透析とはなんぞや??~腎代替機能編~

血液浄化

 さて、透析とは何ぞや??シリーズも第3弾を迎えました。

 今回は腎代替機能編と題しまして、透析で腎臓の何が代わりに出来て、何が出来ないのか?そして出来ない部分をどう補うのか?について説明していければと思います。

 さ、前置きはこのくらいにして本編へ行きましょう。

 ではようこそ。腎代替機能の世界へ

まずは腎臓の機能の復習

 学生の時分に嫌というほど習ったとは思いますが、ここが基本にして中枢。これを暗唱できなければ、透析はできません。

 腎臓には主に5つの機能が備わっています。

  • 体液量,電解質の調整
  • ビタミンDの活性化(骨代謝回転の正常化)
  • 老廃物の調節
  • 血圧の調節
  • 造血作用

 以上の5つです。どれも人体にとっては無くてはならない機能ですね(そりゃ人体に無駄はないでしょ)

 詳細は割愛しますが、これらを腎代替療法は代わりに行うわけです。

ではどれが代われて、どれが無理なのか??

 腎代替療法といっても、実態は人工腎臓(以後、ダイアライザー)を用いた機械的なものにすぎません。

 腹膜透析や腎移植には敵わない部分があります。

 では代われる部分とは何か?正解は以下の2つ

・体液量・電解質の調整

・老廃物の除去

 です。

 逆にホルモンー内分泌により調整される血圧と造血、ビタミンD活性化に関しては、透析そのものではなく薬剤により調整せざるを得ません。人工腎臓では代替できないのです。

どうやって腎機能を代替するのか??

 血液浄化で出来ることは限られるとは説明したばかりです。ではその概要?を説明しましょう。

体液量の調整ー尿の作成ー

 腹膜透析でも血液透析でも、腎機能が落ちてしまっている以上、尿量が減るため、除水は必要です。

 腹膜透析では透析液との浸透圧較差を利用して、血液透析では除水ポンプによる濾過を通じて除水をおこないます。これにより、体液量を自然な量に近づけ、心不全を予防するわけです。

電解質の調整ーKやPの排泄と重炭酸やCaの補充ー

 腎機能が落ちてくると、初期の場合には各種ホルモンなどにより代償性の働きが起こります。

 例えば、リンの蓄積に対してPTHが分泌され、ネフロンは120%や150%の仕事を行うことでその排泄量を補おうとします。

 また、Kの増加には各尿細管系でのNa-Kポンプが関係しており、これもまた過剰な仕事量を行うことでK値を正常域に保っています。

 しかし、腎機能が退廃してしまい、これら代償性ではどうしようなくなった時、腹膜透析や人工透析で電解質の調整が行われるのです。

老廃物の除去

 老廃物の代表格としてはBUNやCrが挙げられます。これら小分子は、腎機能の障害の程度を如実に表します。特にCr,FGF23は鋭敏なバイオマーカーとして有用です。但し、実臨床でFGF23が測定されることはなく、まずはCrが指標となります。

 Crの程度によらず、例えば体液量の増加による浮腫や心拡大が顕著な場合には、先行して血液透析が導入されることがありますが、障がい者手帳1級の交付には、Cr≧8が必須となる点には注意が必要です。

 以上が腹膜透析や人工透析で代替できることの概説です。

 では続きまして

どうやって足りない部分を補うのかー造血と血圧調整ー

 先にも述べたように、造血と血圧調整の部分だけはホルモンによる調整のため、現代の透析技術ではどうしようもありません。

 その為、以下の方法がとられます。

赤血球造血因子刺激製剤(EPO)の投与

 上記の記事内で詳細を説明していますが、腎臓はHIF-PHやEPOにより、その造血機能を担っています。その為、これらが機能不全を起こすと貧血真っ逆さまという訳です。その為、造血因子刺激剤としてエポジンが登場、その後立て続けにネスプ、そしてミルセラと販売されました。現在では一番新しい内因性EPO産生製剤としてHIF-PH阻害薬が登場し、どのような使い方、副作用頻度があるのかが探られている最中です。

血圧調整の機能

 腎臓はレニンーアンギオテンシン系(RAS)を司ります。これらは輸入細動脈の血流量を監視し、それによりレニンの分泌量を調整、輸入量が減れば血管を収縮させるためにレニンを分泌し、細胞に取り込まれたレニンはアンジオテンシノーゲンを切断し、アンジオテンシンIを活性化させる方向へ働きます。

 詳細は下記記事にありますのでご覧ください。

 廃退した腎臓は繊維化が進むため、傍糸球体細胞も機能が落ち、輸入細動脈の監視能が落ちるためレニンの分泌が亢進します。

 その為、各種降圧剤を用いて血圧を下げる治療が行われます。

 以上が腎代替療法以外での補充療法の概説になります。

活性型ビタミンDの補充とは??

 腎臓は腸管から吸収したビタミンDを肝臓・腎臓で活性化させることで、腸管からのCa吸収を促進させる役割を持ちます。Caの吸収は、血中のPTHバランスを保つために重要ですが、活性型VD3があってこそCaは吸収される為、VD3の欠乏は低Ca血症を招き、その為骨からのCa遊離が進み骨粗しょう症を亢進させます。

 詳細は以下の記事をご覧ください。

 VD3の補充には血液透析下では2種類の薬剤がメインで取り扱われます。それに関しても下記の記事で詳細を執筆しているので、よければご笑覧ください。

あとがき

 今回は臨床工学技士の本懐、生体機能代行装置学的なお話をしました。

 以外にパッと答えられない方も多いのではないでしょうか。

 基本ではありますし、いつでも後輩にパッと説明できるようにしておきたい知識群ですね。

 ここで解説したことはまだ入門編です。各種奥が深い話になりますので、また何かしら機会があればお話しできればとも思います。

 それでは今週も頑張って参りましょう。

 ではまた~~

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1)武藤 重明 , 草野 英二 ; カリウム代謝の考え方 , 日腎会誌 2008:50(2):84-90

2)鈴木 正司 , 腎性貧血治療の歴史 , 臨牀透析 vol.37 no.1 2021 7-12

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