腎性貧血とは?~機序を解説~

血液浄化

前回、鉄代謝の観点から造血に関して少しだけ触れる記事を作成しました。

そして腎臓がどのように造血に寄与するのかについても記事にしてみました。

今回は腎性貧血がどうして引き起こされるのか?にフォーカスして、筆者の主観たっぷりにお届けできればと思います。

様々なブログ様のこのテーマについて述べているでしょうが、こちらも出来るだけ簡潔に、けど解りやすくお届けできればと思います。

では行きましょう。腎性貧血の世界へようこそ。

ヘプシジンーフェロポルチン系の説明

体内には色んな人が付けた色んな系(システム)が出てきます。

これもそんな一つ。まだ分子名なだけ簡単かもしれません。

さて、これはどんな系なんかといいますと・・・

ずばり、鉄の出納調節系です。

フェロポルチンは鉄が不足した場合、鉄の吸収が亢進します。これは食餌摂取での吸収でも亢進します。

逆に鉄が過剰な場合、ヘプシジンー25が発現し、フェロポルチンの分布密度を調節し、鉄の吸収・分泌を阻害する方向へ亢進するわけです。

半閉鎖系なため、リサイクル力が強力であり、排出機構は存在しません。

本当に簡略化した説明というのは上記の2行まで凝縮できてしまうんですね。自分で書いててびっくりです。

では次の段階、腎臓の造血への役割を見てみましょう。

腎臓でのHIF-EPO産生

前回の記事でも紹介したように、腎臓は赤芽球をターゲットにEPOを産生します。そのEPOの産生量を司るのがHIFでした。HIF遺伝子は低酸素下でその発現量を増やし、EPOを産生するREP細胞を刺激し、REP細胞はそれに応答してEPOの産生を増やします。

産生されたEPOは、骨髄内にある赤芽球上のEPORと結合し、分化・増殖を促進、前赤芽球へと推し進める役割を持ちます。

前赤芽球から先は、鉄のお仕事になります。

以上が腎臓の造血に対する役割でした。

では早速本題ですが、貧血が起こる理由やその機序を見ていきましょう。

慢性腎臓病:CKDと貧血

広義の腎性貧血

まず腎性貧血とは何か?という定義をしなければなりません。

そして、ここでいう広義の意味とは医原性も含むという事です。

血液透析での医原性の貧血は何があるか?ですが

  • 定期採血
  • ダイアライザー関連残血

上記の2つがすぐに思いつきます。

これは言わずもがな。目で見てわかる貧血の原因だと思います。

狭義の腎性貧血

では狭義の腎性貧血とは何か?それは腎臓の造血機能障害およびそれに関連した病態を指します。

GFRの低下は腎機能の低下を示すことは自明です。糸球体濾過量を表すGFRの低下は糸球体の機能低下そのものを表します。糸球体やその近傍の血管系・尿細管系をまとめてネフロンという訳ですが、ネフロン数の減少はそのまま腎機能の廃退を示すという訳です。ヒトにおいてネフロンが減少すると、続いて代償性に細胞肥大と過剰濾過が生じることは随分前から明らかになっています。これらは糸球体高血圧を起こし、結果としてネフロンの虚血壊死を引き起こすことになります。

ネフロンの髄質および皮質の虚血により、間質は繊維化が進行します。繊維化には筋線維芽細胞が主要な役割を果たしており、この細胞の由来を追跡した研究によると、半分が間質の線維芽細胞に由来し、35%が骨髄由来、内皮細胞10%、上皮細胞が5%であった1)とあります。さらに、筋線維芽細胞の多くはもともとREP細胞の性質をもっていた細胞が形質変換していることも動物モデルで示されています2)。繊維化した部位では尿細管周囲の毛細血管が脱落し、組織の酸素拡散が妨げられ、これらにより腎臓の酸素分圧は下がります。酸素分圧が下がっても、形質変換したREP細胞はEPOを産生しません。その為、尿細管細胞は機能を維持するために必要な酸素を得ることが出来ずに変性し、貧血と腎障害が悪循環することになります。

腎障害が進行した結果、蓄積する尿毒症物質もHIFの活性化を阻害するなどし、腎障害と腎性貧血が相互に増悪します3)

以上が狭義の腎性貧血に関する解説です。

あとがき

今回も長々と主観たっぷりの記事になってしまいましたがいかがでしたでしょうか。

少々わかりずらい部分もありますが、これからも随時加筆修正できればと思います。

今回はこの辺りでお別れです。

ではまた次の記事で~~

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1)LeBleu, V. S., Taduri, G,. O’Connell, J., et al. : Origin and function of myofibroblasts in kidney fibrosis. Nat. Med. 2013 ; 19 : 1047-1053

2)Souma, T,. Yamazaki, S., Moriguchi, T., et al,: Plasticity of renal erythropoietin-producing cells governs fibrosis. J. Am. Soc. Nephrol. 2013 ; 24 : 1599-1616

3)濱野 高行., (1)ESAによる腎性貧血治療., 臨床透析 vol37 no.1 2021 25-32

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