さてさて、透析とはなんぞや?シリーズ第2弾はこちら。
血液透析や各種血液浄化療法の原理について解説していこうと思います。
とはいえ、巷にあふれるこれ系のサイトがある中で、どこまで詳細に解説出来るやら…
兎にも角にも行きましょう。
ようこそ。血液浄化の世界へ。
最もポピュラーな治療であり原理ー血液透析ー
ちょっとした歴史
今現在、というかこれまで血液浄化の中で最も人口が多い治療、それが血液透析です。
血液透析の歴史編でも説明したように、技術的歴史は100年をゆうに超えます。
ただ、保険としての歴史はそうでもありません。
1970年代、保険適応の拡大と共に透析人口はぐわっと増えることになります。
その為、透析に従事するスタッフの数もドッと増えたことでしょう。
そこでも問題になったことでしょう。工学的基礎がある透析をどう解説・教育するべきか。
それを今から繰り返す訳です。
血液透析の原理
血液浄化には3つの原理があります。
その内の一つが「拡散」です。
まぁ拡散ってなんやねん!!ですよね。
良く例えられるのが下の図です。

海水と真水を用意し、その真ん中には半透膜を用意します。半透膜とはある特定の物質だけを通します。
この物質のことを溶質といい、溶質の溶けている液体を溶液と言います。そしてここからが問題です。
上の図では、拡散が起こるとどうなるでしょか。答えは海水の塩分が真水へ移動し、海水の濃度が薄まります。逆に真水には塩分が流入し、少し塩辛くなります。
こうすることで、両方の溶媒は塩分濃度が同様の溶媒となります(図2)。

この塩分が移動する現象のことを(分子)拡散といいます。しかし、見方を変えると溶媒である真水が、海水を薄める為に移動した。ともとれるのです。この濃度が均一になろうとする働きの事を浸透(Osmosis)と言います。
これを血液中に例えた場合、BUNやCr,NaやK,Pなどの小分子が当たります。血球成分である赤血球やアルブミンなどは膜不透過溶質と呼ばれ、半透膜を通過することが出来ません。
しかし、通過できないにもかかわらず濃度は均一になろうとします。均一になろうとする時に発生する流れの事を浸透流といい、このときに発生する圧力を浸透圧と言いますが、血漿タンパクが関与する圧力の事をコロイド浸透圧と言います。
さて、話は少し脱線しましたが、以上が拡散現象の説明です。
この拡散が人工腎臓(以後、ダイアライザー)の中で起きているわけです。ではどこで起きているのか?それを説明していことおもいます。
ダイアライザーには中空糸と言われるストロー状の筒が約10,000~15,000本入っています。このストローが半透膜なのです。更に、このストローを拡大すると、ストローには横部分に細孔と言われる穴が開いています。この細孔を介して、拡散などの物質交換が行われます。

この中空糸の内側を血液が、外側を透析液が行き来しているわけです。そして、中空糸を介して物質交換が行われます。

ただ血液と透析液を流せばそれでいい。という訳にはいきません。
透析に従事している方は、透析効率という言葉を聞いたことがあると思います。効率を最大化するためにはある工夫がされています。

通常、血液は動脈側から静脈側へながれていきます。これに対して。透析液は血液とは反対の流れを取ります。この流れの事を向流と呼びます。
こうすることで、老廃物の多く入った血液と新鮮な透析液が常に触れ合い、物質交換が効率よく行われます。
この向流のイメージとしては、エスカレータが平行して同じ方向に動いているか上下しているか?がいいのではないでしょか。
同じ速度のエスカレーターで、ハイタッチをしながら乗るとしましょう。
同じ向きに動くエスカレーターでは、同じ人としかハイタッチ出来ません。
しかし、上下が違う場合には次から次にハイタッチをする相手が代わります。
これが血液と透析液の流れなのです。
以上が血液透析の原理ー拡散ーについての解説でした。
では続いてはこちら
今や主流??ー血液透析濾過の原理ー
続いてはこちら、血液透析濾過。
といっても血液透析(拡散)については解説しました。
なので次の解説は濾過についてです。
濾過と聞いて何を思いつくでしょう。
僕はこの例えが好きです。コーヒードリップ。

とても綺麗ですね。
さて。コーヒードリップは上から下へ、コーヒーを濾す現象です。まさにこれが濾過です。
血液ろ過でも同じことが現象としては起きています。但し、コーヒードリップは重力に従って陽圧でろ過しているのに対して、血液ろ過では陰圧ー引っ張って濾過をしています。
中空糸を思い出してください。内側を血液が、外側を透析液が流れていましたね。この中空糸に対して、外側から陰圧を掛けて血液から老廃物を強制的に取り除く作業が血液ろ過になります。
今言ったように、強制的に圧力を掛けて溶質を取り除くため、拡散よりも更に分子量の大きな溶質を除去することにたけています。

上の図にあるように、濾過量、つまり圧力を大きくすればするほど、クリアランス(除去量)は増えます。
このように、濾過によりHDより更に大きな分子量をターゲットとして行うのがHF-血液ろ過というわけです。
では最後の原理説明にいきましょう。
特殊血液浄化でお世話になります!!ー吸着ー
最後はこちら、吸着になります。
まぁ言葉の通り吸いつけま(笑)
上記2記事でも解説していますが、吸着は主に三通りの作用で行います。
まずは静電的な作用。+と-の引き寄せる力です。専門用語ではクーロン力といいます。
そして疎水的結合作用。溶媒中で、水と親和性が低い物質同士が水を避けようと接近しあう力の事で、これも専門用語でファン・デル・ワールス力なんていいます。
日本では上記二通りが用いられます。
あとは生物学的作用を応用した吸着材も存在します。
抗原や抗体、またはその一部をリガンドとして使用し、抗原抗体反応に基づく作用を利用したもの、受容体や受容体結合物質、又はこれらの一部をリガンドとして利用し、生物学的な結合反応に基づく作用を利用したものがあります。しかし、2023年5月現在、日本では販売されていません。
あとがき
今回は人工透析の原理について、数式を用いずに解説しました。
少し?雑になってしまった感は否めませんが…ここがわからん!!とかあれば、遠慮なくコメントいただければ改訂や解説させていただきます。
これを機に、もっと詳しく知りたい!!と思った方は、是非透析技術認定士を目指してみてください(筆者は大分前の事なので、もう忘れてしまいました(笑))。
では今回はこの辺で。
まーたね~ノシ
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