さてさて、人工呼吸器には様々な設定項目があります。
その中でも基礎の基礎、PEEP(Positive End-Expiratory Pressure:呼気終末陽圧)について解説していこうと思います。
どうして必要なのか??
ならどれだけ掛ければいいのか??
そのあたりにも注目していただけると嬉しいです!!
では行きましょう!!PEEPの世界へようこそ。
PEEP(Positive End-Expiratory Pressure:呼気終末陽圧)って何??
PEEPとは
Positive :陽(圧)=プラスの圧を
End-Expiratory :呼気終末=呼吸の終わりに
Pressure:圧=持続的に掛け続ける
という意味です。直訳すると「陽呼気終末圧」となりますが、それでは意味が通じにくい上に、”持続的に”という意味の”Continuous”という単語は入っていません。しかし、正常肺でもPEEPは掛かっているために、言葉は入っていないと思われます。
一部のメーカーに”above PEEP“という設定項目がありますが、これは”PCVやPSVの設定値にPEEPの設定値を上乗せする”とう意味です
例)PC:15cmH2O,PEEP5cmH2O →吸気圧20cmH2O,PEEP5cmH2O
とてもややこしいので、最初の内は戸惑うかもしれませんが、徐々に慣れていきましょう。
PEEP(Positive End-Expiratory Pressure:呼気終末陽圧)の特徴とは?
PEEP(Positive End-Expiratory Pressure:呼気終末陽圧)の唯一にして最大の特徴は
“常に肺胞に対して圧力を掛け続ける“
です。
PEEP(Positive End-Expiratory Pressure:呼気終末陽圧)のメリット・デメリット
上記でも述べたように、PEEPの機能はただ”圧を掛け続ける”の一点になります。
ではメリット・デメリットを説明していきましょう。
メリット
- 肺胞虚脱の防止
無気肺を呈する、呼気時に再度肺胞が縮んでしまうようなといった場合、肺胞と肺血流のミスマッチ(※V/Q mismatch:換気流比不均衡)が生じます。その為、適切なPEEPを設定することで、呼吸の終わりにも肺胞が開いた=開存状態を維持できることを目標としています。
- 酸素加[化]能力の増加(=機能的残気量:FRCの増加)
肺胞の虚脱を防止=開存した肺胞の増加は、その部分でのガス交換を促進します。虚脱していてはガス交換の面積が少なくなってしまうので、それを解消するためPEEPを掛けて開存状態の肺胞を増やすことで面積を増やし、結果として酸素加能の増加につなげます。
- V/Qミスマッチの解消
Ventilation Perfusion ratio mismatchの事を換気血流比不均衡といいます(V,Qにはドットが付きます)。
Qは呼吸生理学でQuantity:量を意味します。語源はラテン語のようですね。
血流量だと”Quantity of Blood Flow”となるようです。
言葉の説明はこれくらいにしておきましょう。詳細はその内別記事で解説できればと思います。
換気血流比不均衡の解消により、やはり、上記で説明したようにFRCが増加し、酸素加に寄与することができます。
デメリット
- 静脈還流量の低下
PEEP(Positive End-Expiratory Pressure:呼気終末陽圧)は視点を変えれば肺を圧迫していることになります。これにより、循環器系を少なからず邪魔してしまうことになります。
具体的には、還ってくる血液がうっ滞してしまいます。右心不全の状態です。
- 血圧低下
上記でも説明したように、静脈還流量の低下を招いてしまうため、右心不全となり、結果として血圧の低下を招いてしまいます。
- 肺胞の過伸展
過度なPEEPは肺胞の過伸展を起こしてしまうため、医原性の疾患を意味するVALI(Ventilator Associated Lung Injury:人工呼吸器関連肺障害)である圧外傷(Barotrauma)を起こしてしまいます。※詳細は下記記事にて説明!!
適切なPEEP(Positive End-Expiratory Pressure:呼気終末陽圧)って??
PEEP(Positive End-Expiratory Pressure:呼気終末陽圧)にGold standardはありません。
しかし、de facto standard:事実上の標準は存在しています。
ARDS診療ガイドライン2016 詳細版 part2 CQ5-詳細版にあるとおり、ARMA study(以下、ARDS network 2000)及び、ALVEOLI studyで使用された FiO2 と PEEP の設定表よりも最適な PEEP を決定する方法は見当たらず、通常は ARMA studyで有用性が認められた対応表(ALVEOLIでは低いPEEP群で採用)を参照、さらに中等度以上のARDSには高PEEP群の対応表を参照することが良いとの意見がガイドライン作成時に出されています。


上記の設定が今では世界中で用いられているde facto standardな設定です。
あとがき
適切なPEEP(Positive End-Expiratory Pressure:呼気終末陽圧)は肺を保護し、予後を改善し、挿管期間を短くすると言われています。
この様に、患者さんのためにも適切な設定を知っている事は医師のみならず、看護師やコ・メディカルにも重要なこととなっています。
コ・メディカルには臨床工学技士も含まれます。
この為、僕ら臨床工学技士が皆さんに色々なことを聞かれたときに答えられる様、日々研鑽が必要ですね。
ではまた次回の記事で会いましょう!!
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