基準監督署では色々な制度があります。その中で、自身が動いた後でも状況に進展が見られない場合に労働基準監督署から直接連絡を取ってもらう「助言」という制度があります。監督官から直接事業所へ連絡を取ってもらうのです。

但し気を付けなければならないのは、これはあくまで助言であり、法的拘束力は何ら有しないということです。

今回の助言でも、監督官も全く埒が明かないと驚いていました。

「助言でこれなので、あっせんは使えないとなると、あとは民事訴訟や労働紛争になりますね…」と言われてしまいました。

民事訴訟による損害賠償請求訴訟

残す手段はこれしかありません。

しかし、正直離婚裁判を経験したことのある筆者としては、裁判はオススメしません。

何故なら、結構な時間と労力を割くことになるからです。

今回、人材紹介会社からは労働条件通知書(兼内定通知書)という形で、入職日や賃金も書かれた状態の書面が届いています。

先に述べた「就労始期付解約権留保付労働契約」としての条件はほぼ満たしていると考えていいでしょう。慣習にはなりますが、他の施設の結果を待っているのでサインをしていないだけで、内定は内定なのですから。

向こうは内定を出したつもりはない。の一点張りですが、あまりにも無理があります。

また、人材紹介会社でも、クリニックとの契約では、労働条件通知書(兼内定通知書)を出した時点で内定としての契約は確立したものとして扱っているので、今回の内定取り消しは異例中の異例として法務部が動いているという事でした。

違法や契約違反もいいところです。という訳で、本来であれば裁判沙汰案件という訳です。

今後の対策としては

但し、例えば面接の時点でボイスレコーダーを用意しておく。もしくは内定通知書に就労始期について記載してもらう。というのが対抗策でしょうか。

兎にも角にも、中途採用で面接を受けられる方は、内定を出してもらう時に就労可能時期についても記載・相談しているのがベターのように感じました。

ただ、今の就労形態に法律が追い付いていないとも感じます。

あとがき

今回は内定取り消し事案について執筆してみました。

大学生などは内定が出た場合はどうなるのでしょうか??筆者は専門学校卒なので、そこら辺はよくわかりません。

また、新卒という時期は一生に一度しかありません。そのあとは全て中途入職になる訳です。

正直、ここまで不利でかつ高難易度になるとは思っていませんでした。

裁判に関しては、先にも述べたように時間と労力、そして精神を削られる作業になるため、今回は泣き寝入りになると思います。

しかし、本来であればお抱えの弁護士に依頼し、損害賠償を請求できるだけの案件であったというのは事実であります。

が、今回はここらへんで手打ちになります。他に内定が待っていますからね・・・・

とまぁ、今回はこんなところで。

ではまた~~

https://amzn.to/3qJqZ92

コメント

タイトルとURLをコピーしました