今回も趣向をちょっと変えまして、これまでご紹介してきた栄養指標をExcelで計算、評価する方法を記事にしてみようと思います。
というのも、筆者が現時点で導入している部門システムはFuture Net Webなのですが、Creatinine Index(筆者ブログでは%CGR)とGNRIの数字は出してくれるのですが、それに対しての評価はしてくれません。つまりはスタッフ全員が評価基準を覚えておく必要があるのです。
これはとても手間です(まぁそんくらい覚えろよとは思うのですが)。
なので、数値、評価基準を載せた評価シートの作成をしたので、それのお披露目をしようと思ったのです。
ではさっそく作ってみましょう!!ようこそ栄養指標 for Excelの世界へ!!
%CGR (Creatinine Index)について
この項目、正直FNWが自動で出してくれるのでブラックボックスです。
導出に関しては下記記事内で書いているのでご参照ください。
ただこちら、導出の式がとてつもなくややこしい。対数とか出てくるし、VBAじゃないと組めないんじゃない?と思うくらいです。
が、なんと天下のJ-DOPPSでcreatinine indexについての論文が出ているではないですか。
ということで、その式でならExcelでも関数で書けるかもしれません。
式としては性差を考慮する以外には特に難しくはありません。
$$男性 Creatinine Index=16.21 +1.12-0.06 × [年齢(Y)]$$
$$-0.08(sp-Kt/V)+0.09 × sCr(μmol/L)$$
$$女性 Creatinine Index=16.21-0.06 × [年齢(Y)]$$
$$-0.08(sp-Kt/V)+0.09 × sCr(μmol/L)$$
この式だけで簡単にcreatinine Indexとして導出が可能なようなので、Excelでも可能化できるかもしれません。
J-DOPPSでの階層別解析によるCreatinine Index基準値
論文中では、Creatinine Indexを4つの階層別で解析しています。
具体的には
- Q1 :≦18.9
- Q2 : 19.0 to 20.8
- Q3 : 20.9 to 22.9
- Q4 : ≧23
以上です。これをそのまま「High Risk」「Medium Risk」「Low Risk」「normal」と書いて表現してもいいかもしれません。
Creatinine Index for Excel
さてさて、本題のExcel数式ですが、これはIF関数で完結します。
仮にA列にCreatinine Index、B列にClass分類を書いている場合の関数式をお示しします。
$$=IF(A1<18.9,"High Risk",IF(A1<20.8,"Medium Risk",$$$$IF(A1<22.9,"Low Risk","normal")))$$
この式でclass分類を数値の隣列に表示出来て、リスクが一目瞭然になります。ちょっと便利になりました。
GNRIについて
さて、お次はGNRIについて。
この指標の導出に関しても、下記記事をまずはご参照ください。
GNRIの基準値
これまたおさらいになりますが、基準値は下記のとおりです。
- GNRI>98 : 異常なし
- 92<GNRI<98 : 軽度栄養リスク
- 82<GNRI<92 : 中等度栄養リスク
- GNRI<82 : 重度栄養リスク
Creatinine Indexと同じような基準値ですよね。なのでこれもExcelではほぼ同じ表現です。
GNRI for Excel
さてExcel関数式の時間です。内容はもうお気づきの通り、Creatinine Indexと同じです。
A列にGNRIの結果、B列にClass分類を書いている場合の関数式をお示しします。
$$=IF(A1<82,"High Risk",IF(A1<92,"Medium Risk",$$$$IF(A1<98,"Low Risk","normal")))$$
この式でclass分類を数値の隣列に表示出来て、リスクが一目瞭然になります。ちょっと便利になりました。
nPCRについて
さて、同じく導出に関しては下記記事をご覧ください。
nPCRの基準値
上記記事内では、基準値は大雑把に0.9以上と解説しています。
しかし、そうは問屋が卸さないらしく、JSDTの年末統計調査でしっかりと解析されているんですよ。その解析によると、
- <0.5 1.252(1.122〜1.397)<.0001
- 0.5≦<0.7 1.032(0.981〜1.087)0.2256
- 0.7≦<0.9 1.000( 対照 )対照
- 0.9≦<1.1 1.007(0.959〜1.057) 0.7822
- 1.1≦<1.3 1.128(1.042〜1.220)0.0029
- 1.3≦ 1.243(1.061〜1.455)0.0071
ちょっと見辛いですがそこはご容赦ください。nPCRの値毎にHRを設定、検定により有意差を測っています。
これによる、0.51~0.9までは有意差が付きませんが、0.5以下は有意差を以て1.25倍の死亡率上昇となっています。やはり食べれないのはダメですね。
ただ謎なのが、逆に1.1以上でも死亡率は上昇している点です。食べ過ぎが良くない??それとも偏食?こればっかしは他のパラメーターを診ない事には判断しかねますね。
nPCR for Excel
さ、やってきましたExcelの時間。
有意差がついているのが0.5以下からなので、正直書くべきか迷う所ではありますが、それでも書きたい!!という方のためにご参考までに。
$$=IF(A1<0.5,"High Risk",IF(A1<0.9,"Low Risk",$$$$IF(A1<1.1,"normal","Good")))$$
一応HRは1.1以上は上がるという事になっていますが、筆者の考え方としては、食べるのはいいこと!!という信念のもと、1.1以上はGoodにしております。まぁそこはこれをコピペする方にお任せします。
NRI-JHについて
さ、新規栄養指標として近年登場したNRI-JH。これについても当ブログでは扱っています。
なので、詳細は下記記事をご参照ください。
基準値について
さて、こいつのややこしいところは、スコアが細分化しているところです。具体的には
- BMI
- 血清アルブミン値
- 血清クレアチニン値
- 総コレステロール
の以上になります。
そして、この各スコアの合計点で、リスクを勘案するわけです。リスク分類としては
- 0~7点:Low Risk
- 8~10点:Medium Risk
- 11点以上:High Risk
と3分類に分けられます。
これをExcelで表現するわけです。
NRI-JH for Excel
さ、というわけで早速関数式を書いていきたいと思います。
具体的な関数式は下記になります。
セルの配置はA列に患者氏名、B列に性別、C列に年齢、D列に身長(cm)、E列に透析後体重、F列にBMI、G列にアルブミン値、H列に血清クレアチニン値、I列に総コレステロールです。
これを各スコアごとに集計します。
筆者はJ列から隣ずつにBMI-Score , Alb-Score , sCr-Score , TC-scoreとしています。最後にN列にTotal-Scoreを載せて完成です。
BMIを計算する際に気を付けることは、計算式はm/Kg2なので、cmでは計算できないということです。なので以下の様に変換します。
$$=F3/(E3*0.01)^2$$
これでcmからmへの変換後、二乗することが出来ます。あとはclass分類ですが、筆者は先の項で説明したように3分類で表示するようにしています。それが下記の関数式です。
$$=IF(N3<=7, "Low risk", IF(N3<=10, "Medium risk", "High risk"))$$
いかがでしょう。
これで直接Total-Scoreからの危険度を可視化出来ました。
なお、年齢に関して、もし部門システムを導入していない施設の方向けには、生年月日から毎回自動計算してくれる式が便利です。この場合、年齢の前に列を追加し、そこに生年月日を入力してください(まぁ参照元はどこでもいいです。印刷範囲外でも構いません)。
$$=DATEDIF(C3,$A$1,”Y”)$$
これでNRI-JHを計算するのに必要なパラメーターは揃います。
以上で必要な栄養指標の全てのExcel解説は終了になります。
あとがき
さてさて、今回は栄養指標をどう活用するかに関して、半自動化する手順を公開させていただきました。
これを公開した理由としては、画一した医療を提供するために、画一した指標が必要であり、透析患者は全国どこでもその指標を基に透析を受ける権利を有する。と考えるからです。
透析医療従事者の皆さんも、是非指標の意味をしっかりと理解し、患者管理・指導に役立てていただくことを切に願ってい締めたいと思います。
それでは今日はこの辺で。
ではまた~~
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