タイトルにある通り、今回は新規β2-ミクログロブリン吸着器であるフィルトールについての記事になります。
と言っても、記事執筆時点での情報はほぼ皆無なので、日々改訂していければと思いながら書いています。
では参りましょう。血液吸着の世界へ。
フィルトールとは
現時点での経過
フィルトールは、承認が2021年11月、2022年10月1日から保険適応が開始になったデバイスとなります。
実際の販売は2022年12月からのようです。
検索をかければ厚生労働省保険局医療課長の通知文書がヒットします。
保険適応は?
年度途中の申請とはなりますが、すでにβ2-ミクログロブリンの吸着デバイスは存在していますよね。
そうです。リクセルです。
なので、適応は「吸着型血液浄化器(β2-ミクログロブリン除去)」となっています。
償還費 21,700円
ここもリクセルと同様ですね。J 041 吸着式血液浄化法の適応でもありません。
このデバイス単体で手技料は発生しないので注意しましょう。
特定保険医療材料
こちらもリクセルと同様の申請になります。
素材は??リガンドは??
まぁ一番気になるのはここだと思います。
リクセルは後程説明しようと思います(忘れていなければ)。
フィルトールの部材は
リガンド:ポリメチルメタクリレート(PMMA)
ケース:ポリカーボネート
フィルター:ABS/ポリエチレンテレフタレート
充填液:逆浸透濾過水(RO水)
とあります。
このデバイス、お気付きの方も居ると思いますが東レの商品です。なんせPMMAですから。
原理は?
ここは非臨床工学技士の方向けかもしれませんね。
今回、添付文書を見ると、吸着原理の欄には
腎不全患者の血液中のβ2ミクログロブリン(β2-MG)を、ポリメチルメタクリレート(PMMA)との疎水性相互作用により、吸着担体(多孔質繊維)に吸着させて除去する。
機械器具7 内臓機能代用器高度管理医療機器 吸着型血液浄化器(34422000)フィルトール
とあります。電気的とかじゃないんだ。と思わないでもないですが、化学的にそうなんでしょう(筆者、そこまで化学詳しくないです・・・)
リクセルも原理は同様ですが、リガンドがもちろん違います。
β2-ミクログロブリン(β2MG)とリガンドであるヘキサデシル基との疎水性相互作用及びセルロースビーズの細孔径調整による分子篩効果により、β2MGを選択的に吸着するように設計されている。
機械器具 7 内臓機能代用器 高度管理医療機器 吸着型血液浄化器 34422000 リクセル
ヘキサデシル基ってどんなんだろう?と思い調べました。
炭素原子数16のアルキル基でなんちゃらかんちゃら・・・・化学式出てきました。血ガス以外ではちょっとな~…と敬遠してしまいました(いやアカンだろ)。
細孔径調整して、篩効果で吸着してる…なんか昔に勉強したな~とか思いながら忘れてました。
適応疾患
リクセル同様、
透析アミロイド症。ただし、高度の運動障害などにより日常生活が著しい制限をうけている重篤な患者を対象とする。
とされています。
著しい制限というのが、手根管開放術を一度でも受けているという制限になります1)。
ただ、リクセル以外の資料が見当たらなかったので、全く同じになるという保証はありません(2023年4月現在)。
リクセルとの比較
直接の比較資料というのは23年12月現在も文献では見つけることは出来ませんでした(Pub Medでもです)。
そうなるとカタログ値で比較するしかないのですが、リクセルはAV出入口での血中濃度、片やフィルトールではβ2ーMGのクリアランスで表している為、単純比較することが出来ません。
となると、何が比較できるかな~…と考えました。
血液充填量!!!これだ!!
というわけで比較します。
血液充填量としてはフィルトールに分があるようです。
ただ、先にも述べたように除去性能としてどれだけの差が付くのかが問題です。
ニッチな領域なため、中々データを集めるのが大変かもしれませんが、誰かが出してくれることを祈ります。
これからの展望
筆者は初めの施設がPMMA信者施設?だったこともあり、結構PMMAは好きです。
CRRTでも大変お世話にはなりました。
さて、PMMAですが、血液透析 - 維持透析でも使われますね。
吸着により抗炎症作用や抗掻痒感作用なども報告されています。
昨今の少子高齢化の波で、透析患者も高齢化が進んでいます。その為、フレイル予防などにも注力したい部分ですが、起こってしまうものは仕方ありません。ここで、こうした高齢化の進んだ方や、透析掻痒症の方にも、何かしらのエビデンスが出ればいいのですが、実際どうなのでしょう。
透析掻痒症の方に関しては、どの内服も効かない方に対してはレミッチが存在しますが、薬価は高いです。薬局としてはいいでしょうが、日本の経済的にはよろしくない。さてどちらを取るべきか。
そんな場合にPre-OHDFがある訳ですが、この話はまた追々。
また、充填液がRO水というのも使い勝手はいいかもしれませんね。ただ、まだ自動プライミングに非対応という話を聞いています。リクセルの自動プライミング初期は非対応でしたが、物がPMMAですから、すぐにでも対応可になるんじゃないでしょうか。そこら辺は期待です。
あとがき
今回はβ2-ミクログロブリンの新規吸着デバイスについて解説を行ってまいりました。
ただ、何故なのかわかりませんが東レのHPにも商品説明ページがまだ存在していません。
その為、添付文書の情報や既存のPMMA資料を拾ったり?しながら構成しました。
これからも情報が増えれば少しずつ改訂していければと思います。
2)竹澤 真吾 , 福田 誠 , これからの透析医療のための新ハイパフォーマンスダイアライザUp to Date- ダイアライザとヘモダイアフィルター - , 東京医学社
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