S/Tモード~Spontaneous/Timed mode~とは

人工呼吸器

今回は臨床現場でメインで使うモードについてのお話。

NPPVの基礎となるモードのお話です。

人工呼吸器とはどう違うのか?何が違うのか?

そのあたりにフォーカスを当てて臨床工学技士である筆者がお送りできればと思っています。

ではS/Tモードの世界へようこそ!

S/Tモードとは?

STモードとは

Spontaneous自発的な、任意の

Timed時間制御

という意味です。Spontaneousの語源はラテン語の「自由意志で」から来ています。

S/Tモードの特徴

ではS/Tモードの特徴を説明しましょう。

Spontaneous/Timedモードとは
設定した圧や呼吸回数などを規定して換気を補助する様式。
自発呼吸があると設定した圧により呼吸のサポートを行い、自発呼吸がないと設定した呼吸回数で、設定した圧・吸気時間の換気をする

また、ここでいう設定圧というのは、NPPVでは二相性:BIPAPと呼ばれる2つの陽圧を指します。

NPPVでは名称が変わります

  • IPAP : Inspiratory Positive Airway Pressure
    • 吸気時にかかる陽圧
  • EPAP : Expiratory Positive Airway Pressure
    • 呼気時にかかる陽圧

と呼びます。

この2つの陽圧差がPS:Puressure Supportとなります。

  • IPAP-EPAP=PS

PSってなんだっけ?というかたはこちら!

というわけで、特徴としては以下の二つが挙げられます!

  • 圧を規定する
  • 自発呼吸があればサポートする。なければ設定した換気回数、設定圧、吸気時間で強制換気を行う。

となります。

ポイントとしては

  • 患者さんの呼吸回数・吸気時間など呼吸パターンに依存する
  • 感知できないほど自発呼吸が弱い・減弱している場合はTモードとして換気を行う
  • 自発呼吸が無い場合はTモードとして行う

です。

つまり、

自発呼吸がある=Sモードそして動く

自発呼吸が無い=Tモードとして動く

ということです。

復習としてはこちらをどうぞ!

では次に、圧について考えていきましょう

IPAPとEPAPとは??

聞きなれない言葉、「IPAP」「EPAP」

これらは「アイパップ」「イーパップ」と呼びます。

ではそれぞれの仕事について解説していきましょう。

IPAPとは、二相性と言われる圧の上の部分の圧力(高圧相です。

これが吸気で掛かる圧力です。

EPAPとは、二相性と言われる圧の下の部分の圧力(低圧相です。

これが呼気で掛かる圧力です。

この二つの圧力を合わせてBIPAP(バイパップ)と呼びます。

EPAPは人工呼吸器のオプション機能でお伝えした「PEEP(ピープ)」に相当します。

また、復習になりますが

  • IPAP-EPAP=PS

という点もとても大切なポイントになります。

IPAP:吸気時にかかる陽圧

特徴としては

  • 一回換気量の増減
  • 呼吸仕事量の減少
  • PaCO2の減少

などに関与します。

IPAPの値を変更するだけで上記3つが変化することが期待できますね。

  • IPAP=EPAP(above PEEP)+PS

aboveは上乗せするという意味でしたね。なので、EPAPとPSを足した値がIPAPになります。

但し、実際の設定項目にPSがあるわけではないので実機では注意が必要です。

EPAP:呼気時にかかる陽圧

特徴としては

  • 肺胞虚脱の防止
  • 酸素化能の改善
  • 機能的残気量の増加
  • V/Qミスマッチの改善

になります。

勘の鋭い読者ならお気付きかもしれませんが、これらの特徴はそのままPEEP:Positive End-Expiratory Pressureにも当てはまります。

その為

EPAP=PEEP

となります。

S/Tモードの適応について

ではSモードはどのような病態に適応があるでしょうか?

  • 呼吸筋疲労
  • 閉塞性換気障害
  • 拘束性換気障害

などなど、COPDの様な換気不全を伴う呼吸不全などでS/Tモードがふさわしいと考えられます。

また、

COPD急性憎悪

心原性肺水腫

はエビデンスレベルも高く、強い推奨となっています。この点には注意が必要です。

S/TモードとPCV,SIMVモードの違いについて

タイトルに挙げたSIMVやPCVはよくよく考えれば同じような動きをすることにお気付きでしょうか??

どちらのモードも自発呼吸が無い場合には

  • S/Tモード:強制換気
  • PCV・SIMV:強制換気

どちらも強制換気です。

 ではどう違うのか??ここから先はV60,NKV-330にも搭載されているPCVモードを中心に説明していこうと思います。

その前に復習をすればすっと入るかもしれませんね。

S/Tモードは自発と強制が混同するモードです。この状態はまさにSIMVと同様です。

なので、自発呼吸がある場合には

Sモード:呼気を自由に吐くタイミングを選べる

のです。しかし、自発呼吸がないサイクルでは

Tモード:人工呼吸器による強制換気

となります。

PCVでは

PCV:吸気時間が決まっているため、自由に呼気へ移行できない

という違いが起こります。

S/Tモードはかくも自由な呼吸モードなのです。

まとめ

  • S/TモードのSモードとTモードでは補助換気とバックアップ換気で吸気時間が違う
  • S-modeとして動作する場合は、完全に自発呼吸がある。
  • T-modeでは自発呼吸が消失し、強制換気となる。

この様に、NPPVには細かな違いがあるのが特徴です。

読者の皆さんには、是非、この奥深さを実感して頂ければと思います。

あとがき

いや~自分でも途中で何書いてるのかわかんなくなりそうで、行きつ戻りつ書いていました(笑)

ですが、その分色々と知識の整理にはなったのではないでしょうか。

これまでお話しした特徴や効果などは、マスクフィッティングをしっかりしていることが前提の話です

また、S-modeとT-modeの混合したモードのため、混乱が生じますがしっかりと知識整理をする必要があります。

願わくば、この記事が皆さんの臨床の一助になれば幸いです。

ではまた次の記事で~

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