やってきました心不全バイオマーカーもついに第3弾。最後を飾るのはタイトルにある通り
NT-proBNPと呼ばれるホルモンです。
さて、BNPについては前回記事でもご紹介しました。詳細は下記リンクからどうぞ。
NT-proBNPはBNPの親戚みたいなものです。別にBNPあるなら測らなくても良くない?と思ったそこのあなた!!
そうじゃないんですね~。
ということで、そこら辺も含めて解説していければと思います。
では行きましょう!NT-proBNPの世界へ!!
NT-proBNPって何??
そもそもNT-proBNPって何なんでしょうか。
という訳で日本語訳のお時間です。実はというか、正式名称はちょっくら長めです。
NT-proBNP : N端 脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体
というのが日本語での正式名称です。
N端?前駆体?とかなりますよね。続いてはそこら辺の解説に移ります。
NT pro-BNPの成り立ち
さて、内分泌系の歴史はこれまでも散々述べてきました。ので、ANPの記事をご参照ください。
さて、ここからが問題です。
NT-proBNPはどこから生成されるのでしょうか。
これはBNP遺伝子からの転写・翻訳作業が関係しています。
BNP遺伝子が転写・翻訳後、BNP遺伝子はproBNP(BNP前駆体)として存在しています。proBNPはその後、分解酵素により心筋細胞の中で生理活性を有さないNT-proBNP( proBNPのN端から76個のアミノ酸[1-76])と生理活性を有する成熟型BNP(残りの32個のアミノ酸[77-108])に切断されます。
この生理活性を有さない部分のBNPをNT-proBNPと呼称するんですね。
基準値は?
NT-proBNPは様々な場面で用いられます。それは心不全でも透析でもです。
では具体的にはどうなっているでしょうか。
引用文献2では以下の様にNT-proBNPの診断基準を示しています。
腎不全患者も非HD患者同様に、NT-proBNPの上昇は心室負荷を現します。
上記図でもあるように、NT-proBNPが3桁、もしくは3桁強は予後が良好として、まだ可逆性があるとしています。しかし、5,000を超えたあたりから予後不良群として分類されます。
そして、ACSなどの疾患を現すのは6,000を超えたあたりからだとしています。
感度79%、特異度60%と成績も良好であることを示しています。
透析におけるNT-proBNPの役割
さて、小タイトルには偉そうに役割なんて書いていますが、別に特別な何かがある訳ではありません。
透析においては、これまで同様DWの指標になる検査項目となります。
ただし、少し気を付けなければいけないのは、HF:心不全ではないにも関わらず、高値/低値を示すことがあるという事です。
普段の採血結果よりも異様な高値/低値を示し、CTRが正常範囲内であれば、原因検索が必要となるかもしれません。
その点で透析診療には注意が必要かもしれません。
採血では、専用のスピッツでなくとも生化学のスピッツで検査が可能という点が、負担が軽くなるメリットとして存在しています。
あとがき
今回は心不全バイオマーカー第3弾であり、最終回でもあるNT-proBNPについて解説してみました。
本来は純粋に慢性・急性心不全に用いられるものですが、それを透析ではDWの診療補助として用いるというのがこの検査の趣旨です。
が、面白い論文がありましたので、また機会があれば加筆したいと思いますので、その時は乞うご期待下さい。
では今回はここまで。
さらばさらば~~
1)斎藤 能彦 ; バイオマーカーをもとにした心不全の診断と治療―日本心不全学会BNPステートメントの解釈ー ; 日本内科学会雑誌第103巻第3号・平成26年3月10日
2) 常喜 信彦 ; CKD(慢性腎臓病)患者でのNT-proBNPの有用性 ; FALCO bio system
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