CKD-MBD~その重要性を概略する~

血液透析

今回は血液浄化領域にフォーカスした話題を提供しようと思います。

血液浄化でも最大の患者数を抱える疾患は、我々臨床工学技士が最も関わる疾患である腎不全

つまりは血液透析です。

最近では『心腎相関』と言われるほど、腎不全と心不全の関係は切っても切れません。

その重要性はKDIGOでもDiscussionされるほどです。

Heart failure in chronic kidney disease: conclusions from a Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Controversies Conference

※全文翻訳版がご所望の方はご連絡ください。お譲りします。

そんなこと当たり前だ!!と仰る方も大勢いるでしょう。ですが存外言語化することは困難を極めます。それをこのように文献化していただけることは大変ありがたい事と思います。

話が脱線してしまいましたが、本題へ戻りましょう。

腎不全の中でもCKD-MBD(大昔で言う骨ミネラル異栄養症)という概念はここ10年で大変飛躍しました。

そして、MBDの中でP:リンの管理はとても重要視されたのです。

それは何故か?そこからタイトルまでの道筋を今回は作っていこうと思います。

長文駄文になりますが、お付き合いいただければと思います。

CKD-MBDとは?

CKD-MBDとは?で検索すれば以下のような文言がヒットします。

CKD-MBDとは CKDはChronic Kidney Diseaseの略で、慢性腎臓病のことです。 MBDはMineral and Bone Disorderの略で、ミネラル骨代謝異常のことです。 したがって、CKD-MBDは「慢性腎臓病に伴う、ミネラル骨代謝異常」と訳されます。

腎臓病について | 基金拠出型医療法人 眞仁会 – 横須賀クリニック

これを執筆していただきました基金拠出型医療法人 眞仁会 理事長 横須賀クリニック
名誉院長 小澤 潔 先生には、簡単ですが謝辞を述べさせていただきます。

さて、言葉の説明は上記で簡単にケリが付いてしまいましたが、CKD-MBDとはつまるところ概念・または症候群とでも呼べるものであることがはっきりしました。ではこの概念の何が重要なのか?について述べていきましょ。

P(リン)×Ca(カルシウム),そしてPTH(副甲状腺ホルモン)の関係

まずは生理学的基準値の復習

健常者における上記の正常値は、それぞれに2.5~4.5mg/dL8.8~10.4mg/dL8.3~38.7pg/mL(Whol-PTH),10~65pg/mL(PTH-Intact)となります(引用元は示しません。生理学の教科書でも引っ張り出してください。)

通常、コストの関係からもPTH検査ではi-PTHが測定される傾向にあります。
※wholeとIntactの差異については自己学習でお願いします。ここで述べるまでもないので。

但し、これはあくまで健常者での検査値です(筆者も健常者のうちに一応入ります)。

では透析患者ではどうなのか?

透析患者での基準値というのは教科書によっても意外にまちまちです。それは生理学的基準値でもままそうですが、そこまでの差異はありません。それに対して、透析患者には文献により結構な差異が存在します。

このブログでは、あくまでJSDT(日本透析医学会)のガイドラインに則った記事を作成したいと考えます。

社団法人 日本透析医学会 慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン

日本透析医学会 ガイドライン・提言

上記ガイドラインの中には、有名な9分割図が存在します。

社団法人日本透析医学会
慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン P.311 日本透析医学会雑誌45 巻4 号2012

この図から分かる通り、

P:3.5~6.0mg/dL

Ca:8.4~10.0mg/dL

となります。

ではi-PTHはいくらなのか?

Ⅰ.PTH の管理指針
1) PTH は intact PTH 60 pg/mL 以上 240 pg/mL 以下の範囲に管理することが望ましい*1*2(2D).

~中略~

補足
*1 あるいは whole PTH 35 pg/mL 以上150 pg/mL 以下の範囲に管理することが望ましい.
*2 PTx 後の症例は,PTH が管理目標下限を下回ってもよい.

社団法人日本透析医学会
慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン P.314 日本透析医学会雑誌45 巻4 号2012

しっかりとwhole PTHの目標値も入ってる所は優しさを感じますね(当たり前だろ)。

なぜP:リンの目標値が重要視されるのか?

ガイドラインにはこのような記述があります。

Ⅱ.P,Ca の管理目標値からの治療指針
1) 血清P 濃度,血清補正Ca 濃度,血清PTH濃度の順に優先して,管理目標値内に維持することを推奨する(1C)

社団法人日本透析医学会
慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン P.309 日本透析医学会雑誌45 巻4 号2012

というわけで、目標優先順はP>Ca>PTHとなりました。

これらの根拠には、ガイドライン作成時点の2006年末時点までの文献、およびJSDT年末統計調査データが用いられています。この3年予後の解析の結果、

[P,Ca,PTHすべて達成]>[P,Caを達成]>[Pのみ達成]>[Ca のみ達成]>[PTHのみ達成]>[すべて未達成]の順に予後がよいことが示され,P>Ca>PTH の順に管理を優先することが推奨とされました。

最後からの3つがまさに優先順位そのままですね。

全てを目標値に収めるのは中々至難の業であり、且つ予後に関してもP,Caの組み合わせが有意差をもって優良だったことも含めて9分割図になったのです。(ここにPTH入ってみ??Z軸入った立体図でめちゃくちゃ見難いからな??)

ではリン値が基準値を外れると何が悪いのか??

概説していきましょう。

リン低値の場合

 通常、低リン血症は無症候性の為、非透析患者では見逃されることが多い疾患です。但し、現代の高齢化日本では、食欲不振からくる低栄養はさほど珍しいものではないかもしれません。

 さて、透析患者での低リン血症の原因には、主に高齢化による栄養失調(食欲不振)、およびリン吸着薬の過剰摂取(≠過剰処方)が考えられます。

 通常、透析患者は2週間に一度の採血によりP,Ca濃度を測定される為、低リン血症が見逃されることはありません。

治療方法

 食欲不振があれど、経口摂取が可能な患者に対しては、リーナレンシリーズやレナウェルといった腎不全用栄養剤が処方されることがあります。

 非経口摂取の場合、腎障害のある患者に対してはリン酸ナトリウムが用いられます。(但し、筆者はこれを見たことがありません・・・)。この他、そもそもが栄養失調に起因する為、キドミンやネオアミユーなどのアミノ酸含有製剤を透析終了30分前から投与するなどの手段が取られます(ましてこっちの方がメインな気がしますけどね)。

3年生命予後について

 尚、意外に思われるかもしれませんが、低リン血症の場合でも3年予後はJカーブを描き、高リン血症ほどではないにしろ死亡率が上昇する点には注意が必要です(これは、必ずしもリン単独が悪さをしているという解釈にはなりません。よく考えてください。)。

リン高値の場合

 高リン血症のついても、低リン血症同様に無症候性です。

 というのも、リンの蓄積というものはGFRの低下に伴い増加するものであり、通常、健常腎では起こりえないからです。これについては筆者の知識整理も兼ねて、別記事で説明できればと思います。

 透析患者に関しての高リン血症も、これまた先に述べたように2週に一遍の採血で見つけることが可能です。

 また、普段から患者とコミュニケーションを密にしていれば、腎不全看護の視点から見つけることも可能です。これは技士でもスキルの内に入ります。

治療方法

 ここでは透析患者に限った話題にしたいと思います。

 血清リン値が高値の場合、高リン血症治療薬の開始/増量を検討し、更に栄養指導が前提となります。
また、透析処方の強化(時間の延長>血流量のup>透析液の選択)も選択肢に入ります3)

9分割図に則った解説をしたいところですが、これも話題が長くなってしまう為、ここでは割愛させていただきます。

栄養指導についての注意点として、過剰なリン摂取制限は悪だということです。

リンの摂取量と蛋白摂取量には密な相関があるため、リンの摂取制限を過度に行う事で栄養不良を引き起こしかねないのです。その為指導方法には注意が必要です。

3年予後について

生命予後因子としてのCKD-MBD 

日腎会誌 2014;56(8):1233‒1242.

上記グラフは先にも述べている血清リン濃度の3年生命予後のグラフになります。
基準値を外れることで、アルファベットのJの如く死亡率が上昇するため「Jカーブ」などと呼ばれています。

血清リン濃度が6.0mg/dLを超えたあたりから各モデルで死亡ハザードが上昇していることが顕著にみて取れます。

この為、リン管理の上限値というのは厳格に管理されるべき値である。とされたのです。
※尚、棒グラフは血清リン濃度の患者分布になります。

リンの功罪

リンだって好きで悪さをしている訳ではありません。人間には必要な元素ですからね。

ではリンが高値を来たすことの何が悪いのか?それは腎不全の死亡原因にあります。

2021年現在、全国統計調査による死亡原因の第1位は「心不全」です。内容として心不全(HF),脳血管障害(Strork),心筋梗塞(MI)を併せた「心血管死(CVD)」の割合は,31.5%でした1)。脳血管障害を除いた割合でも25.9%と全体の1/4を占めます。

CVDの原因は言うまでもなく動脈硬化ですが、CKD患者ではメンケベルグ型中膜石灰化が多く観察されます2)

動脈硬化による疾患は、枚挙に暇がありません(中年以降の男性には「ED(勃起不全)になりますよ。。。」というと治療参加への効果がてき面とか。エビデンス?知りません笑)。

ここまできてお分かりの通り、Caと比較してPというのは的確に血管や心臓などの重要臓器を標的に害を為します。

Pが血管へダメージを与えるその機序などはまた別記事のネタとして温存させていただきます。

あとがき

今回はCKD-MBDのほんの触りの触りについて概略させていただきました。

ご笑覧頂ければ幸いです(間違いの指摘等は大歓迎です。ご連絡ください)。

また、こんな血液浄化テーマを解説して欲しい!!などもあればご連絡いただければ検討させていただきます。

Pの悪さについての話はまだ続きます。乞うご期待。

ではまた次回。

引用元

1)一般社団法人 日本透析医学会 統計調査委員会 2021年末の慢性透析患者に関する集計

2)CKD-MBDの管理 千葉大学資料

3)社団法人日本透析医学会 慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン

CKDブック -慢性腎臓病管理の手引-
腎臓病診療における重要なテーマのひとつである慢性腎臓病(CKD)診療の諸側面を網羅したガイドブック。図表を豊富に掲載し、病態生理に関する記述も充実。CKDと高血圧、糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病や心血管病変との密接な...
慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD‐MBD) (ガイドラインサポートハンドブック)
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コメント

  1. こひずお より:

    聞くとよくわかるのに文字にすると難しいわね

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