皆さんお久しぶりです。
最近筆者は就職活動が功を奏し?、新しい職場で仕事を始める事が出来ました。
そこで新規薬剤に遭遇したことで、こうやって復習をする機会に恵まれたわけです。
知識整理も兼ねて、生理や病態に関してまとめていければと思います。
では行きましょう。副甲状腺の世界へようこそ
そもそも副甲状腺って??
副甲状腺の位置は、咽喉の下にある蝶番の形をした臓器である甲状腺の裏にある米粒のような臓器です。
副甲状腺の機能というのは副甲状腺ホルモン(ParaThyroid Hormone:PTH)の分泌に他なりません。
では副甲状腺ホルモンは何をするのでしょうか?
副甲状腺ホルモンの役割
副甲状腺ホルモン(PTH)は血中のカルシウム濃度をコントロールする役割を持ちます。
カルシウム濃度を直接コントロールしているのはカルシウム感受性受容体(Ca2+ sencing recepter:CaSR)と言われるレセプターです。
Caの出納自体は消化管からの摂取、骨からの吸収、腎臓による排泄の3大機能により恒常性が保たれています。
さらに、PTH、活性型ビタミンD、カルシトニンの働きにより血中のCa2+の濃度は厳密に調整されています。
CaSRは血中のCa濃度が上昇すると活性化し、下流の経路を介してPTHの分泌を抑制し、骨中からのCaとPの遊離を抑えます。逆にCa濃度が減少すると、CaSRの活性化が抑えられ、PTHの分泌が亢進するため骨中のCa、Pは遊離が起こり、血中のバランスを保つ方向に働きます。増えすぎたCaやPは腎臓を介して排泄されることになります1)。
CKD-MBDシリーズでも若干ですが取り上げていますので、補足的に知りたい方はご笑覧ください。
透析下での副甲状腺の働き方
さて、弊ブログは透析に関連した話題を扱うため、ここでは透析環境下での副甲状腺の働きについて解説していこうと思います。
先に結果を述べてしまえば、透析では合併症として二次性(続発性)副甲状腺機能亢進症が発症します。ではそれはなぜなのか??それは吸収・分泌・排泄の3大機構のアンバランスから始まります。
上記のブログ内でも述べていますが、Ca2+の吸収というのは腸管から行われます。
しかし、ただ摂取したから吸収されるというものではなく、吸収には活性型ビタミンDが関係してきます。
本来であれば、ビタミンD3は吸収後、肝臓においてCYP27Aにより水酸化を受け25水酸化ビタミンD3[25(OH)D]に代謝されます。そして、この活性の低いビタミンDは更に腎臓の近位尿細管でCYP27Bにより代謝され、1α位が水酸化されると、皆さんお馴染みの1α,25水酸化ビタミンD3[1,25(OH)2D]へと合成されます。この活性型ビタミンDはビタミンD受容体と高い親和性と持つことで特異的に結合し転写活性を有する生理活性物質、所謂ホルモンとして働きます。活性型ビタミンDの過剰は、腎臓の近位尿細管でCYP24の発現が亢進することで25(OH)D,及び1,25(OH)2Dが水酸化を受け、不活化します。
さて、長々とまずは活性型ビタミンDの生理からお話したわけですが、なぜ活性型ビタミンDの話が必要かというと、Ca2+、リンの吸収にはこの活性型ビタミンDというホルモンが欠かせないからです。
Ca2+とPはビタミンDにより能動的吸収が行われます。カルシウム吸収の大半はビタミンD依存性に行われる為、このホルモンの重要性が伺えますね。
しかし、加齢や腎機能の廃退により活性型ビタミンDが合成されなくなると、カルシウムの吸収能というのは低下してしまいます。
さて、ここからが透析環境下での副甲状腺ホルモン…PTHの働きになります。
腎機能の低下により、活性型ビタミンDの合成は低下し、吸収されるカルシウムは低下。そのまま血中Ca濃度の低下に繋がります。
血中Ca濃度の低下を感知したCaSRは、不活化することでPTHの発現を亢進させます。これにより、骨中のCa,Pが遊離していくことになります。また、骨からはFGF23というホルモンが分泌されることで、低下した腎機能にさらに追い打ちを掛けるかのように、活性型ビタミンDの合成を阻害していきます。
本来であればリンを排泄するために分泌されるFGF23ですが、腎臓の機能低下により、そうは簡単に排泄されません。腎臓は少ないネフロンをフル稼働させて排泄にかかります。その為、上記ブログでも書いたように、腎機能の低下初期段階ではリンの血中濃度上昇は見られません。その代わりFGF23の上昇が見られます。FGF23の上昇は、結果として活性型ビタミンDの合成阻害という副作用をもたらし、Ca,Pの吸収を低下させます。
さて、話が横道に逸れてしまいました。
PTHは血中のCa濃度を上げようと分泌を亢進させ、骨吸収を促進させます。血中に過剰分泌されたCa,Pは相互に結合することで、異所性石灰化を起こす原因になります。
透析環境下では、このサイクルが永遠に行われることになります。
二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)の機序
上記の項でほぼ説明が終わってしまっていますが、再度説明します。
具体的な機序としては
腎機能の低下からくる活性型ビタミンDの合成低下。合成低下によるCaの吸収低下。血中Ca濃度の低下によるCaSRの不活化。不活化によるPTH分泌亢進。
ここまでが二次性(続発性)副甲状腺機能亢進症になります。
SHPTの後に続くもの
PTHの分泌亢進により、全身の骨からはCa2+とPの遊離…つまり骨吸収が起こります。このサイクルが永遠に起こることで、CaSRは鈍麻し、血中に十分量のCaがあっても、必要量のCaSRが発現することが出来ず、結果としてPTHの分泌亢進が起こり続けます。
骨吸収が起こり続けることで、全身の骨格は脆くなります。つまり骨粗鬆症の発症です。
また、血中に過剰に分泌されたCaとPは相互に結合し、上記でも述べたように異所性石灰化を起こす原因にもなります。
これが、メンケベルグ型動脈硬化症。所謂動脈中膜の石灰化です。
メンケベルグ型動脈硬化症は、CVDやPADのリスク因子であり、それだけで予後の悪化を招くため、注意が必要です。
正常な骨回転…骨吸収と骨形成のサイクルを維持するには、透析患者の場合、正常値の2~5倍のPTH濃度が必要だと言われている為、PTHの高値はある意味仕方ないのかもしれません。
あとがき
今回は簡単にですが二次性副甲状腺機能亢進症についてまとめる機会があったので執筆しました。
CKD-MBDには様々な側面があり、治療薬も多岐に渡ります。
次回以降では、その薬剤についても何か記事を書ければと思っています。
乞うご期待です(がんばれ俺
それではみなさん、また次回作でお会いしましょう。
1)山本 彩,カルシウム感受性受容体,日薬理誌(Folia Phamacal.Jpn),148,278~280(2016)
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