おはこんばんちはなら
さてさて、当ブログは血液透析関係の記事を大変多めに書いている訳ですが、ブログのサブタイトルにもある通り「好きなことを好きなよう書いてみる」をもっとうに書いております。
で、今回は基礎をさておいて先にα1-ミクログロブリンとβ2‐ミクログロブリンの話を先にしたいと思います。
え?これ何の物質?って方も居るかとは思いますが、少しだけお付き合いいただけると嬉しいです。
では行きましょう。大分子量蛋白の世界へ。
α1-ミクログロブリンとは
さて、まずはα1‐ミクログロブリンについてです。
よく大きさの比較としてアルブミンが挙げられるわけですが、アルブミンの次に大きなタンパク質として紹介されることの多い物質です。
特徴
分子量約30,000、糖含有量20%のタンパク質です。
血中では低分子遊離型と高分子IgA型とがほぼ同率で存在しています。なので、透析で除去されるのは恐らく低分子遊離型だと思われます。
産生、及び働き
α1‐ミクログロブリン(以下、α1-MG)はタンパク質です。タンパク質の主な産生場所はお決まりの様に肝臓です。
なので、肝機能により産生量は決定します。肝機能障害がある場合には産生量は低下します。
主な働きは白血球遊走能やリンパ球機能の抑制作用を持ちます。
肝機能障害時や炎症発生時にはCRPが優先的に産生される為、α1‐MGの産生量が減った場合、炎症を抑える為に白血球やリンパ球を機能させるので必然的にα1-MGは産生量が減少と思していると思われます。
どのような場合に測定されるのか??
アルブミンとは違い、糸球体基底膜を容易に通過します。が、近位尿細管より再吸収・異化され、正常ではほとんど尿中に排泄されません。
よって、尿を測定対象とした尿細管障害・糸球体障害の局在・鑑別診断のマーカーとして利用されます。血清での測定では、糸球体濾過能、肝機能の評価としても利用されます。
注意点としては、α1-MGはIgAと共有、非共有結合している為、IgA濃度の上昇と血中クリアランスの低下により血中濃度は上昇するため、IgAの変動にも影響を受けやすい事から注意が必要なことです。
異常値を示す疾患は?
高値疾患(血中)
- 急性・慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、慢性腎不全、IgA増加症、IgA型多発性骨髄腫
高値疾患(尿中)
- 腎尿細管障害、機能低下(カドミウム中毒、移植腎、火傷、Fanconi症候群)
低値疾患
- 劇症肝炎、肝硬変、肝切除
基準値は?
血清 男性:12.5~25.5mg/L , 女性:11.0~19.0mh/L
尿 男性:1.0~15.5,g/L , 女性:0.5~9.5mg/L
まぁ健常人の値ですし、透析患者に尿値は関係ないですけどね。
透析患者では高値になるのは当然ですね。なんせクリアランスのクの字もないですから。
α1ーMGに関しては【JAMREDS-Study】という研究が進行中ですが、フォローアップ期間は2023年12月なので、現在進行形のRCTになります。
β2-ミクログロブリンとは
血液透析では、α1ーMGの次に語られる大分子量タンパク質であります。
よく?言われるのは、手根管症候群の一因としての原因物質ということですね。なので、積極的な除去が望まれます。
では各項の解説に移りましょう。
特徴
分子量は11,800で短鎖のポリペプチドからなるタンパク質です。
このくらいの分子量になると、血液透析濾過でなら容易に濾過することが可能なようですね。
産生、及び働き
赤血球を除く全身の有核細胞表面表面に広く分布し、特にリンパ球、単球などには豊富に存在しています。
細胞表面から分泌されると、腎糸球体基底膜を通過し、そのほとんどが近位尿細管から再吸収・異化を受けます。
リンパ球や単球などに多く存在するため、免疫応答に重要な役割を果たす。
どのよう場合に測定されるのか。
後程述べますが、異常状態で血清濃度は増加します。
様々な疾患の鑑別に用いることが可能なマーカーになります。
異常値を示す疾患は?
- 骨髄腫
- 慢性リンパ性白血病
- 悪性リンパ腫
- 単球性白血病
- 慢性骨髄性白血病
- 原発性肝臓がん
- 肺がん
- 大腸がん
- 乳がん
- AIDS
以上の疾患で異常高値を示す為、測定鑑別に用いられます。
AIDSではCD4陽性細胞の減少によりCD8細胞(HLA class I細胞)が相対的に増加し、ここから産生されるインターフェロンγの作用により全身の細胞からのβ2-mの産生の増加が血清濃度を押し上げると推定されています。唾液中の測定は、Sjogren症候群の補助診断に、髄液中は白血病細胞のCNSへの浸潤の鑑別補助診断や治療効果の判定を目的に、腹水中での増加の有無から悪性・良性の鑑別などにも利用されます。
基準値は?
健常人での基準値は以下の通りです。
血中:0.90~2.00mg/L , 尿中:0.290mg/L未満
透析においては、30mg/L以上は予後不良とされており、30mg未満を推奨されています。
その為、強い推奨としては25mg未満の達成が望まれています。
あとがき
今回はよく見聞きするα1ーMGとβ2-MGについて解説してみました。
ただ、血液透析濾過での目標除去率などに関しては手を出していません。
HDFの記事を書くことがあれば、その際書かせていた頂こうと思います(いつになるか分かりませんが…)。
では今日はこの辺で。
まーたね~
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