臨床工学技士と睡眠時無呼吸症候群~検査項目編~

呼吸器

 おはこんばんちはなら

 今回は呼吸管理でもとてもポピュラーな疾患である、睡眠時無呼吸症候群について概説していこうと思います。

 と言っても、筆者もこの治療に関わらなくなって久しいので、色々と情報のアップデートが必要かもしれません。もし間違いなどがあれば遠慮なくご指摘ください。

 基本的には「2023年改訂版循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン」に準拠した話をしながら、筆者の臨床時代の話もちょこっと混ぜていければと思います。

 では行きましょう!睡眠時無呼吸症候群の世界へようこそ!!

睡眠時無呼吸症候群とは

 さて、今更かもしれませんが睡眠時無呼吸症候群とは一体何でしょうか?

 読んで字のごとく、睡眠時に無呼吸を呈する疾患群の事を指します。

 英語では Sleep Apnea Syndrome : SAS と呼称されます。

 SASにも実は分類があり、気道閉塞等を伴うSASの事を閉塞性睡眠時無呼吸:Obstructive sleep apnea :OSA と呼称します。

 もう一つは、中枢性と言われる呼吸自体を停止してしまうタイプのSASの事で、中枢性睡眠時無呼吸:Central Sleep Apnea : CSA と呼称します。

 そして最後に、これら二つが合わさって睡眠時無呼吸を呈するタイプを複合型睡眠時無呼吸症候群:Complex Sleep Apnea Syndrome :CompSAS と呼称しています。

 以上で睡眠時無呼吸とはなんぞや?その種類とは?という説明は終わり。次項からはその各論に移ります。

検査方法

 SASの気付きは家族などのパートナーからの受診の勧めや、日中の過度な眠気(Excessive Daily Sleepiness :EDS)などが多い。これらにより受診にきた患者に対して、まずは簡易SAS検査が行われます。

 簡易SAS検査とは、携帯型簡易モニター(Portable Monitor:PM)を用いて行うもので、OSAS、CSAS共に使用に関してエビデンスレベルはAです。

 本来、SASの検査は睡眠ポリグラフ検査:Polysomnography(以下、PSG)を用いて診断します。しかし、PSGは入院をして行うものであり、普段の環境とは違うなど、大変大掛かりになってしまいます。また、コストも掛かるため、患者へ金銭的・身体的負担が掛かります。

 それに対してPMで行う検査は、患者が自宅で自身で装着して行うものであり、簡便に行うことが可能です。

 PMでの診断のメリットは先述した自宅で簡便に行えることにあります。しかし、デメリットがないわけではありません。デメリットとしては、正確な睡眠時間が測定できない事にあります。詳細は後述します。

 これに対して、PSGは入院して行うもので、フルPSGなんて言ったりもします。メリットとして、全ての検査項目を入院看視の元、一晩で行うことが出来ます。デメリットとして、入院という普段とは違う環境下に置かれるため、中々寝つきにくかったりするようです。

検査項目

 さて、先述したように、検査方法については二通りの方法が存在します。ではそれぞれ何を見ることが出来るのか?それを解説したいと思います。

携帯型簡易モニター:PM

 PMでは、主に気流センサー、いびき音センサー、パルスオキシメーター、心電図、呼吸運動センサー、末梢動脈波測定法(PAT)センサー、退位センサー等を測定します。

 上記の表の様に、簡易PMでは、タイプ3,4に該当する検査機器という扱いになります。そして、これらの検査項目から割り出される検査結果は下記になります。

i.モニター時間(MT)
 PSGとは異なり,脳波により睡眠を判定することができないため,総記録時間(TRT)から明らかに覚醒と判断できる時間を除いたMTを呼吸イベント判定の対象とする.

ii. 呼吸イベント指数(REI
 呼吸イベントの総数をMTで割ったものをREIとよぶ。PSGで算出されるAHIと考え方は同じで、従来は簡易モニターでもAHIとしていたが,脳波による覚醒反応を判定できない分,低呼吸を過小評価し,睡眠と覚醒を判定できないために,MTがPSGの総睡眠時間(TST)よりは長くなり,REIはPSGのAHIより低値になることが多い.そのためPSGのAHIと区別する必要があることから簡易モニターではREIとよばれるようになった.保険診療下では簡易モニターによる診断であっても「無呼吸低呼吸指数」という言葉が用いられており,REIとAHIの区別があいまいだが,学術的には区別して用いるべきと考えられています。類似した言葉で呼吸障害指数(RDI)があるが,こちらは無呼吸・低呼吸イベントに加えて,呼吸努力関連覚醒反応(RERA)をイベントとしてカウントする際に使用される指数があります。しかしながら,RDIをREIの意味で用いられていることもあるため注意が必要です。平均,最大,最小88%以外の任意の値でも可活動量計による判定MTの代わりに使用測しリスク層別化をするための簡便な検査として活用できる.

iii. 酸素飽和度低下指数(ODI)
 ベースラインのSpO2から規定の値(たとえば 3%,4%など)だけ低下して元に戻るというイベントを1回とカウントし,MTで割ったものを,3%ODI,4%ODIなど呼びます。

 

睡眠ポリグラフ検査:PSG

 筆者も海外留学(沖縄在住)時代、ODIの測れる機器を病棟に貸し出す業務をしておりました。但し、そこでスクリーニングに引っかかった患者のPSGは検査科が担当していました。PSGでは以下の様な検査項目を測定します。

i.総睡眠時間(TST)
 PSGでは,簡易モニターと異なり脳波により睡眠を判定することができるため,総記録時間(TRT)とは別に,TSTを算出します。時間あたりの指数を計算する場合の分母はTSTを用います。

ii. 無呼吸低呼吸指数(AHI)
 呼吸イベント(無呼吸および低呼吸)の総数をTSTで割ったものをAHIとよび,無呼吸数,低呼吸数それぞれについて指数を算出したものを,それぞれ無呼吸指数(AI),低呼吸指数(HI)と呼びます。低呼吸を閉塞性,中枢性に分類することはオプション扱いとなっていますが、この分類を行っていれば,閉塞性無呼吸低呼吸指数(OAHI), 中枢性無呼吸低呼吸指数(CAHI)などを算出することも可能です.とくに心不全では,AHIに占める低呼吸イベントの割合が大きいことが多く,HIのタイプを分類することで、閉塞性と中枢性のどちらが優位なのかを正確に評価できます。

iii. 覚醒反応指数(ArI)
 呼吸イベントとの関連を問わず,覚醒反応の総数をTSTで割ったものをArIと呼びます。睡眠を分断し,睡眠構築を悪化させることにつながるという意味で,睡眠の質を示唆する指標です。OSA患者における覚醒反応は,呼吸イベントに伴うものが多いため,AHIと近い数値になるが,呼吸イベントと関係のない覚醒反応が頻回である場合には,別の理由で睡眠の質が低下している可能性もある。また,通常は年齢とともに増加する傾向があります。

iv.呼吸努力関連覚醒反応(RERA)
 無呼吸,低呼吸いずれの基準も満たさないものの,気流制限により覚醒反応が引き起こされるものをRERAとよぶが,AASMマニュアルでも報告すべきパラメータの推奨となっておらず,わが国ではPSGのレポートに含まれないことも実際には多いです。

筆者の経験談

 筆者は学生時代、臨床実習で脳波をつける真似事をさせられた覚えがあります。あれがPSGの真似事だったのかなんなのかは未だ以て不明ですが・・・。

 そして、筆者の弟は今現在、OSAの診断でCPAP治療を行っていますが、PSGを実施した際にはAHIが88という大記録を記録しました。筆者の臨床経験を以てしても、未だにこの記録は塗り替えられていません。

 筆者のSAS業務に関する経験は専らCPAP外来での遠隔モニタリングに集中してしまう訳ですが、この話はまたいずれ。

あとがき

 とまぁ、今回は睡眠時無呼吸症候群:SASの検査について軽く解説してみました。

 次回は検査項目などの解説や、ガイドラインに則り疫学的な側面の解説も出来ればと思っています。

 そしてなんと、この記事を以て当ブログ、100記事が達成しました!!

 いや~続けてみるもんですね~。自分としても感慨深いものがあります。

 これからも、興味の赴くままに記事を書いてみようと思います。

 ではでは今回はこれにて。

 ではまた~~。

1)2023年改訂版 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン

2)睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020 ; 監修 日本呼吸器学会 ; 南江堂

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