今回は臨床現場ではあまり見なくなったモードについてのお話。
それでもNPPVの基礎となるモードのお話です。
人工呼吸器とはどう違うのか?何が違うのか?
そのあたりにフォーカスを当てて臨床工学技士である筆者がお送りできればと思っています。
ではTモードの世界へようこそ!
Tモードのとは?
Tモードとは
Timed:時間制御
という意味です。これだけではさっぱりですよね。
なので、以下で詳細を説明します。
Tモードの特徴
ではTモードの特徴を説明しましょう。
Timed モードとは ・換気回数と吸気時間、圧を設定して行う換気モード ・自発呼吸とは無関係に強制換気が行われます。 例)換気回数12回/分 , 吸気時間1秒の場合 1呼吸サイクルは5秒、呼気は4秒ということになります。
また、ここでいう設定した圧、というのは、NPPVでは二相性:BIPAPと呼ばれる2つの陽圧を指します。
NPPVでは各圧の名称が変わります。
- IPAP:Inspiratory Positive Airway Pressure
- (吸気時にかかる陽圧)
- EPAP:Expiratory Positive Airway Pressure
- (呼気時にかかる陽圧)
と呼びます。
この2つの陽圧差がPS:Puressure Supportとなります。
- IPAP-EPAP=PS
PSってなんだっけ?というかたはこちら!
というわけで、特徴としては以下の二つが挙げられます!
- 圧を規定する
- 自発呼吸とは同期しない。
となります。
ポイントとしては
- 患者さんの呼吸回数・吸気時間など呼吸パターンに依存しない
- 自発呼吸が無い場合に使用する
です。
では次に、圧について考えていきましょう!
IPAPとEPAPとは??
聞きなれない言葉、「IPAP」「EPAP」
これらは「アイパップ」「イーパップ」と呼びます。
ではそれぞれの仕事について解説していきましょう。
IPAPとは、二相性と言われる圧の上の部分の圧力(高圧相)です。
これが吸気で掛かる圧力です。
EPAPとは、二相性と言われる圧の下の部分の圧力(低圧相)です。
これが呼気で掛かる圧力です。
この二つの圧力を合わせてBIPAP(バイパップ)と呼びます。
EPAPは人工呼吸器のオプション機能でお伝えした「PEEP(ピープ)」に相当します。
また、復習になりますが
- IPAP-EPAP=PS
という点もとても大切なポイントになります。
IPAP:吸気時にかかる陽圧
特徴としては
- 一回換気量の増減
- 呼吸仕事量の減少
- PaCO2の減少
などに関与します。
IPAPの値を変更するだけで上記3つが変化することが期待できますね。
IPAP=EPAP(above PEEP)+PS
aboveは上乗せするという意味でしたね。なので、EPAPとPSを足した値がIPAPになります。
EPAP:呼気時にかかる陽圧
特徴としては
- 肺胞虚脱の防止
- 酸素化能の改善
- 機能的残気量の増加
- V/Qミスマッチの改善
になります。
勘の鋭い読者ならお気付きかもしれませんが、これらの特徴はそのままPEEP:Positive End-Expiratory Pressureにも当てはまります。
その為
EPAP=PEEP
となります。
Tモードの適応について
ではTモードはどのような病態に適応があるでしょうか?
- 急性期を脱したCOPD
- 拘束性換気障害(神経筋疾患患者など)
- SモードやS/Tモードでしっかりとトリガー出来ない・効果が得られない
などなど、呼吸筋障害の様な換気不全を伴う呼吸不全や長期導入症例などでTモードがふさわしいと考えられます。
最後の紹介にある適応では自発呼吸が存在することになります。
これはどういうことかというと、
- 送気→自発呼吸
という流れだからです。
これらに共通する効果は
- 呼吸筋仕事量の軽減、及び呼吸筋の休息
です。
実際にはどう使うのか?
日本発表の論文で興味深いデータが出ています。
Results of the KaplaneMeier analysis showed significant increased continuation rates of long-term NPPV among the pure controlled group (Fig. 2). The five- and ten-year probabilities of continuing NPPV for all 182 patients were 60.0% and 31.0%, respectively. The corresponding probabilities for 106 patients with the pure controlled mode were 68.3% and 41.4%, respectively while those for 76 patients with the assisted mode were 46.7% and 12.7%, respectively.
Importance of ventilator mode in long-term noninvasive positive pressure ventilation (https://www.resmedjournal.com/article/S0954-6111(09)00227-3/fulltext)より引用
日本語訳としては
KaplaneMeier解析の結果,純粋対照群ではNPPVの長期継続率が有意に増加した.182名の患者におけるNPPVの5年および10年継続率はそれぞれ60.0%および31.0%であった。純制御群106例では68.3%,41.4%,アシスト群76例では46.7%,12.7%であり,純制御群に比べ,アシスト群では生存率が低下した.
純制御はTモードのことです。ここで驚きなのは、S/TモードよりTモードの方が長期継続率が高いということです。
現在のメイン機種ではTimed mode単独搭載の機種は存在しないため、この状況は非常に悔やまれます。
ただし、上記の報告などでもあがっていますが、CO2のControlはS/Tモードの方が良好という結果も出ています。
その為、選択は悩ましいところです。
あとがき
今回はT-mode単独でのお話でした。
S-modeとそんなに変わらないじゃないか?と思う方も居るかもしれません。しかし、自発呼吸の有無というのは呼吸器にとってはとても大きいのです。
また、これまでお話しした特徴や効果などは、マスクフィッティングをしっかりしていることが前提の話です。
なので、そのあたりもまた別でお話しできればと思っています。
これまで長丁場でしたが、ありがとうございました。
ではまたゞ
コメント